表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/81

長老の家

マルクが実家に帰ってしまい、私とレオンは少し寂しい気持ちを抱えながら、エルフの里の中心へと向かった。

光る樹の家々がキラキラと輝く中、プリンプリンのエルフたちに囲まれ、なんだか不思議な気分になる。

マルクがいない初めての場面だが、しっかりしないと。


里の広場に着くと、大きな光る樹の下に長老が待っていた。

長老は白い髭をふさふさと蓄え、丸いお腹が服から溢れそうにプリンプリンだ。

エルフなのに、その佇まいは貫禄のあるおじいちゃんで、優しそうな雰囲気を醸し出している。


「ねえ、レオン、私のことを長老に紹介していいよね?」

私はレオンに小声で確認する。


「お前が自分で魔女だって言えばいいだろ。俺はこういう挨拶が苦手なんだよ……」

レオンがボソッと返す。


「長老さん、初めまして。私、リナ、星の魔女です。こっちは剣士のレオン!」

私は笑顔で自己紹介をする。

その挨拶に、長老は目を丸くし、コテコテのエルフ訛りでゆっくりと話し始めた。


「おおお!星の魔女はんやて!?こりゃ驚きやなぁ!わしらエルフは星を信仰しとるさかい、星の魔女はんはまるで神の子や!いやぁ、嬉しいわぁ、ほんまに嬉しいわぁ!」

長老がプリンプリンの手を震わせて喜んでくれるので、私もテンションが上がってしまう。


「そんなに喜んでくれるなんて嬉しいわ」

「長老がそんなに喜ぶなら、お前、もっとドヤ顔してもいいんじゃないか?」

レオンがクスクス笑いながら背中をポンと叩く。


「ドヤ顔なんてしないよ。でも……星の魔女ってすごいんだね」

神の子扱いなんて、少し照れるけれど嬉しい。


「そやそや、リナはん、レオンはん、今日はわしの家でゆっくりしていってや!歓待したるさかい!」


長老がにっこりと笑い、私たちを里の奥へと案内してくれた。


夜になると、里の広場でエルフたちの前夜祭が始まっていた。


光る樹の家々が青白い光を放つ中、プリンプリンのエルフたちが集まってきて、みんなで踊り出す。

私とレオンは木のベンチに座り、目をキラキラと輝かせながらその様子を見ていた。


エルフの踊りは、前に見た魚の踊りとは全く異なるが、どこか共通点があるように感じる。


まず、ムチムチの手を高く上げ、まるで空に星を掴むように優雅に揺らす。

足は軽やかにステップを踏み、プリンプリンのお腹が揺れるたびに笑顔が弾ける。

くるくると回るときは、長い耳がピョコピョコと動き、魚の踊りの波を切る動きに似ているが、もっとゆったりとしている。

そして最後に、両手を広げてフワッと跳ねると、光る髪がキラキラと輝き、まるで星が舞っているようだ。


「わあ……!すごい綺麗!エルフの踊りってこんなに素敵なのね!」

私は感動して手を叩く。


「お前、魚の踊りの時も感動してたよな。情緒大丈夫かよ」

レオンが呆れた顔で言うが、口元は少し笑っている。


「だって全部違っておもしろいわよ。見てて、レオン、この踊り、癒されるから」


私はレオンの肩をつつき、踊りの真似を軽くしてみる。

レオンはその様子を見てまたもクスリと笑った。


「リナはん、この踊りは星実の木に感謝するもんなんよ」

長老が私たちのやり取りを見て頷きながら、笑み、隣で教えてくれる。


すると、踊りに反応するように、里に生えている光る星実がフワッと浮き上がった。

白い光を放つ実が、木の枝からゆっくりと離れ、宙に浮かぶ星屑までもが踊っているように見える。


実が夜空に溶け込むように漂い、そっと地面に落ちてくる。

光る樹の家々がその光に照らされ、里全体が幻想的な輝きに包まれる。

私は息を呑んで、その光景に見入った。


「うわあ……。夢……みたいだわ」

私は立ったまま、恍惚と風景に見とれていた。


「おい、リナ、座れよ。落ちてくる実が頭に当たるぞ」


レオンが笑いながら私を引き戻し、肩を寄せた。



「星実はこの里特有の星の恵みやさかい、食べてみてくだせえ。ごっつ美味いでっせ!」


長老がプリンプリンの手で星実を渡してくれる。

私は落ちてきた星実を受け取る。

丸くて光る実は、手の中でほのかに温かく湿っており、少し柔らかい。


「うーん、どんな味かな?」


私は一口かじってみる。

すると、甘くてジューシーな味が口いっぱいに広がり、スパイシーな香りが鼻をくすぐる。


「!!めっちゃ美味しいわよ!」

私は目を輝かせて叫んだ。

「そんなに美味いのか?」

レオンが興味津々で手を伸ばす。


「ほら、食べてみて」

私はもう一個拾ってレオンに渡した。レオンが一口かじると、少し驚いた顔になる。

「……甘い……けどなんか辛い……?香りがすげえ。結構美味いじゃねぇか」


「星実は里の宝や。たくさん食べて元気になってな!」

長老もにっこりと笑う。


そうして星実が落ちてくるのを食べながら観察し、祭りが一段落した。

長老が、そろそろですね、と言いこちらを見る。


「さあ、夜も更けてきたさかい、今日は我が家に泊まってくださいな」


どうやらおうちに案内してくれるらしい。

私は内心、光る樹の家に泊まるのか、明るすぎて眠れないのではないかとドキドキしていた。


「リナは眠れるか心配そうな顔してるな?」

レオンが私の顔を見てクスクス笑う。

「ごめんなさい、少し気になっただけなので気にしないでください」

私は正直に長老に言った。


「リナはん、心配せんでもええで。こっちや」


長老が笑いながら案内してくれたのは、意外にも普通の木でできたコテージだった。

光る樹ではなく、素朴な木の壁と屋根で、窓から柔らかい明かりが漏れている。


「え、普通の木だ。これなら眠れそう」


「俺はどこでも眠れるからどっちでもよかったけどな」


私はホッとして胸を撫で、レオンは頭のうえで手を組んだ。


「このコテージはお客さん用や。光る樹は慣れんと眠れん人もおるさかいな。ゆっくり休んでくださいね」


長老が優しく言い、コテージの鍵を渡してくれた。




中に入ると、木の香りが漂い、ベッドにはふかふかの毛布が敷いてある。私はベッドに飛び込んだ。


「わあ、気持ちいい〜!すっごく眠れそう」


「おい、リナ、子供みたいにはしゃぐなよ。俺も眠りたいんだから静かにしろ」


レオンが隣のベッドにゴロンと寝転がる。


「レオンだって楽しそうじゃん!」


私は毛布にくるまって目を閉じた。

レオンも布団をかぶったのか布が擦れる音が聞こえる。


「……。実のおかげなのか、すげぇ心地いい気分だな」


レオンがボソッと呟くのが聞こえてきた。

レオンのリラックスした声を久しぶりに聞いた気がする。

久しぶりのベッドは快適すぎて、天にも昇る心地だった。

コテージの中は静かで穏やかだ。


祭りの賑わいが遠くに聞こえる中、私とレオンは泥のように眠りについた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ