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星空広場

注意⚠虹色のゲロが出てきます

星実のフルコースでお腹がパンパンになった翌日、私とレオンはコテージでぐったりしていた。

そこへ、マルクがひょっこり顔を出してきた。


「お二人さん、元気そうやな!実家で親父とお袋に会ってきたけど、やっぱお二人さんが恋しくて戻ってきたで!」

「マルク!おかえり〜!寂しかったよ!」

私は飛びついてマルクの腕を掴んだ。

「落ち着けよ。マルク、戻ってきてくれてうれしいぜ。全然元気じゃないけどな」

レオンが眠そうな目を擦りながら笑った。


「ハハハ!言い返す元気がありますやん!さて、今夜は祭の間の特別な場所、星空広場に案内するで!」

マルクが手を広げて私たちを誘う。



日が暮れ始め、星空広場はさらに賑わいを増していた。

マルクに連れられて、光る樹の家々を抜けて星空広場に着くと、色とりどりのテントが草原に広がっていて、ふっくらとしたエルフたちがワイワイしている。


「わあ!テントがいっぱい!可愛いね!」

私は大興奮。

「おい、マルク、このテント…人のもん勝手に入ったらどうなるんだ?防犯とか大丈夫なのか?」

レオンが少し警戒した顔で聞く。


「レオン様、鋭いな。実はな、人のテントに勝手に入ると、里の魔法の力で身ぐるみ全部剥がされるんや。持ち物も服も、全部やで。昔からのルールやねん。せやから、家が眩しすぎて寝れんエルフは、みんな自分のテントで寝るんや」

マルクが少し神妙な顔で説明する。


「剥がされるって怖いね。誰か入ってるとこ見てみたい……。じゃなくて、危ないね!」

私は驚きながらもちょっと興味津々だ。

「お前、見たいとか言うな。絶対入るなよ。俺が監視してやるからな」

レオンが真剣な顔で私を睨む。


「入るわけないじゃん!」

私は慌てて手を振る。

でも、どんな仕組みで剥がされるんだろうと好奇心がチラッと湧いた。



星空広場は、エルフたちの生活が丸見えで面白い。

テントの周りでいろんなことが繰り広げられていて、私とレオンはマルクに案内されながら見物する。



まず目に入ったのは、星見の酒を飲んでいるエルフたち。

星見の酒とは、星実の果汁を発酵させた、甘くて少し酸味のあるお酒のことだ。


ピンク色に光るお酒をグビグビ飲んでいると、突然一人が「うっぷ…!」って口を押さえて、虹色のゲロを吐いた!


赤、青、黄色、緑が混ざったキラキラしたゲロが地面に飛び散って、近くにいたエルフが「うわっ!汚いな!離れろや!」って笑いながら逃げる。

「エルフの里ってゲロも独特なんだね……」

私は引き気味だ。

「星見の酒ってそんな効果あんのか…俺、絶対飲まねぇ」

レオンも引き気味だ。


「酒精強すぎるとこうなるんや。祭りの名物やで!」

マルクが笑う。



次に、テントのそばで寄り添い合うエルフの夫婦を見つけた。ふっくらとした二人が手をつないで、星空を見上げながら「やっぱり里の星は綺麗やなぁ」「そやなぁ、今年も一緒に見れて幸せやで」と穏やかに話している。


「うわぁ、ロマンチックだあ……」

顔を重ね始めた二人に私は顔を赤くなるのを感じた。

「おい、あんま見るもんじゃねぇぞ」

「せやね、わてかて当てられてしまいますわ!」

そう言いながら二人に手を引かれ、移動した。



少し離れたところで、不思議な貝の楽器を吹いているエルフがいた。

貝の表面に星の模様が彫られていて、吹くと「ホォ〜ン…」ってゆったりした音が響く。

風に揺れる草と混ざって、眠くなるようなメロディー。

「この音、気持ちいいね…ずっと聞いていたい」

「あんまり聞くと眠っちまいそうだな」

レオンがリラックスした声で言う。たぶん、褒めているのだろう。



別のテントでは、エルフのおばちゃんが星涙花の花びらで髪飾りを作っていて、若い女の子に「これ、付けてみぃ。綺麗になるで」と渡していた。

女の子が「ほんまに!?ありがとう!」って喜んで付けて、くるくる回る。

「おばちゃんの技術すごい。花びらがイキイキしてる」

「エルフって器用だな…お前も作ってもらえよ、リナ」



「私もそう思ってた!でも、おばちゃんに教わって一緒に作りたいな」

「リナはん、ええなぁ。ワイも見とくで!」

マルクも勧めてくれ、おばちゃんに頼む。

おばちゃんもニコッと笑って、快く教えてくれることになった。



「星実の花びらはな、優しく扱わんと光が消えるさかい、気ぃつけなあかんよ」

と言う。私はおばちゃんの隣に座って、真剣に聞く。

おばちゃんが花びらを一枚手に持って、「まず、これを草の紐にそっと巻き付けるんや。きつく締めすぎたらアカン、ふわっとやで」と実演してくれた。


「ふわっと…ね、なるほど!」

と頷いて、光る花びらを手に取る。

「うわっ、ちっちゃくて潰しそう」

私は花びらを指でつまんで、草の紐に巻き付けるけど、ちょっと力が入っちゃって光がチラッと弱まる。

「優しく、優しく……」


と慌てて調整。おばちゃんが「そんな慌てんでもええ。次は二枚目を重ねて、紐で軽く結ぶんや」と手元をサポートしてくれた。私は二枚目をそっと重ねて、紐を結ぶ。そうして何回か失敗しながら、ようやく小さな髪飾りが完成した。青白く光る花びらが三枚重なって、キラキラ光っている。


「できた!おばちゃん、ありがとう!これ、私に似合うかな?」

私は髪に付けてみる。

「ようお似合いでっせ!やっぱり別嬪さんがつけると違うなあ」

おばちゃんも褒めてくれた。



「おお、リナはん、ええやん!可愛いやないか!」

「意外と器用なんだな」

マルクは褒めてくれたけど、レオンは気恥ずかしいようでからかいの言葉が出てきた。

「意外とって何?薬師は器用なんだよ」

私は笑いながら髪飾りを揺らす。

おばちゃんが「旅の思い出に持って帰りぃな」と言ってくれたので「大事にします!」とお礼を言い、私たちはその場を離れた。



また別の場所では、エルフの男が星実の木の枝で小さな弓を作っていた。星実の木の枝は、軽くて弾力があり、弓作りに適しているのだ。男が試しに矢を放つと「シュッ!」って音がして、遠くの的に当たる。

「おお、的に当たったで!」


レオンが目を細めて、興味津々で近づく。

「おい、あの弓…よくできてるな。どうやって作るんだ?」

「興味あるの?せっかくだもん、やってみたら?」

「そや、レオン様、弓も好きなんやな。あの兄ちゃん、腕ええで。聞いてみたらええ!」

と言い、せっつくと少し恥ずかしそうに頭を掻いて頷いた。

レオン近づいて男に聞く。


「なあ、その弓、どうやって作るんだ?」

「ほぉ、興味あるんか?星実の枝は軽くて弾力あるからな、まず細く削って、こうやって曲げるんや」

と説明しながら枝を手に持つ。

「削って曲げる…簡単そうに見えて難しそうだな」

レオンは真剣な眼差しだ。


「せや、力加減が大事や。試してみるか?」

と男は作成してもいいと、枝を渡してくれたようだ。

レオンが枝を手に持って、ナイフで削り始める。レオンが慎重に枝を削って、曲げてみるけど、ちょっと力が入りすぎて「パキッ!」って音が。


「おい、折れた…難しいな、これ」

レオンが苦笑い。構造は簡単そうでも意外と難しいみたい。

「ハハハ!最初はそんなもんや。もう一回やってみぃ」

と新しい枝を渡す。

レオンが「今度はうまくやる」と再挑戦して、なんとか小さな弓を完成させる。試しに矢を放つと、的にかすった。

「レオン、すごいじゃん!!」

私とマルクは拍手。

「かすっただけだ」

レオンが手をひらひらさせて恥ずかしいのを誤魔化していた。



そうして広場を堪能した私たちは其々のテントに帰ることに。

「さて、ワイは家族のテントに帰るで。親父とお袋が待っとるさかいな。お二人さん、星空広場楽しんでな!あっちの方に建てといたさかい!」

マルクが少し先の方にぽつんとあるテントを指差した。私達がリラックスできるような位置に置いてくれていたのがわかる。


「何から何までありがとう。マルク。またね、家族に会ったらよろしく言っといてよ!」

私は手を振って見送った。

「またな」

レオンも軽く手を上げる。

「また会おな!」

マルクがテントの群れに消えていった。



私とレオンは、テントの間にある小さな丘に腰掛けて、星空を見上げる。どうやら今から空で何ぞあるらしいと周りのエルフが教えてくれたからだ。



しばらく眺めていると、夜空からポツポツと星が降り始めた。青白い光の粒がフワッと落ちてきて、地面に触れるとキラキラ光って消える。星実の木から落ちる実みたいだけど、もっと幻想的で、空全体が動いているようにも見える。


ーーこの景色は宝物みたいだ。


「星ってこんなに落ちるのか、すげぇな」

レオンが呟く。

二人で顔を見合わせると、星の光がレオンの顔を照らしていて、いつもより優しそうに見えた。

栗毛のくせ毛が明かりにちらちら照らされている。気力を回復してもなお常に眠たそうな瞼はすっと上を向く。


「エルフの里って、最高だね」

と、私が言うと「な!」と言ってレオンがニカッと笑った。


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