第九章 4
突然、レイドが姿を現した瞬間、クリスは思わず声を上げた。
「えっ、何っ!」
「こいつは、俺の部下のレイドだっ!心配はいらない!」ジャックは落ち着いた声で説明する。
「そう、何か変な設定だけど……レイドだよっ!」
「私の、体に触れてっ!」レイドは笑みを浮かべ、手を差し伸べた。
クリスとジャックがレイドの体に触れると、三人の姿はふわりと光に溶けるようにかき消えた。
「クリスティーナ!!!」
「何という事だっ……」
街中は、突然の出来事にざわめき、驚きと混乱の声が入り混じる。
その頃、レイドとジャック、そしてクリスは、地下にあるレイドの家に到着していた。
「レイド、ケン達の様子を見て来てくれるか?」ジャックは頼むように告げる。
「もう、人?使いが荒いね……わかったよ、ちょっと待ってて」
レイドはそう言うと、柔らかい光の粒となって、再び姿を消した。
ジャックはクリスに向き直り、静かに話し始める。
「それで……よければ、詳しい話を聞きたいんだけど……誘拐犯としては?」
クリスは深くため息を吐き、肩の力を抜く。
「ごめんなさい……変なことに巻き込んでしまって……」
彼女の瞳には、どこか疲れと迷いが漂っていた。
「私は、ドワーフの里の現女王をしている、クリスティーナ・カレンと言います」
「さっきの男性は、父ですっ!」
「同じく、現・大臣の主席として、里を治めています……バレル・カレンと言います」
彼女は小さく息を整え、言葉を選びながら続ける。
「私は、もともと女王なんて目指していなかったのに、父に説得されて、一期だけという約束で前回、女王に立候補しました」
「しかし、もう嫌なんです……周りは権力に群がる変な人ばかりだし、お父様はその人達を従えて、満足そうだし……私は、いったい何の為にそんな暮らしをしているのか……わからなくなりました……」
ジャックは黙って、クリスの話に耳を傾けた。
目の前の少女の背負う重さを、静かに受け止めるように。




