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涙のうた


「そういえば、迷宮ってエルフの里に繋がってるの?」


「せやで。ちょうどええ。星涙花の瓶、持っとるやろ?」


マルクが私の瓶を指差す。


「うん、持ってるよ」

「ほら、星涙花の液体は、星の欠片から生まれたものの声を聞けるんや。耳を当ててみ?」

「え、本当?」


私は、瓶を耳に近づけた。

鈴が鳴るような声が、詩を歌い始めた。


星の涙が歌う

耳長の祭りにいらっしゃい

魚に踊りを見せてから


魚の踊り

蝶の寝床が知ってるよ

ひらひら舞う秘密


魚の踊り

魚の寝床が知ってるよ

海の底でお勉強


魚の踊り

たまにはお昼寝

草たちもそっと囁く

涙の歌は終わらない


魚も聞きたい 涙の歌

星の声が響き合い

祭りの道が呼んでいる


私は、目を丸くした。


「レオン、すごいよ。聞いてみて」


「なんだ、これ?歌?何の役に立つんだ?」


レオンも瓶を受け取り、耳を当てる。


「なんかよく分かんねぇけど、いい声だな……」

レオンは、気に入ったようで、何度も瓶に耳を当てている。



「これが、エルフの里への行き方やで。もうすぐ祭りやしな」

眼鏡の奥の目が、細く笑う。



「え、どういうこと?魚の踊りって?」

「まーじで意味が分からん。」

歌は気に入ったらしいレオンだが、歌詞は私と同様、よく分からないようだ。二人で首を捻る。


「謎を解く楽しさがあるやろ?」


マルクは、意地悪く笑う。

多分、からかっているのだろう。


「リナ、何か分かるか?」

「まったく、さっぱり」


私はお手上げでーすと、バンザイポーズして空を見た。


「せやなぁ、自分で気づくのが面白いんやで。ほら、きばりやぁ!」

「もう!教えてよ!」


「魔女はん、頭が良いからすぐに分かるはずや。レオン様も、一緒に考えたってや」


「お前ら、楽しそうで何よりだ」

レオンは呆れた顔でこちらを見る。

ずいぶん他人事だ。私より早くもう考えるのを放棄していたようだ。


「ねえ、マルク。魚の踊りって何!?教えてよ!」


「しゃあないなぁ、ヒントや。とりあえず、分かるところに行けばええんちゃう?」

「聞いてみたけど、さっぱり分からないわ!」

「俺も」



「なんや、二人とも。根性ないなあ。まあ、進めば分かるやろ」

そう言って、マルクは歩みを進める。



「迷宮に行けば分かるで」


「マルクの言う通り、迷宮に行くしかないか」

「うん、エルフに会いに行きましょ。蝶……魚……?一体、何なんだろう」

私は、上の空で呟く。

「お兄さん、お嬢さん。ほな、案内するで!」

マルクは、重たい革鞄を担ぎ上げた。



「マルク、ありがとう」

「なんや、おおきになぁ!お嬢さんはええ子やなぁ!」

「迷宮、楽しみだね!」

にっこり私が笑うと、レオンも控えめに笑い返す。


そのとき、蝶がフワッと現れ、森の奥へと飛び立っていった。


「あ、蝶だ!」


「迷宮への道が開くで!行くで!」

マルクが早足で追いかける。


「レオン、行くよ!」

レオンがやれやれとついてくる。


旅は、少し騒がしい客人を迎え、さらに賑やかな様相を呈してきた。

私は、胸がいっぱいになり、足取りまで踊り出しそうな気分だった。

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