第一部 ――地下に落ちた少年と、世界をほどく少女――プロローグ!
世界は、少しずつ歪みながら、静かに移ろい続けている。
かつて当たり前だった日常は、
気づかないうちに形を変え、
人々はその変化を受け入れることも、
抗うこともできないまま、
それぞれの場所で生きていた。
これは、
混沌の中で出会い、別れ、
それでも前へ進もうとする者たちの物語。
はっきりとした正義も、
絶対的な答えも存在しない世界で、
彼らが見たものは、
果たして「希望」だったのか、
それとも――。
時は、二〇XX年。
初夏とは名ばかりの、肌にまとわりつくような蒸し暑い夜だった。
だが、その不愉快さは、この地下の一室には届かない。
彼が身を置く〈仕事室〉は、外界から切り離された快適な箱だった。重厚な防音壁、精密に制御された空調、無駄を排した装飾と最新鋭の電化設備。短時間で莫大な金を生み出すためだけに整えられた、特別な空間である。
場所が地下であることにも意味があった。
偶然を装った訪問者、予期せぬトラブル、あらゆる“邪魔”を想定し、徹底的に排除するための選択だ。彼はその部屋に籠もり、ただ黙々と、パソコンのキーボードを叩き続けていた。
一見すれば、流行りのクリエイターのようにも見えるだろう。
だが、それは幻想に過ぎない。
彼の職業は、〈ハッカー〉。
依頼を受け、高額な報酬と引き換えに、進入不可能とされる場所から“データ”を盗み出す、違法行為のプロフェッショナルだった。
名を、氷倉礼人
ハッカーとしての通り名は〈レイド〉。本名も、所在地も、過去も——彼に関するあらゆる情報は闇に沈められている。それが、彼の流儀だった。
最後までご覧いただきありがとうございました
この後も、色々な世界観を描いてゆきたいと思いますので、またご機会があれば、是非また、私の世界へお越し下さいませ!




