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村の笑顔

レオン視点です

蜘蛛を倒した後、村人たちが俺たちに駆け寄ってきた。


「レオン様!リナ様!本当にありがとうございます!」

特に、毒の治療を受けた村人たちは、涙ながらに感謝の言葉を述べている。


「あなたたちのおかげで、私たちは助かりました。もう、あの苦しみを味わうことはないと思うと、本当に嬉しいです」

「リナ様の薬は、本当にすごかった!あんなに苦しかった毒が、嘘みたいに消えていったんだ!」


村人たちの感謝の言葉を聞いていると、俺も自然と笑みがこぼれる。

リナの方を見ると、少し疲れた様子で、「少し休む」と言い、野営地に戻っていった。




リナが心配だが、今はボロボロの村人たちへの対応を優先すべきだろう。



「なあ、お兄ちゃん!さっきの剣、もう一度見せて!」

子供たちが俺の周りに集まってきて、目をキラキラさせている。

「ああ、いいぞ。刃物だから気をつけろよ。」


俺はカタカタ鳴る、柄だけ高そうな剣を鞘から抜き、子供たちに見せてやる。

子供たちは目を輝かせ、剣に見入っていた。


「かっこいい!歴戦の剣って感じだなあ!俺もこんな剣が使えるようになりたい!」

「ハハ、ボロいだけだ。お前ならきっと、強くなれるさ」


子供たちの純粋な笑顔を見ていると、昔の自分ーー孤児院での日々を思い出す。

あの頃は、こんな風に笑っていられたんだよな。



「お兄ちゃん、俺たちと模擬戦してよ!」

子供たちが俺にせがんだ。


「そうだな、少しだけなら付き合ってやるか」


俺は子供たちと簡単な模擬戦を始めた。

子供たちは目を輝かせ、俺の動きに見入っている。

なんだか、全身が赤くなるリナの薬をもらってから更にキレが良くなっているように感じた。


「すごい!お兄ちゃん、本当に強いんだね!」


そんな子供たちと剣で遊んでいると、どんどん記憶が蘇り昔のことが頭を埋め尽くす。

俺もあんな風に、目をキラキラさせて英雄に憧れていたんだ。


「お兄ちゃん、俺、大きくなったらお兄ちゃんみたいに強い剣士になるんだ!」

子供の一人が、目を輝かせてそう言った。


「お前ならきっと強くなれる。」

「でもなあ、ただ強いだけじゃダメだ。人を守れる、優しい剣士じゃないと。」


俺は子供の頭を撫でながら、そう言った。

子供たちの笑顔を見ていると、自然と笑みがこぼれる。

こいつらが大きくなった時、この村はどうなっているんだろうか。


「なあ、お前たち。もし何か困ったことがあったら、いつでも俺たちを頼ってくれよな」

俺は子供たちにそう声をかけた。

「うん!ありがとう、お兄ちゃん!」


子供たちは元気よく返事をした。

こいつらが大きくなった時、この村が平和で、笑顔溢れる場所であってほしい。

そのためにも、俺はできることをしてやりたい。


「レオンさん、少し村の青年たちにも剣術指南をお願いできませんか?」

子供たちとの触れ合いを見ていた村長が俺に声をかけてきた。


「ああ、分かった」

俺は村の青年たちに剣術の基本を教え始めた。

最初は戸惑っていた青年たちも、俺の熱心な指導に感化され、真剣に剣を振るう。


「レオンさんの指導は、本当に分かりやすいです!まるで、長年剣を扱ってきたみたいだ!」

「そりゃそうだ、バカなこと言ってないでさっさと素振りしろ」

お調子者の村人の頭をどつくと周りの男達も笑った。


剣術指南を通して、俺は村人たちと深い信頼関係を築き、彼らの生活や悩みについて知ることができた。


「レオンさん、私たちの村には防衛設備がほとんどないんです。もし、またモンスターが襲ってきたら…」


村人の一人が不安そうに呟いた。

「そうだな、村の周りに柵を作り、見張り台を設置しよう。俺も一緒に考えてやるよ」

俺は村人たちと共に、防衛設備の建設案に取り掛かった。

村の周りに頑丈な柵を立て、見張り台を数か所見繕う。村人たちは協力し、結束を強めていく。



村の周りに頑丈な柵を立て、見張り台を数か所見繕う。村人たちと俺は協力し、結束を強めていく。


「レオンさん、ありがとうございます!これなら、少しは安心できます!」

村人たちが俺に感謝の言葉を述べる。


「見張り台だけで満足すんなよ。お前たち自身が強くならねぇと意味ねえからな」

「まあ、俺の自己満さ」

そう言って、警告をする。

が、これは俺の照れ隠しのようなものだった。

 

リナと出会い、色々な人と出会って、俺は変わった。過去を見つめ直せた。

大切なのは、共に生きる人たちの笑顔を守ることだ。


俺は善人だから、英雄になれたんじゃない。

ただ、目の前の困っている人を見過ごせないだけだ。


そして、彼らが笑顔でいられるように、できることをしたいだけだ。

もう英雄と呼ぶ人はエルフくらいしかいない。

それでも俺はきっと人を助けることをやめないだろう。



その時、リナが野営地から戻ってきた。

「レオン、終わった?そろそろ出発しよう?」

「いや、まだだ。旅の装備を村の鍛冶師に見てもらわなきゃいけない、忘れたか?」

俺はリナにそう告げる。


「そうだった!私もレオンも靴の底、ボロボロだもんね。うわ。レオン戦ったからもう底無いじゃん……。」

そういいながら手持ちの軟膏を取り出し差し出してくれた。こいつの薬は有り得ねぇ位効くからありがたい。


「早く言いなよね!もう。まったく、レオンはいつもそうなのよ。自分のことは後回しで。もう少し、自分のことにも気を遣ってよね。ほら、手当てしたら早く鍛冶師さんのところへ行くわよ。靴も自分も、手当て、手当て!」


リナはそう言いながら、俺の手を引こうとする。

「ああ、分かった。でも、大した傷じゃないから、心配するな」


「心配するなってもう…!そんな訳には、いかないじゃない…!」

俺は少し興奮気味なリナを抑え、村の鍛冶師の元へと向かう。行く途中、気になっていたことを聞いてみた。


「リナ、少し聞きたいことがあるんだが…」

「なあに?」

「お前、やたら元気だけど、野営地で何をしていたんだ?」

「ふふ、秘密だよ」

リナはいたずらっぽく笑い、それ以上は何も教えてくれなかった。


「そうか…」

俺はリナの行動に疑問を感じつつも、それ以上は追求しないことにした。

リナは何かを隠しているようだが、きっと何か理由があるのだろう。


俺たちは鍛冶師の避難している場所までゆっくりと歩みを進めた。



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