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運命のカウントダウン 3
「どういうことだ……!」
空を見上げると、夜空全体が、わずかに光を帯び始めていた。
星ではない。月でもない。
空そのものが、内側から輝いている。
遠くで、サイレンの音が聞こえた。
ひとつではない。いくつも重なり、世界が非常事態に向かっていることを告げている。
その時――
礼人の頭の中に、直接、声が響いた。
『――お前は、選ばれた』
『これから、お前は繭になる』
『静かに、眠る場所を選べ……』
「なんの……ことだ……!」
混乱する礼人の意識に、突如として映像が流れ込む。
それは、自分の記憶のはずなのに、見覚えのない光景。
――地下。
――分厚い扉。
――人知れず作られた、地下シェルター。
そこは、礼人自身の〝アジト〟だった。
「……思い出した……?」
頭の奥で、誰かが笑った。
くすり、と。
少女のもののような、いたずらっぽい笑い声。
そして、礼人の意識は、ゆっくりとほどけていく。
記憶は一枚ずつ、静かにロールアウトされ――
世界は、次の段階へと移行し始めていた。




