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おひるね

マルクの案内で、私たち三人は迷宮の奥深く、草の寝床らしき草原にたどり着いた。

しかし、目の前に広がるのは一面の草原のみ。

木もなければ、石像らしきものも見当たらない。

ただ、草が風に揺れているだけだ。


「うーん、ここが草の寝床なの?」

私は首をかしげ、草原を見回す。

「おい、何もねぇぞ?」

レオンが頭を抱え、ため息をつく。


「レオン、あんたも頭を抱えるしか能がないのね。まあ!私も分からないんだけど!ふふふ」

私も冗談を言いつつ、負けじと頭を抱えた。



「お二人さん、とりあえず『お昼寝』って歌ってるさかい、休憩してみたらどうや?寝てみたら何か分かるかもしれんで!」


「寝る!?それで分かるなら楽でいいけど……本当かしら?」


私は半信半疑だが、疲れているし、まあいいか、と草の上にゴロンと寝転んだ。


「俺も暇だし寝るか」

レオンも迷わず、隣に寝転がる。


「せやせや、ゆっくり寝てみぃ!わてはまわり見張っとくで!」


マルクが楽しそうに言うが、何か企んでいるような顔に見えるのは私だけだろうか?

そうよぎるもすぐに、草の感触が気持ちよく、目を閉じると眠りに落ちた。


すると、夢の中でフワッと草冠をかぶった球根のような精霊が現れた。

小さくて丸っこく、緑の葉っぱがぴょこぴょこと揺れている。


「わあ、かわいい!めっちゃ小さい!」

その球根精霊が突然踊り出した。

両手のようなーー葉っぱ?を広げ、くるくると回り、ぴょんぴょんと跳ねる。その動きは軽やかで、見ていると癒される。


「え、でも……夢でどうやって覚えろと……?忘れないのかしら……」


私は困惑しながら見ていると、球根精霊が「一緒に踊ろ!」というように手招きしてくる。


「ええい、夢なら疲れないし、やらないのも損よね!」


私は夢の中で立ち上がり、真似して踊ってみる。


「こうやって、くるっと……ぴょんって……!」


意外と楽しい。

夢の中だからか、身体が軽く、ステップもスムーズだ。

球根精霊と一緒に何度も踊っていると、いつの間にか動きを覚えてしまった。

球根精霊は可愛らしく、言葉こそ交わせないがジェスチャーで友情のようなものが芽生えた気がする。


ついにはへとへとになり、球根精霊と笑い合っていたら頬にチュ、とキスされる。

周りの景色とともに球根精霊が手を振り消えた。



球根精霊が消えた真っ白な世界から目が覚めると、汗だくになっていた。

草原の風が汗を冷やして心地よい。


隣では、レオンがまだ眠っている。

なんだかすごく………いやそうな顔をしていた。


「うっ……」


やがて、レオンが唸りながら目をこすって起き上がった。

「……なんだあいつ……」

彼は、顔をしかめて不機嫌そうに呟く。


「何!?もしかしてレオンも練習させられたの?」


私がニヤニヤしながら聞くと、レオンは無言で顔をしかめる。


「レオン様、それは踊らされた顔やんか!どんな夢やったんや?教えてみぃ!」


マルクが腹を抱えて笑いながらからかう。


「うるせぇ!球根みたいな変なやつに無理やり踊らされたんだよ!俺、こんなんでも必死だったんだぞ!」


レオンがムッとして立ち上がった。


「ハハハ!レオン、想像したら面白すぎ!あんたのしかめっ面、最高だわ!」


私は笑いが止まらず、涙が出そうだ。


「笑うなよ、リナ!お前だって踊ってたんだろ!」


レオンが赤面して反撃してくる。


「うん、踊ったよ!でも私、楽しかったもん!球根ちゃん、可愛かったし!」


「レオン様のしかめっ面踊り、見てみたかったなぁ!」


マルクがさらに煽ると、レオンは「もういい!次行こうぜ!」と逃げるように歩き出した。




「さあ、これで草の寝床もクリアや!次は魚に踊りを見せにいくで!」


私たちはマルクに案内され、再び湖へと向かうことになった。


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