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2-3 宿命の相手

「なんだなんだ、急に真面目になって対策を一緒に考えてくれるとは、一体何があった?」

「……何も、なかった」

「はぁ?」

「いいんだ、何も聞くな。それよりも真面目にこの状況を整理して、次に相手が打ってくる手を考えるんだ」


 悶々とした気持ちを押し殺しつつ、アビオスと向き合うように座り込む。常々思うが、今回ばかりはこの身がまだ七歳で良かったと本当に感じている。


「何を焦っているのやら……というか、恐らく次に打ってくる手は一択しかないだろ」

「……今までよりも数段強い者を送り込んで来るという事か」

「そういうことだ」


 確かにわかりやすく明快な話だ。相手は今頃、弟相手に退いてしまったことに苛立ちを覚えているだろう。怒りに任せてこちらを攻撃の手段を送り込んで来る可能性が高い。


「となれば、こっちでも強いメンツを揃えておいた方が良いだろうが――」

「いや、その必要は無い」


 最初から攻撃をするつもりなら、こちらにも考えがある。それこそまだ処分先(不浄の地)も残っているのだ、やりようはいくらでもある。


「今回は最初から私が出よう」

「おいおい、下手に出て向こうに魔王討伐の言い分渡しちまっていいのか?」

「不浄の地はまだ半分残っている。ならば、そこで事故が起きてしまったとして誰が責任を持てる?」

「その話、通じるのか? もう半分は浄化済みなんだから、そこを通ってくると思うが」

「……ならばもっと単純に行こうではないか。簡単なことだ――」


 ――洗脳して送り返し、こちらの思うがままの発言をしてもらうとしよう。



               ◆ ◆ ◆



「前回はここで遭遇いたしました。間違いないかと」

「…………」


 以前ミルベについていた二人の護衛の内の片方が、騎士の鎧を着た一人の方を振り返って話しかける。布のフードで顔を隠した寡黙な騎士は、護衛の言葉に対して特に返事を返さず、ただひたすらに虚空の一点を見つめているように思える。

 三人はそれぞれ馬に乗っていて、このラインヴァントを目的地として訪れていた。そして今回目的とするとある子供を探すべく、辺りをキョロキョロと見回している。


「……本当に大丈夫なのか?」

「気にするな。どうせ始まりさえすれば、俺達は退散すればいい」


 フードの騎士はそんな中、ひたすらにかつて不浄の地と呼ばれた土地に芽吹く自然を眺めていた。かの者の胸中を推し量ろうにも、多くを語らないところから誰も知ることができない。


 ――最も、知りたがる者もいない訳であるが。


「……いたっ! あれだ!」


 護衛の声に反応したのか、騎士はその方を見やる。すると遠くに見えるのは、噂となっている第四王子、ネロ=ファルベの姿。まだこちら側に気がついていないのか、呑気に野草を取っている。


「どう思います? あの子供のこと」


 護衛が騎士の方を見ると、何かに感づいたのか、騎士はハッとした様子で馬を降り、まるで何かを確認するかのように、徐々に王子の方へと近づいていく。


「なんだなんだ?」

「相変わらず何を考えているのか分かんねぇよな」

「まっ、俺らが見ているはいつも酔っぱらって店主にダル絡みする姿な訳だし、元々何をしたいのか、分かる筈ねぇよ」


 全て騎士に丸投げするかのように、護衛の二人はそのまま様子を伺う。そんな中で騎士は徐々に足早になり、王子に近づくにつれてやがてそれが駆け足となっていく。


「ん……?」


 ここでようやく王子側も気がついたのか、騎士の方を向く。そして何かを察知したのか、それまでにない険しい表情でもって、騎士を迎え撃つ構えを取る。

 遂に騎士の右手が腰元の剣の柄へと伸びていく。そして人間が想定する速さを超えた縮地しゅくちという技でもって接近すれば、顔を隠していた布が風によってはぎとられ、隠れていた顔が露わとなっていく。


 ――その表情はまさに鬼神のごとく。普段の彼女を知っている者からすれば、同一人物とは思えぬ表情でしかない。


「ハアアアアアアァッ!!」

「なっ!? 貴様、まさか――ッ!!」


 瞬間――剣と爪とがかち合い、辺りに衝撃波が走る。甲高い金属同士がぶつかり合う音が、静寂な空間に響き渡る。


「ある程度の強者の可能性を考えていたが、まさか貴様が来るとはな……ッ!!」

「私の方こそ、驚いたよ。まさか貴様が生きていたとはな……ここでもう一度死ぬがいい!!」


 ――我が宿敵、大魔王セフィードよ!!

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