始まり
切り立った崖の上に聳える古城ーーーーヴァレン城の書斎に一人の少女が無表情で仕事をしていた。
彼女の名はアリエラ。この城の主である魔族だ。
1083歳と魔族では既に成人したいる彼女だが身長は150センチとかなり低く、発育のしていない体つき。俗に言うロリ体系と呼ばれるものだ。
物語に出てくる魔女そのもののような黒い尖り帽子とローブ。エメラルド色の髪を腰に届くほどに伸ばし、髪よりも少しだけ濃い色の瞳は感情を宿さずに手に持った一枚の資料を見つめている。
「ーーーー勇者、か……。」
彼女が見つめる資料に書かれていることはただ一つ、勇者なる存在についてである。
ーーーー勇者。
正義の味方、英雄、魔王を討伐する存在。この世界における勇者の意味合いはこのようなものであり、彼女の言う勇者とは最後ーーーー魔王を討伐する存在の意味を表していた。
「……まったく、何を思ってコイツ等は私の領地にやってくるんだか。」
アリエラが話題にしている勇者は仲間を引き連れて彼女の領地に向けて進行していた。
アリエラにとってはどうでもいいことなのだが、彼女の上に立つ魔王にとっては勇者パーティーの進行はとてつもなく重要なことである。アリエラはそのことを一応理解しているため、今こうして対応策を考えていた。
「普通に考えれば魔王討伐の第一歩、といったところだろうがコイツ等は自分達に襲いかかった魔族しか相手にしていない。ならばこの考えはハズレか。
だったら残る可能性は私に会いに来た、ということか?」
他にも理由は予想できるが一番高い可能性があるのはこれしかなかった。
アリエラは小さな溜息をつくと資料をしまい、椅子から立ち上がった。
「……ブツブツ思案している状況でもないな。面倒臭いが仕方がない、おーい!」
そう言いながらアリエラは仕事部屋を後にした。
これがすべての始まり。歯車は動き出す。その先に何があるのかを知るのは誰もいない。
出だしなので短めです。