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運命のカウントダウン 2
翌日、縄文杉のツアーは穏やかに進んだ。
数人の参加者とともに森を歩き、悠久の時間を生きる巨木を見上げる。
心が洗われるような感覚はあったが、何かが「足りない」――そんな違和感だけが残った。
その夜、再びペンションに戻った礼人は、翌日の帰路を思いながら、落胆していた。
結局、何も得られなかった。
そう思った、その瞬間だった。
森が、ざわめいた。
夜の闇の中で、木々が不自然に揺れ、空気が重く歪む。
礼人は息を止め、周囲を見渡した。
何かが「来る」――そんな予感だけが、背筋を這い上がる。
しかし、その気配は、嘘のように静まり返った。
拍子抜けした礼人は、無意識に携帯を開いていた。
例の、カウントダウンアプリ。
AI音声が、淡々と告げる。
『――0地点までの猶予は、あと三千三百三十三秒』
『続きまして、0地点までの猶予は、あと三千……』
「……え?」
礼人の手から、携帯が滑り落ちた。




