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第六章 6
「じゃあ……この家は、厄災の前からあったわけか……」
俺がそう言うと、レイドは小さくうなずいた。
「うん。おそらく、そうだと思う」
少し間を置いてから、レイドは続ける。
「でも……私はたぶん、厄災のあと、かなり長い年月眠っていたみたいなんだ。気がついたのは、ほんの最近でね」
「ここにある、このベッドで目を覚ました」
そう言って、部屋の奥に視線を向ける。
「とても長い……“夢”を見ていた気がするんだ」
「そうか……」
俺は、それ以上、軽々しく言葉を重ねられなかった。
「まあ、そのうち記憶も戻るんじゃない?」
リーフが、明るく声をかける。
「そうそう!」
ジャックも大げさにうなずく。
「記憶ってのはよ、ふいに戻ることもあるらしいぜ!」
一瞬、部屋に静けさが落ちた。
「……うん」
レイドは、ゆっくりと笑った。
「そうだね。希望は……捨てないようにするよ」
その笑顔は、まだ少し頼りなかったけれど――
確かに、前を向いているように見えた。




