第九章 2
しばらく、街中を散策するケン達。
その後ろには、何やら不審そうに距離を置いてついてくるドワーフ達の姿が数人あった。
皆で小さな茶屋に腰を下ろし、ほっと一息ついてお茶を楽しんでいると――
「クリスティーナ!」
「探したぞっ!さあっ、私と一緒に帰るんだっ!!!」
突然、威圧感のある声が響いた。
振り向くと、堂々とした格好のドワーフの男性が立っており、その後ろには、かなりの人数の歩兵風の男たちが、整然と控えていた。
クリスの顔色がみるみる蒼白に変わる。
「おっ、お父様!私は帰りません!書き置きに、そう書いていたはずですわっ!」
「お前は、何を言っているんだっ!!!」
「お前は現・女王なのだぞっ!!!もうすぐ次の女王選挙も控えておるっ!」
「こんな事をしておる暇はないのだっ!!!」
ドワーフの声には、命令と焦燥が入り混じり、周囲の空気を圧迫する。
「女王は、五年、一期だけの約束だったはずです!」
「私は次の選挙には出るつもりはありません!!!」クリスは震える声で、しかし強い意志を示した。
その場に居合わせたケン達は、思わずあっけにとられる。
「もうよい!!!」
「そんな話しは屋敷に帰ってから、ゆっくり聞く!!!」
威厳たっぷりのドワーフが、部下に声をかける。
「さっさと、クリスティーナを連れ戻すんだ!」
ドタドタと部下たちが周囲を取り囲み、空気が一瞬で張り詰める。
そのとき、いつのまにかアーマード変化していたジャックが、素早くクリスの手を掴む。
「おっと、こいつは俺の人質だっ!!!勝手に触るんじゃねぇ!!!」
ジャックの腕がクリスの体をしっかりと拘束する。
そして、小声でクリスに囁く。
(俺に合わせるんだ!)
クリスは小さくコクリと頷く。
「お父様、この人に逆らってはなりません……この人は、身代金を要求しています!!!」
(ええっ!!!)
ジャックは心の中で、盛大に声にならない叫びをあげた。




