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第五章 12
次の瞬間――
象の巨体が、真横に吹き飛ばされた。
「……は?」
あまりに現実離れした光景に、
俺の口から、間の抜けた声が漏れた。
象型のバケモノは、
地面を何度も転がり、
最後は――動かなくなった。
残ったヤツらは、
完全に戦意を失ったらしく――
甲高い悲鳴をあげながら、森の奥へと逃げ去っていった。
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静寂。
さっきまでの地獄が、
嘘みたいに――消えた。
そして、気が付くと俺はもとの場所へ立っていた
黒い影は、ゆっくりと俺の前へ歩み寄る。
輪郭が、少しずつ――人の形になる。
長いコートのようなシルエット。
顔は、まだはっきりとはしない
「……大丈夫かい?」
頭の中ではなく、
はっきりと、耳に届く声。
低く、落ち着いた声だった。
「……あ、あんた……」
影の奥で、
その“何か”が、ほんの少し笑った気がした。
「間に合ってよかった」
「約束しただろう」
「キミのチカラになる、って」




