第八章 記憶を持たない者たちの地で!
地表を歩くことは、もう特別な行為ではなくなっていた。
乾いた風、ひび割れた大地、遠くに見える崩壊した構造物の残骸。
ケンたちは、すでに何日もこの世界を移動し続けている。
それでも――
ここは、これまでとは違った。
「……気配が、多い」
ジャックが小声で言う。
隠れている、というよりも、集まってきている。
その違いに、ケンはすぐ気づいた。
草原の向こう、岩陰、低木の影。
複数の視線が、はっきりとこちらを捉えている。
「止まるな。けど、刺激するなよ」
ケンの言葉に、リーフがうなずく。
――次の瞬間だった。
「……なんだ、あれは」
声は低く、ざらついていた。
驚きと警戒が、隠そうともせず混じっている。
3人を伺っていたのは、獣でもなく、かといって人でもない存在、そう、獣人達だった。
人と同じように二足で立っているが、耳は長く、毛並みが首元から肩にかけて伸びている。
目は、明らかに“初めて見るもの”を見る光だった。
「二本脚……だが、匂いが違う」
「魔物でもない。魔人でもない」
周囲から、ざわめきが広がる。
ケンは、ここで初めて足を止めた。
「……俺たちは、敵じゃない!」
その言葉に、獣人たちは一斉に反応した。
ざわめきが、困惑に変わる。




