爆発キノコのグリル
「あ、そうだ。リナ、ちょっと来てくれ」
レオンがそう言って、私をテントから少し離れた場所に連れて行った。
「どうしたの? レオン」
私が不思議そうな顔で聞くと、レオンはリュックから小さな包みを取り出した。
「ちょっと、これを試してみないか?」
「何これ?」
私が包みの中身を覗き込むと、レオンは説明した。
「爆発キノコだ。森で見つけたんだが、村長によれば食べれるらしい。教えてもらった。」
「ええっ? 爆発キノコって、爆発するの?大丈夫?」
私が驚いて聞き返すと、レオンは私を安心させるように言った。
「ああ、そうだ。つっても、ケガするほどじゃないとよ。」
「へえ、面白そう! やってみよう!」
私が目を輝かせると、レオンは頷いた。
「とりあえず、焚き火で焼いてみよう」
私たちは、爆発キノコを焚き火に近づけた。
次の瞬間、パチパチという音と共に、キノコが小さく爆発した。
「きゃあ!」
私は思わず叫んだ。レオンも少し驚いた顔をしている。
しかし、爆発したキノコからは、何とも言えない香ばしい匂いが漂ってくる。キノコの表面は花のように開いて、こんがりと焼け美味しそうな色になっていた。
「わあ、美味しそう!」
私が目を輝かせると、レオンも期待を込めて言った。
「ああ、これは絶対うまいぞ」
焼けた爆発キノコを二人で分け合い、口に運ぶ。
「……! うまい!」
私が思わず叫ぶと、レオンも目を丸くして言った。
「本当だ! 香ばしくて美味しい!」
爆発キノコは、外はカリカリ、中はホクホクで、香ばしい風味が口の中に広がる。わずかに塩味がついていて噛めば噛むほど旨味も広がってきた。パチパチと爆ぜる食感も楽しく、私たちは夢中になって食べた。
「これ、本当に美味しいね! もっと食べたい!」
私が笑顔で言うと、レオンは頷いた。
「ああ、もっと焼いてこよう」
レオンは、そう言って、森に爆発キノコを探しに行った。
森の中には、たくさんの爆発キノコが生えていたようだ。レオンは、美味しそうなものを選んで、たくさん摘んで帰ってきた。
「爆発キノコ、たくさん持ってきたぞ!」
レオンがテントに戻るまで、私は焚き火のそばで、パチパチと爆ぜるキノコで遊んでいた。
「おかえりー! レオン、見て! 面白いよ!」
私が笑顔で言うと、レオンも笑った。
私の膝には焼いて開いたキノコをブーケのようにして置いている。さりげないおしゃれというやつだ。
「ああ、本当に面白いな」
レオンはキノコでなく私を見てにやりと笑う。
ちょっと腹が立ったので小突いておいた。
キノコを焚き火に投げ込むと、それはまるで小さな花火のように色んな様子で爆ぜる。2人でその様子を見て、子供のように目を輝かせた。
「やべぇ、楽しいな!」
レオンは、そう言って、キノコを一つ手に取った。
しかし、そのキノコは、レオンが手に取った瞬間に爆発した。
「うわっ!」
レオンは、顔を煤だらけにして叫んだ。私は、その様子を見て、大笑いした。
「ふふっ、レオンったら、子供みたい!」
私が笑いながら言うと、レオンは悔しそうな顔をした。
「笑うなよ! これは事故だ!」
そのうち、お腹いっぱいになったレオンは爆発キノコを的に向かって投げる遊びを始めた。衝撃でも弾けることを発見したらしく、保存するために火を入れるついでの事だ。
「リナ、しかと見ろ、 俺の爆発キノコ投擲!」
レオンは、何かの技のように叫んで、キノコを投げた。
キノコは、見事に的に命中し、爆発した。しかし、その爆風で、的にしていた木の枝が吹き飛び、レオンの顔に当たった。
「いってぇー!」
レオンは、顔を抑えて叫んだ。
私は、また大笑い。
「ふふっ、レオン、どんくさい!」
私が笑いながら言うと、レオンは悔しそうな顔をした。
「うるさい! 俺の鈍くささは筋金入りなんだ!」
次にレオンは、爆発キノコを高く放り投げて、落ちてくるまでに口でキャッチしようと試みた。
「リナ、見てろ! これぞ至高の技だ!」
レオンはそう言って、キノコを空高く放り投げた。しかし、キノコはレオンの予想よりも早く爆発し、爆風でレオンの髪が逆立った。
「あちちち!」
レオンは髪を撫でつけながら叫んだ。
私は、またもや大笑い。
「ふふっ、あはは!レオン、髪が爆発してる!」
私が笑いながら言うと、レオンがおどけて答える。
「これが最新ヘアスタイルだぜ!」
私たちは、その後も、爆発キノコで遊び続けた。
キノコが爆発するたびに、笑い声が夜空に響き渡る。
そうして疲れて私たちはそれぞれの寝袋に入った。
焚き火の炎が、私たちの顔を優しく照らし出す。
そうして私たちは、星空の下で、港町への期待と今日の笑顔の約束を胸に、静かに眠りについた。