あたし
あとから聞いた話。
ヒナちゃんのひいおばあちゃんのお葬式の後に、彼女が住んでいた家の片付けをした。
その家の古びた納屋から、黒いヒモとハリガネでぐるぐる巻にされたワラ人形が出てきた。
それを気味悪がったヒナちゃんのお父さんが、ゴミと一緒に人形を燃やした。
それが全ての始まり。
あ、違うか。
ひいおばあちゃんが、まじない屋をやっていた事がはじまりなのかな。
とにかく、ヒナちゃんは人形を燃やした日から元気がなくなっていった。
いくつもの病院に行って調べてもらったけど原因は分からないまま。
ヒナちゃんはますます弱っていく。
せっぱつまり、途方にくれたヒナちゃんの両親に、町内会の老人がある神社を紹介した。
その神社があたしの家だ。
あたしのお母さんは神社の神主さんだ。
女の人だから巫女さんじゃないのか、だって?
ぶっ、ぶっー。ハズレ。
お母さんはちゃんと神職の資格があるから、神主さんなんだ。
巫女さは神様に仕える女の人と思っている人も多いけど、平成の日本ではちょっと違う。
巫女になるには資格がいらない。
正式な神職じゃないので、ある神社では女性バイトを巫女と呼んでいる。
あたしのお母さんは、専門の大学を出て資格をとった正式な神職で、小さいけれど由緒正しい神社の神主さんだ。
普段はお守りを作ったり、自動車の厄払い(やくばらい)をしたりと、神社でお仕事している。
結婚式では、昔話に出てくるみたいな服を身につけ、祝詞をとえているみたい。
式に出る前に、あたしに正装を見せてくれた。
頭には、うちの神社に代々伝わってきた額当て(ぬかあて)。白い手にはボンボリと呼ばれる扇。
ながれる黒髪が一枚の布のようにふわりと動いて、正式な神職の装束をきたお母さんは、うっとりするぐらいキレイだ。
で、これは知る人ぞ知ることだけど、マガモノ祓い(はらい)の仕事もしている。
マガモノってのは、呪いや妖怪のことだよ。、
つまり、うちの神社は代々退魔のお仕事もしているの。
あたしのお姉さんたちも、人を守るお仕事をしているんだ。
なので、いつかあたしもと、ものごころつくと同時に思っていた。
だから、その日が来たのは、嬉しかった。
本当だよ。ウソじゃないよ。