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痛み止め

レオンが村の青年たちに剣術指南をしている間、私は野営地で一人、作業に取り掛かっていた。

「さて、と。まずは、こいつらから片付けちゃおうかな」

私は、カバンの中から大量のゴブリンの睾丸を取り出した。

「こんなのレオンに見せたら、どんな顔するかな？ふふっ、絶対見せらんない！」

私は、イタズラな笑みを浮かべながら、大量のゴブリンの睾丸をエリクサーの材料にするための保存加工を始めた。

古書の魔法陣に手をかざし、工房を出す。カチャリと音を立てて完成した工房は、もうすっかり元の様相に戻っていた。　

「さて、と。始めますか」

私は、大量の睾丸を魔法の小鍋に入れ、魔力を注ぎながら煮詰めていく。

小鍋の中では、大量の睾丸がぶよぶよと音を立てながら煮え、溶けて消えていく。

その度に、小鍋の底から黄金色の魔力の泡が沸き上がり、工房内の匂いが香ばしく広がっていく。

睾丸が完全に溶けきると、小鍋の中は黄金色の液体で満たされ、小さな太陽が輝いていた。

「ふふっ、いい感じ。あとは、これを絞って、魔力をさらに凝縮させれば…」

私は、煮詰めた睾丸を蒸留器にかけ、エキスを抽出していく。

蒸留器の中では、黄金色の液体がゆっくりと蒸気へと変わり、透明な管を通って別の小瓶へと流れ込んでいく。

その光景を見るのが私は大好きでうっとりしてしまう。

抽出されたエキスは、濃厚な魔力を帯び、小瓶の中でキラキラと笑っている。

「よし、これでエリクサーのための下処理は完璧ね」

私は、完成したエキスを魔法の小瓶に詰めながら、そう呟いた。

「そんでこれよね。」

私は、カバンの中から大量の百葉の薬草を取り出した。

村人たちの毒は、私の作った浄化薬でほとんど治った。

でも、怪我をしている人はまだまだたくさんいる。

中には、来る前から放置していた怪我が悪化して、熱を出している人もいる。

「みんな、早く楽にしてあげなくちゃ」

私は、マルクからもらった百葉の薬草を使い、痛み止めを作ることにした。

百葉の薬草は、エルフの里を発つときにマルクが大量に持たせてくれたものだ。

痛み止めや解熱作用がある。

「まずは、薬草を細かく刻んで…と。次に、乳鉢で丁寧にすり潰して…」

私は、薬草を乳鉢に入れ、魔力を込めながら丁寧にすり潰していく。

乳鉢の中では、薬草が粉末へと変化している。

その粉末は、まるで万華鏡のように、クルクルと色を変えながら輝きを放つ。

最初は鮮やかな緑色だった粉末が、次に淡い青色に、そして瞬く間にクリーム色へと変化していく。

その変化は、まるで薬草が秘めた力を解放していくかのようだった。

薬草の香りは、湿っぽく、そしてどこか懐かしい雨の香りを漂わせ、工房の中を満たしていった。

時折、粉末が小さな光の粒となり、乳鉢の縁から溢れ出し、工房の空気を浄化していく。

「よし、あとは、これを魔法の水で溶かして…」

私は、すり潰した薬草を魔法の水で溶かし固め、痛み止めを完成させた。

完成した痛み止めは、つやつやしたクリーム色でとても薬とは思えない美味しそうなお菓子のようだ。

「はい、できた！みんな、飲んでね！」

私は、完成した痛み止めを村人たちに配り始めた。

「リナ様、ありがとうございます！まるで魔法みたいです！」

薬を飲んだ村人たちは、痛みが和らいだことに驚き、目を輝かせながら私に感謝の言葉を述べてくれた。

「これで、少しは楽になるはずだよ。ゆっくり休んでね」

私は、村人たちに優しく声をかけ、薬の使い方や注意点を説明した。

「日差しの当たらない、なるべく地面の近い湿った場所で保管して。雨水と一緒に飲むと、どんな痛みでも忘れられるよ」

村人たちは、私の言葉を真剣に聞きながら、薬を受け取っていく。

「ありがとうございます、リナ様。本当に助かります」

「こんなにすぐに薬を作ってくれるなんて、まるで魔法使いみたいです」

魔法使いなんだけどね。

そう思うが口にしないことにした。

まさしく魔法の現象がこれから見れるんだから。

そうして村人たちは薬を手に取ると、口に運ぶ。

「…！これは…！なんだか、母さんのスープみたいな、どこか懐かしい味がする…」

村人は、驚きの表情を浮かべながら、薬の味を確かめている。

「…！あれ…？涙が…？」

次の瞬間、村人の目から、ポロポロと涙がこぼれ落ちた。

しかし、それは悲しみの涙ではなく、薬効によるものだ。

この薬は痛みの苦しみを涙として排出してくれる。

「…！痛みが…！嘘みたいに消えていく…！」

涙が止まると同時に、村人は痛みが消えていることに気づき、驚きの表情を浮かべながら自分の体を確認している。

「本当にすごい…！まるで、体が軽くなったみたいだ…！」

別の村人も、薬の効果に感動しているようだ。

「ありがとう、リナ様。これで、ゆっくり休めます」

村人たちは、安堵の表情を浮かべながら、私に感謝の言葉を述べてくれた。

「人の役に立てるって、本当に気持ちいい」

村人たちの笑顔を見て、私は心の底からそう思った。

「よし、残りの薬草も加工しよう。また今回みたいなことがあるといけないもの。」

私は、野営地に戻り、様々な薬の材料の調合を始めた。

「レオン、びっくりするだろうなぁ。あんまり可哀想だから見せないけど。反応見たかったな〜！」

私は、ひとりでクスクス笑いながら、工房を撫でた。