虹苔パワー
「なるほど。ドラゴンを落ち着かせられれば、戦わずに済むってわけか。けど、どうやって使うんだ? アイツ、すげー暴れてるぞ」
彼の言う通り、ドラゴンは咆哮を繰り返し、黒い霧を吐き出していた。
私は古書を素早く開き、粉の使い方を確認した。
「飲ませるんじゃなくて…霧に混ぜて吸わせるの。勇気の粉は気化させると効果が広がるって書いてある。レオン、ドラゴンの注意を引きつけて。私が粉を準備するから!」
「了解! 任せとけ!」
レオンは剣を振り、ドラゴンに向かって突進した。
私は崖の陰に身を隠し、背囊から小さなガラス管と星涙水を取り出した。
ドラゴンが咆哮し、谷を震わせた。
黒い霧が地面を這い、草木を枯らす。
レオンは軽やかに跳び、ドラゴンの爪をかわして剣を振るった。
「ほら、こっちだ! 俺を捕まえてみろよ!」
彼の剣が鱗をかすめ、火花が散る。
ドラゴンは怒りに狂い、尾を振り回すが、レオンは岩を足場に跳び回り、巧みに注意を引きつけた。
私は勇気の粉をガラス管に詰め、星涙水を数滴加えた。
粉が光を放ち、管の中で金色の霧に変わる。
私は管を振り、霧をドラゴンの黒い息に向かって放った。
「これで…効いて!」
金色の霧が黒い霧と混ざり、ドラゴンの鼻先に漂う。
ドラゴンが大きく息を吸い込み、金色の光がその目を照らす。
咆哮が弱まり、動きが鈍くなる。
赤い目が一瞬、澄んだ緑に戻った。
「リナ! 効いてるっぽいぞ!」
「やったね!」
レオンの声に、私は拳を握った。
ドラゴンの体が縮み始め、黒ずんだ鱗が剥がれ落ちる。
だが、完全に正気を取り戻す前に、ドラゴンが再び咆哮し、進化のエネルギーが暴走しているのが分かった。
「レオン! 勇気の粉で恐怖は和らいだけど、進化のエネルギーがまだ暴れてる! ドラゴンを落ち着かせるには、星の力を直接ぶつける必要がある!」
私は背囊から虹苔の欠片を取り出し、古書の指示を思い出した。
虹苔自体が星のエネルギーを凝縮した存在だ。
これを使えば、ドラゴンの暴走を止められる。
レオンはドラゴンの首元に跳び、剣を振り下ろした。
「なら、俺がアイツを足止めする! リナ、急げ!」
ドラゴンの尾がレオンを襲うが、彼は転がってかわし、剣で反撃。
鱗が砕け、血のような液体が飛び散る。
私はドラゴンの近くに駆け寄り、虹苔の欠片を手に持つ。
星涙水を振りまき、苔に意志を込めた。
「虹苔………!ドラゴンを救って……!」




