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2-6 魔王の妻

「うーん、うーん……はっ!? ネロ様がどこかに連れていかれてしまう!?」

「ここにいるぞ」


 それにしても随分とうなされていたようで、ルスケアは汗まみれとなった体を寝床から起こしている。


「ネロ様!? よ、よかったぁー……」


 てっきり勇者アネラに連れていかれたと思っていたようで、私が隣に座っていたことに対して胸をほっとなでおろしている様子。


「ひとまず水でも飲んで落ち着くといい」

「はい、ありがとうございます」


 私の手からコップを受け取り、水を飲んで一息をつく。そうしてようやく落ち着いた表情を取り戻したルスケアだったが、やはり不安は完全に取り除かれていないようで、コップを持つ手が僅かに震えているのが見える。


「……ルスケア、大事な話が――」

「ネロ様大丈夫かー? あったかい飲み物を持ってきたが――って、ルスケア!? 大丈夫か!?」


 タイミングがいいのか悪いのか、私と同じでルスケアの様子を見に来たブローナが、起き上がったルスケアを見て驚きの声をあげる。


「気が付いてよかったぜー、まさかぶっ倒れるとは思っていなかったからよ」

「っ! ええ……そうね……」


 今起きたばかりのルスケアにとって、アネラの話はまだ整理がついていないまま。しかしブローナもいる今こそ、ある意味では丁度いいタイミングかもしれない。


「……二人に話がある」

「話って――」

「あの勇者のことですか?」

「そうだ」


 ブローナはさておき、ルスケアは気絶したまま故に、アネラがここを去る時の言葉を耳にしていない。彼女の中の不安が大きくなっているであろう中で、その不安を払しょくするべく私は話を続ける。


「さっきも聞いての通り、私とアネラはある取引をした結果、婚姻関係を結ばざるを得なくなった」

「っ! それって無理矢理ってことじゃ――」

「いや、それも違う。私が軽率に口にしてしまったところに責任がある」


 そこからアネラと婚姻関係を結ぶことで、勇者の口から私が魔王ではないと王国に告げることができるということ、決してアネラから虐げられるような関係になることではないということ。

 そしてこれは別に言う必要は無かっただろうが、アネラにも結婚しなければならない事情があることなど、私は包み隠すことなくルスケアに伝えた。


「そうだったんですね……確かに人間の寿命は百年に満たないものなので、焦る気持ちも分からなくはありませんが――」

「なんだよ、あたし達はそういった意味じゃ長命だから余裕があるよな」

「余裕があるとはいえ、今の私も人間の身だ。恐らくは百年と経たずに朽ち果てる」


 まだ残りの人生があるとはいえ、このような額に角を生やした男と結婚する者などそうそう見つかるまい。そう考えれば、ここでアネラと結ばれるというのもなくはないといえるか。


「以上の経緯からこのネロ=ファルベの正妻として、アネラ=エスメラルダをめとることになってしまうのだが――」

「ちょっと待ってください!」


 ここで突然何を思ったのか、ルスケアがまたしても私の話を遮ってしまう。


「あの勇者は、あくまでネロ様のお嫁さんという事ですよね!?」

「……? まあ、そうなるが……?」

「でしたら私、魔王セフィード様の妻になります!!」

「……んん!?」


 ちょっと待て。話についていけない――


「おお、それいいな! 魔王様だったら一夫多妻もありに決まってるし、あたしも妻にしてもらおっと!」

「待て待て待て!? 話についていけないのだが――」

「大丈夫です! 私に任せてください!」


 これもしかしなくても、また話がこじれてくるのではないか……?

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