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鼻歌大会

ギャグ色の強い話です。

読まなくても話は繋がります。

酔冷ましで里の若者たちを救った翌朝、私とレオンはコテージでのんびりしていた。

「ふぅ、昨日は忙しかったけど、みんなの笑顔見れて良かったね」

私は星実のスープをスプーンで掬い、ニコニコと笑った。

レオンは椅子に座り、眠そうな目を擦りながら「まあ、お前が鼻毛で笑いを取ったのが一番の収穫だったな」とからかう。




そこへ、マルクが商売用の革鞄をガチャガチャ鳴らし、勢いよく飛び込んできた。

「おはようさん!昨日は酔冷まし大成功やったな!せやけど、今日も頼みごとあってな!」

「また何かあったの?」

私はスプーンを置き、身を乗り出す。

「リナの薬なら大丈夫だろ?昨日ので鼻毛生やした若者、まだ笑いものになってるぞ」

レオンが呆れたように言った。

「じゃあ、一体何があったの?」



「安心せいて魔女はん、今回は薬ちゃうで!実はな、里のエルフたちが鼻毛にハマってしもてな。鼻毛伸びるのが面白すぎるって、鼻毛の歌、題して鼻歌まで作り始めてるんや!」

マルクがゲラゲラ笑いながら、情報を教えてくれた。



「歌!?鼻毛の!?えっ?!?えぇ……」


ゴブリンの鼻毛がこんな騒ぎになるとは、予想外だ。

レオンと私は、思わず笑い転げた。

しばらく笑い続け、ようやく落ち着きを取り戻した私たちを連れ、マルクは星空広場へと向かった。


朝だというのに、エルフたちはテントの周りで大騒ぎしている。

目をやると、若者たちが昨日使った酔冷ましの残りをスプーンで舐め、「うっ、スース―する!」「ほら、また鼻毛伸びたで!」と騒いでいた。

鼻から緑のモジャモジャがニョキニョキと生え、煙になって消えるたびに笑い声が上がる。


「おい、リナ、お前の薬、ただの酔冷ましじゃなくて、おもちゃになってるぞ」

レオンが呆れた顔で言う。

だが、その口元は笑いをこらえ、ピクピクと震えていた。


「私の薬は、飲みすぎたって健康になるだけだからいいけど、ちょっとおかしいよね」

私も笑いすぎてお腹が痛くなりそうで、必死に笑いをこらえながら答えた。


「見てみぃ。あそこや!」

マルクが指差す窓の先では、エルフのおっちゃんが鼻毛が伸びるのを見計らい、「♪鼻毛が伸びてスース―や〜、ゴブリンの力で気分爽快や〜♪」と歌っていた。ドスの効いた低い声の鼻歌に、隣のエルフが「兄ちゃん、音痴すぎやろ!」とツッコミを入れ、爆笑が起こる。


「これが……はな…鼻歌っ…ハハハ!もうダメ!ハハハハ!」

私はついに笑い出した。レオンも隣で口を押さえ、肩を震わせている。


「里で鼻毛ブームや!でな、ワイの頼みごとはこれや。鼻歌コンテスト開くから、リナはんに審査員頼みたいんや!」

マルクがニッコリと笑う。

「プクク…フー、フー、」

私は息を整えながら答える。


「審査員?私、鼻毛歌の審査なんて初めて、フフフ、でも、楽しそうだからやるよ!」

拳を握り、私はやる気を見せた。

「鼻毛の歌審査すんのか……お前は一体何処へ行くんだ……フフハハ!」

レオンは背中を震わせ、笑いながら答えた。




広場に即席のステージが作られ、エルフたちが「鼻毛の歌、鼻歌コンテストや!」と集まってきた。



「ルールは簡単や!薬で生えてきた鼻毛でインスピレーション得て、即興で鼻歌作るんや!優勝者には星実のゼリー一週間分やで!」


「うおおおおおおお!」

と歓声が上がった。

鼻歌コンテスト、爆笑の幕開けだ。私とレオンは審査員席(ただの木の椅子)に座り、マルクが司会を務め、コンテストが始まった。

最初の出場者は、ぷりんぷりんのエルフの女の子。「あたい、昨日酔冷まし飲んで鼻毛伸びたから、歌うで!」と宣言し、酔冷ましの残りをペロッと舐めた。鼻毛がニョキニョキと生え、煙がプシューッと出ると、


♪鼻毛伸びてワンツースー、頭スッキリ朝までスー♪


可愛い声で歌った。最後はウインクで締めくくり、ポーズを決める。


「可愛い鼻歌だね!初手から点数高くつけちゃう!」

私は拍手喝采を送る。もう、これは真剣勝負だ。

「お前、歌より可愛さで点数上げてねぇか?」

レオンが笑いをこらえ、プルプルしながら突っ込んでくるが、気にしないことにする。

審査は常に公平でなければ。



「つづいて次の方!」

マルクが進行する。

次は筋肉ムキムキのエルフの兄ちゃん。「ワイは力強くいくで!」と酔冷ましをガブ飲みした。鼻毛がワサワサと生え、煙がボワッと噴き出すと、


♪鼻毛パワー!鼻毛魂で男前、ヤーー!!!♪


大声で歌う。

歌い終わりには腕を曲げ、筋肉アピールも忘れない。

「勢いすごいね!筋肉も!」

私は筋肉に見惚れながら、点数を考える。

「こいつ、鼻毛より筋肉見せたいだけだろ…まあ、悪くねぇ」

レオンもようやく見慣れてきたのか、真剣に批評し始めた。



三人目は、おばあちゃんエルフ。

「わしも負けへんで!」と酔冷ましをちびっと舐める。鼻毛が一本だけチロッと生え、煙がフワッと出ると、

♪鼻毛一本、スース―スー、まだまだいける鼻毛道〜♪


とゆったり歌う。最後は杖で地面をカツンと叩いてフィニッシュ。


「渋いね!一本でも味がある」

私は感心のため息が出た。

レオンは「年寄りも鼻毛好きなのかよ…」と若干引き気味ではあるが、顔はしっかりと笑っていた。



最後は、マルクが「ワイも参加するで!」と飛び入り参加した。

酔冷ましを舐め、鼻毛がニョキニョキと生えると、


♪鼻毛伸びて商売繁盛!金運、幸運、鼻毛運!♪


と歌いながら革鞄を振る。

煙が消えると、鞄から星実のゼリーを落とし、「あっ!」と慌てた。


「マルク、賞品!!拾って、拾って!!」

私は腹を抱えて笑った。


「お前、歌よりドジが目立ってるぞ、マルク」

レオンも爆笑している。

意外な出場者に、レオンはツボを突かれたらしく、最終的には笑いすぎて瀕死状態になっていた。



審査タイム。

「みんな面白かったよ!一位は…おばあちゃん!一本の渋さが最高だった!」


「うおおおぉおおお!」

「ほぉ、わしが一位か!ゼリー、孫にあげるわ!」と、おばあちゃんはいそいそと賞品を持って帰っていった。  


「ええ審査やったで魔女はん!そうや!もう一回やろか?」


「鼻毛でどこまで遊ぶ気だよ……勘弁してくれ……」

レオンは笑いすぎて疲れたようで、肩で息をしていた。

レオンの苦言も虚しく、二回目が始まる。


エルフたちは「鼻毛ダンス作ったで!」と踊り出した。酔冷ましを舐めて鼻毛を伸ばし、煙が出るタイミングで腰を振り、「スース―!」と叫ぶ。


しまいには、鼻毛が伸びたままキスしようとした若者が、女の子に「サイテー!」とビンタされ、「鼻毛キスはあかんかったか…!」と倒れた。


「鼻毛キスって…プククク…!なんでそんな発想が出てくるの…?フフフフ」


「鼻毛ブームはまだまだ止まらんで!商売のネタが増えたわ!」


マルクがニヤニヤと笑い、エルフたちも楽しそうだ。


コンテストが終わると、エルフたちが詰め寄ってきた。

「リナはん、もっと酔冷まし作ってくれ!」


「ええ!?もう鼻毛使い切っちゃったよ!」

私は大慌て。

「ワイの鞄に予備あるで!」

とマルクはゴブリンの鼻毛束を取り出した。

 

「お前、マルク、鼻毛ストックしてたのかよ!?」

レオンが呆れ顔で言う。

「当たり前や、商売人やからな!リナはん、頼むで!」


「仕方ないね、作るよ!」

私はノリノリで工房を出し、マルクが持っていた鼻毛とオールフラワーの根っこで酔冷ましを量産する。


「鼻毛多めにしちゃえ!」と調子に乗ったら、広場が鼻毛だらけになった。

煙がモクモクと立ち込め、「スース―!」という叫び声が響き合い、カオス状態に。



「リナ、お前、鼻毛で里を壊す気か!?」

レオンが悲鳴を上げるが、「そやそや、鼻毛で団結や!」とエルフたちは鼻毛ダンスを踊り、みんなで「スース―!」と叫んでいつの間にか来ていた夜が更けていった。



スーをさしあげます!

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