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一歩進んで

「なぁ、船乗りさんが助けられた『ポヨンポヨンして、色んな色が大量に群れてる変な生き物』って……」


「私も言おうと思ってたのよ、あれ、ポンポンのことだよね?!」


潮騒亭から出た私たちは近くで子供と戯れ、シャラン、キュインと弾けて遊ぶポンポン達を見て頷きあった。


「あいつらに話して連れて行ってくれると思うか…?そんなに賢そうじゃないぜ」


「どうかしら?ねぇポンポーン!!」


足を踏みしめて胸をそらし、呼びかける。

すると、ポンポンたちは子どもたちに別れを告げるように高く飛び上がりこちらに来た。嬉しそうに私に頬ずりしたりレオンにじゃれついて困らせている姿がとてもかわいい。


「ねえ、ポンポンちゃん。きみは妖精さんのいるところ知ってる?」


ひときわ私にすり寄ってくる黄色いポンポンに聞く。

と全てのポンポンがピタッと動きを止めた。


「キュ、キュワーン……?」


「………………なんかこいつら隠してねぇか?」

「アハハハ!でも、この子たちちゃんと言葉がわかってるわよ。」


「こんなもみくちゃにしやがって!お返しだ〜!!オラッ!吐きやがれ!」

そう言うとレオンはポンポンたちをむぎゅ~っと抱きしめて押しつぶす。


キャラキャラと鈴の鳴るような透き通った鳴き声が笑っているようでポンポンたちも喜んでいた。


しばらくレオンは「いい加減案内しろ〜!」だの「なんかちょっとでも知ってること教えてくんねぇか?」だの「頼むよ!」など言いながらポンポンと戯れていたがついに肩を上下させてバタンと近くのベンチに座り込んだ。



「ぜぇ、ぜぇ、、あ゛ーーー。俺の拷問もものともしねぇぜコイツラ」


「ふふ、拷問してるつもりだったの?あなた遊ばれてたわよ。」


「わぁってんの!俺も!でもお前も楽しそうだったよな」


レオンはどうやら拷問のつもりらしいポンポンとの戯れをみていてニヤニヤしていたのを見られていたらしい。


「なんのことかしら?ふふふ」


「……まあ毛頭無理矢理聞くつもりもねぇよ。」


そう言ってレオンは目をつぶり手を広げて空を仰ぐ。

どうすればいいかわからないようだった。


霧の深い森、エルフの森。

私たちに残されたヒントはそれだけだ。


「ねぇ、お腹空かない?」


「いきなりなんだよ。いっつも食ってばかりだなリナは」


「あの星実のおにぎり、すっごく美味しかったわ。エルフの森に戻るっていうのはどう?船乗りさんの話しにでてきたんだし」


私はレオンの隣に座ると、膝を抱えながら言った。


「…そうだな、俺もだ。あの優しくて温かい味が忘れられねぇ」


手で目を覆い、懐かしそうにレオンが言う。


「ほら、あのおにぎりって、きっと誰か大切な人のことを想いながら握ったんだろうなって、そういう味がしたでしょう?」


「……。もしかしたら、旅の前に食ったごちそうを思い出しただけかもな」


そう言って、少しだけはにかむレオン。

私も彼の隣で、そっと静かに微笑んだ。


「ねぇ、レオン。無理に聞き出そうとしなくても、きっと道は開けるって信じてみない?」


「……。どういうことだよ」


「私たち、いつもそうやって来たじゃない?行き止まりだと思ったら、思わぬ方向から風が吹いて、道が開けた。きっと妖精さんも、私たちを待っててくれてるわ」


私は立ち上がると、レオンの前に立つ。


「まずは、お腹を満たそう。その温かいおにぎりみたいな、優しさに満ちた道しるべをきっと見つけられるわ」


そう言うと、レオンはゆっくりと目を開けて私を見つめた。

その瞳には、少しだけ諦めを秘めた光が、希望の光に変わっていくのがわかった。


「……そうだな。わかったよ、リナ。あのじいちゃんに腹いっぱい食わせてもらったお礼もできてねぇしな。マルクにも…会いてぇし。」


レオンも立ち上がると、再び私の方を見て微笑む。


「……それで?どこに行けばいいんだ?」


彼はそう言いながら、私に手を差し伸べてきた。

私はその手をぎゅっと握りしめ、二人は再び歩き始め、不思議と不安はなかった。


優しさに満ちた道しるべは、きっと見つかる。

そして、その先にはきっと妖精さんたちが待ってくれている。

私たちは、お互いが今そう確かに信じているのを手のぬくもりと一緒に感じていた。

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