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1-8 土地開拓の第一歩

「――こんなもんだな」

「なるほど。これがお前達の組む術式か」


 各地点に木製の柱を立て、巨大な魔法陣を組んでの術式。要所に柱を打ち立てるだけで二週間程度かかったが、領地の半分がこれで拓かれるのならば少しも惜しくない。おまけとして各地でグールや人攫いなどの掃除もしたおかげで、少しずつではあるが力も戻ってきている。


「因みに見世物じゃねぇからなこれ。俺じゃなくて寺院の爺さん達に同じことやらせてみろ、大金とられちまうからな」

「ククク、お前こそ、修行中の身だからこそできる練習と思え」


 実際問題、これで浄化ができるかどうかはまだ確定的ではない。しかしそれでもやってみるだけの価値はある。


「それじゃ、いくぞ――」


 アビオスが最後の柱の代わりに杖を立て、そして柱で囲んだ区域に浮かび上がる魔法陣に、私が手を当てる。

 できれば勇者の魔力との相殺ではなく回収という形で沈静化を図りたいところだが、一番の優先事項は土地の浄化だ。


「――荒れ狂う大地よ、我が声を聞け、我が声に導かれよ。天に地に染み渡り、しがらみを捨てよ――」


 呪文が唱えられていく中で、それまで地面に染みついていた魔力が徐々に溶け出していくのを感じる。


(……今なら少しだけ、回収ができるか……?)


 吸魂の要領で、浮いた過去の己の魔力を吸い取る。するとそれまでになかった、みなぎるような力の充足を感じてしまう。


「……もう少しだけ――」

「――っ!? ちょっと待てあんた! それ以上余計なことをするな!! バランスが崩れちまう!!」

「っ、これはこれは、すまない」


 つまみ食いがバレてしまったか。仕方ない、確かにこれ以上吸ってしまえば、残った勇者の魔力が優勢となってここが一気に清浄化され、今度は私にとって生き辛い土地になってしまう。


「――浄化せよ(ピュリフィケーション)!!」


 アビオスの声と同時に魔法陣は割れ弾け飛び、それに巻き込まれるようにして魔力が宙へと霧散していく。


「……一応は成功か」

「……素晴らしい」


 まだ大きな変化を見ることはできないだろう。しかし三月みつきもたてば草も生え、元の大地に戻っていくことになるに違いない。


「とりあえず、成功ってことで良いのか?」

「勿論だ」

「そりゃよかった。それじゃ、もう半分も同じ要領で行けそうだな」

「いや、それはまだ暫くいい」

「ん? どうしてだ? 折角浄化ができるって分かったんだから、もう半分もやった方が早くねぇか?」


 確かに本来はその予定でまずは試しに半分を、という話だった。だが散った魔力が吸収できるとなれば、話は別だ。


「要領は私の方も掴んだから、残り半分はできれば自力で試してみたいということだ」

「そうか? 滅茶苦茶になりそうだったら今度は俺が手伝ってやるよ」

「それはありがたい。だが他にも知恵を貸してほしいことが山ほどあるのだ」

「げぇっ、まだあるのかよ……」

「それだけ助けを必要としているという事だ」


 アビオスの機嫌を取りつつ、残りの浄化作業の準備も推し進めていく。恐らくこの男はこれで解放されると思っているのだろうが、そうはいかない。

 まだまだ課題は山積みである。ダークエルフ達が安全に暮らせる場所の確保、流刑の身とはいえいずれラインヴァントは魔王として正式に我が領地とするつもりなのだから、ここに住む民も必要となる。

 民がいるとなれば農業が栄えるだろう、そして農産物が産出されたならそれを売り買いする為の物流を発生させ、交易を生まれさせなければならない。


 ――やることは沢山あるのだ、絞りカスになるまで働かせてやろう。

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