第五章 8
その時――
何かが、決定的に変わった。
「……んっ?!
なんだ……? 様子が……変だ……」
俺は、恐る恐る目を開けた。
すると――
目に映る世界が、ありえない状態になっていた。
俺の身体も。
バケモノも。
傾きかけた大木も。
すべてが、止まっている。
まるで――
世界そのものが、時間ごと凍りついたかのようだった。
色合いもおかしい。
現実なのに、現実じゃない。
輪郭はあるのに、どこか遠い。
――俺自身も、動けない。
「……これ……」
ふと、頭をよぎる。
――死ぬ前に、
過去の出来事がフラッシュバックするって話……
まさか……これが……?
そう考えた、その瞬間――
頭の中に、直接“思考”が流れ込んできた。
〝違うよ。
それは、死の前兆じゃない〟〝
「――っ?!」
〝私が、キミに干渉したんだ〟〝
〝キミが……
あまりにも、強く助けを求めていたから〟〝
〝今、止まっているのは時間じゃない〟〝
〝キミの意識だけを、
私が作った世界へ連れてきている〟〝
「……誰だ……?!
どこから話しかけてきてる……?!」
〝私の名は――『レイド』〟〝
〝たまたま、近くを通りかかった時……
キミの“思い”が、私に届いた〟〝
〝キミは……
助けを求めていたんだよね〟〝
〝私が存在を始めてから……
【ねがい】を受け取ったのは……初めてなんだ〟〝
〝この世界には……
憎悪と衝動しかないと思っていた〟〝
〝でも……
キミが差し出した【ねがい】は――
とても、美しかった〟〝
〝だから……
私は、キミの力になりたい〟〝
静かな声だった。
威圧も、命令もない。
ただ――
確かに“こちらを見ている”と感じる声。
世界は止まったまま。
だが、俺の心臓だけが――
確かに、強く打っていた。
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