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記憶屋メモリア

作者: 小野辰典

ここは記憶屋メモリア。大切な記憶を取り扱うお店。今日はどんなお客さんが来るのかな?

ここは記憶屋メモリア。大切な記憶を取り扱うお店。今日はどんなお客さんが来るのかな?

店主) いらっしゃい

女の子) おじさん助けて!大切な記憶をなくしたの…

店主) おやおや、心配しなくても大丈夫だよ。いつ頃の記憶を探してるのかね?

女の子) それも、、わからないの

店主) そうかい、じゃあちょっとそこで待っておくれ

女の子) うん!分かった!

店主は暖簾をめくり、部屋の奥へと進みました。その先には無限の層にまで拡張された記憶の倉庫<インデックス>が広がっていたのです。

店主) リロード、オン。

記憶の読み込み<リロード>。それは他者が観た世界を読み込む能力。そう、店主はこの世界に住む一人ひとりの記憶を片っ端から読み込み、少女を探そうとしていたのだ。

店主) あの子の記憶がないのならば、周りがあの子について記憶していることを観ていけば復元できるはず

ー女の子の記憶を探し始めて5時間が経過した。ー

店主) かれこれ500人以上の記憶をリロードしたが、なかなか骨の折れる依頼じゃな…

そう、記憶をリロードするというのは早送りできるものの、その人の人生全てを観ないといけないので疲れるのだ

諦めようとしたその瞬間、店主が見たのはあの女の子の姿だった!

店主) おお!!こ、これは

店主) お台場の海岸?何か見覚えがるような…

店主) 少し早送りしてみるか…

記憶を持つ男) おいおい、そんなに遠くに行ったら危ないぞ

女の子) 大丈夫だもん!浮き輪あるしー

記憶を持つ男) おおじゃあ気をつけるんだぞ

女の子) はーい

店主) もう少し早送りしてみるか

お父さん助けて!

記憶を持つ男) ?!

店主)?!

そこには少女の何十倍もの大きさの波が彼女をのみこむ瞬間が写っていたのだ。

店主) ここで記憶が途切れている…一体何があったんだ?!

店主は記憶を持つ男と同じ苗字を持つ女の記憶を辿った

店主) 病院…?

医者) 大変申し上げにくいのですが、これはかなり深刻な状況です。ご主人は皮の首一枚つながって息をしていますが、意識がない状態です。

記憶を持つ女) …そうですか…

医者) それで、娘さんの方なのですが、先ほど息を引き取られました…

記憶を持つ女) そ、そんな…………

店主) こんなことって…そうか、あの子はすでに亡くなっていたのか…

店主) あのお父さんの容態も気になる。もう少し早送りしてみるか

医者) もうあれから5年経ちますね。毎日通ってもらえてご主人も喜んでいると思いますよ。

記憶を持つ女) ええ、私ももうすぐ、そこに行きます

店主) 待てよ、この植物人間になった男、よく見たら…

暖簾をめくり、店主が戻ってきた

店主) ずいぶんと待たせてしまったね、あの時助けられなくてごめんね。大切な記憶をなくしていたのは私の方だったよ。

女の子) おかえり、お父さん。

??) すみませんー

メモリアに新しい客が来た

女) 大切な記憶をなくしてしまって、助けていただけないでしょうか?

ここは記憶屋メモリア。大切な記憶を取り扱うお店。今日は特別なお客さんが帰ってきました。

ーENDー

あすとろいど著『記憶屋メモリア』

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