レオンの強さ、リナの強さ
夢中で踊るうちに、海辺に近づきすぎ、足元の砂がザラザラと崩れた。
「うわっあっ?!!」
そう叫んだ瞬間、冷たい海に落ちる。
肺が凍りつくような冷たさで、足は海底を掴めない。
「っはぁ、うぅ、 レオン、たすけ、」
「ったく。手間がかかるやつだなあ……っ!」
彼はすぐに海へ飛び込んだ。
鍛えられた腕が私をしっかりと抱き上げ、あっという間に岸へと引き上げた。
「ごほっ…ありがとう、レオン…」
ぜぇぜぇと息を整える私を、彼は呆れた顔で濡れた髪をかき上げながら見下ろした。
「薬は作れても、泳げねぇのかよ。大人しくしてろ」
乾いた涙の跡が残る金色の瞳には温かい光が宿り、その歌声は私たちを励ますように力強く響いた。
〜♪
恐れず進め 星の子よ
仲間と共に 道は開ける
子守唄貝も 汝らを見守り
絆の力で 夢は続く
〜♪
全部意味はわからなかったけど、私たちを励ます歌のようだ。
「人魚さん、ありがとう。レオンがいてくれるから、怖くなかったよ」
「お前が無茶しなければ、俺だってこんな濡れねずみにならなかったんだぞ」
と言いながら、私の頭を軽くポンと叩いた。
でも、その瞳は優しい。
「…昔の汚名は返上できたんじゃない?今日の踊りと、助けてくれたところ、すごく英雄みたいだったよ!」
憎まれ口を叩くけどその実、私はレオンを褒めたかっただけだ。
それは彼に伝わったようで、照れ隠しにそっぽを向いたけれど、口角が上がっているのが見えた。
「お前が言うと、どうも胡散臭いんだよな!」
「もう、誰もレオンを馬鹿になんかしないよ」
レオンはまたも私を小突いたが、耳は真っ赤だった。
〜♪
リナ、レオン
舞踏の夜を 忘れぬ
子守唄貝と共に
新たな絆を 刻みゆく
星と海が 汝らを祝福す
〜♪
人魚の別れを告げる歌が終わると、人魚と子守唄貝は静かに水面へと沈み、波がその姿を優しく隠した。
「人魚さん、子守唄貝さん、元気でね。また会おうね!」
私は精一杯手を振った。
「このことをマリナに話したら、踊っていた俺まで笑い者になるだろうな」
「ううん、マリナさんならきっと『英雄の舞踏』だって褒めてくれるわ!私も自慢しちゃうんだから!」
「……まったく、お前には敵わないな」
濡れた服のまま、二人は温かい日差しを浴びながら砂浜に座り、舞踏会の優しい余韻に浸っていた。




