第八章 19
翌朝。
朝霧がまだ地面に薄く残る時間帯、ケンたちは再び獣人たちの里へと足を運んだ。
昨日までの緊張が嘘のように、里の空気は穏やかで、あちこちから低く落ち着いた獣人たちの声が聞こえてくる。
里の中央に集まった獣人たちは、ケンたちを見ると静かに頭を下げた。
言葉よりも先に、その態度が感謝を物語っていた。
「昨日は、本当に助かった」
獣人のリーダーが、一歩前に出てそう告げる。
その声には、戦士としての誇りと、仲間を救われた者の率直な感謝が混ざっていた。
ひと通り礼を述べ終えると、リーダーは改めてケンたちに問いかけた。
――なぜここへ来たのか。
――どこへ向かおうとしているのか。
ケンは一度、仲間たちを見渡してから、静かに口を開いた。
自分たちの目的は、はるか彼方に存在すると言われる、地表から地下へと続くトンネルを探し出すこと。
それは地下世界へと通じる唯一の道であり、アルメニアへ帰るために欠かせない通路だった。
そのためには、この先にあるドワーフの郷、エルフの里を抜け、さらに魔界を越えなければならない。
選択肢はなく、遠回りもできない――それが、ケンたちの置かれた現実だった。
話を聞き終えたリーダーは、しばらく黙考した後、深くうなずいた。
「昨日の戦闘で、我らの防具や武器はかなり損傷した」
そう前置きしてから、彼は続ける。
修理のため、ドワーフの里へ向かうつもりだという。
そして――
「よければ、我らも同行しよう」
その提案は、助力であると同時に、信頼の証だった。
ケンたちは短く顔を見合わせ、すぐにうなずく。
こうして彼らは、獣人の一団と共に、次なる目的地――ドワーフの里へと旅立つことになった。




