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潮騒亭への帰還


「ねぇ、レオン。この子たち、人魚さんに会えて、なんだか落ち着いちゃったみたいだね」

私がカバンに入っている波鳴草はめいそうを見てそう言うと、レオンは冗談めかして返す。


「うるさいのが黙ってくれるなら、俺も人魚になってみようかな」

「レオンが人魚に? 想像できない…」


私がそう言ってくすくす笑うと、レオンはむっとした顔で私を睨んだ。


「お前がエリクサーを作るんだ。 俺だって、人魚にくらいなれるさ」


レオンの口元には笑みが浮かんでいた。



海鳴りの洞窟を抜け、潮騒亭の木造の看板が見えた時、私たちはようやく帰ってきた安堵感に包まれた。


「やっと帰ってきた! マリナさんに、人魚さんのこと、舞踏会のこと、色々話したいことがいっぱいあるんだ!」


「お前が騒ぎ出すと、話が長くなるんだよな…。あぁ、マリナ、覚悟しておいた方がいいぜ」


「なによ、失礼しちゃうわね。マリナさんだって、お土産話を聞かせてって言ってくれたじゃない!」





私がそう言い返しながら潮騒亭の扉を開けると、そこには、いつものように優しい笑顔を浮かべたマリナさんが立っていた。


「おや、リナにレオンじゃないか。ずいぶん日に焼けたねぇ。どうだった、人魚の入り江は?」


マリナさんの問いかけに、私は目を輝かせながら、人魚との出会い、舞踏会のこと、レオンに助けられたことなど、冒険の全てを話した。

マリナさんは、私の話を興味深そうに聞きながら、時折、質問をしたり、感想を述べたりした。


レオンは、いつものように呆れた顔をしながらも、時折、私の話を補足したり、訂正したりした。


「それでね、人魚さんが子守唄貝っていう、大事な貝を持ってて…」

私が子守唄貝の話を始めると、マリナさんは目を丸くして驚く。


「子守唄貝? そんな伝説の貝が、本当にあったのかい?」

「うん! 人魚さんの歌で生きてるの。でも、その貝が眠れなくなっちゃって―――――――………」


私がそう説明すると、マリナさんは真剣な表情で頷いた。

「それで、リナが薬師の力で癒しポーションを作って、子守唄貝を元気にしたんだよ」

レオンがそう付け加えると、マリナさんは感心したように私を見た。



「リナ、本当にすごいねぇ。伝説の貝を癒すなんて…」

「えへへ、まぁね!」

私が照れ笑いを浮かべると、レオンは呆れたように私を見た。



「お前、調子に乗るなよ」

「いいじゃない、別に! 私、頑張ったんだから!」

私がそう言い返すと、マリナさんはくすくすと笑いながら、お茶を淹れてくれた。


「さぁ、さぁ、お茶でも飲んで、落ち着きなさい。リナの話は本当に面白いから、ついつい聞き入っちゃうねぇ」


マリナさんの言葉に、私は嬉しくなって、レオンと顔を見合わせて笑った。


お茶を飲みながら、私たちはさらに話に花を咲かせた。

人魚たちの歌声、舞踏会の煌びやかな光景、レオンに助けられた時のこと…。



話は尽きることなく、時間はあっという間に過ぎていった。


「今回の冒険、本当に忘れられない思い出になったわ」

私がそう呟くと、レオンも静かに頷いた。

「…まぁ、そうだな」


レオンの言葉に、私は嬉しくなって、レオンの顔を見た。

レオンは、顔を背ける。

わかりやすいやつなんだから。


「ねぇ、レオン。今度来る時は、あの人魚さんたちに、お礼を言いに行こうよ。子守唄貝がもっと元気になったか、見てみたいし…」


私がそう提案すると、レオンは少し考えてから、頷いた。

「…そうだな。お前がそこまで言うなら、また付き合ってやるよ」

「やったー! ありがとう、レオン!」


私がそう言ってレオンに抱きつくと、レオンは少し戸惑いながらも、私を優しく抱き返してくれた。


潮騒亭の窓から見える山々は、夕日に照らされて、赤く染まっていた。


遠くから聞こえる波の音が、私たちの港町での冒険の終わりを告げているようだった。



これにて書き溜めがなくなりましたので、不定期更新です…!週三位を目安に更新していくつもりです。

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― 新着の感想 ―
波鳴草、ワカメみたいな感じなのかしら。 まるで生き物みたいに鳴くのに食べたら美味しいなんて! プランター菜園みたいに水槽で育てたら楽しいかな?って考えたけれど、愛着がわいて食べられなくなってしまうかも…
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