表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/81

ぷりんぷりん

しばらくして、マルクは自分の傷をじっと見つめ、尋ねてきた。


「なぁ、お嬢さん。ええ薬を持っとるなぁ。どこで手に入れたん?」

「自分で作ったんだよ」


「なんやて!自分でか!?薬師さんやったんか!」


「まあね。薬作りはちょっとだけ好きなの」

少し照れる。


「お前、いつも変な薬ばっか作ってるよな」

「変じゃないわ!ちゃんと役立つのよ」

「せやな、さっきの薬、めっちゃ効いたで。傷が一瞬で治ったんやもん」


感心してマルクが頷く。わたしは誇らしく胸を張る。


「でしょ?ポーションって、便利なのよ」

「便利すぎて、逆に怖いぜ」

「すごいって言ってよね!」


からかうレオンをそこそこに、エルフの商人ーーマルクがこちらを伺ってきた。


「そやそや、お嬢さんはええ薬師さんやなぁ。ほんで、どこに行くつもりなん?」


すこし言い出しにくいがあわよくばという気持ちで声を掛ける。


「実は、エルフの血を探しに森を抜けようとしてたんだけど……」


「エルフの里がどこにあるのか分からなくてな。なあ、マルク。血を少しだけ分けてくれねぇか?」

言い出しにくかった私の願いを、レオンが代わりに伝えてくれた。


「エルフの血!?ほぉ、そらけったいやなあ。血が必要なら、協力したいところやけど……。もっと若くて、健康で、プリンプリンの血を持っとるエルフが里にぎょうさんおるで!そっちのほうがええやろ!」

「プリンプリン?」

私が首を傾げる。

「せや、里の若いもんはプリンプリンやで!長老が一番ぷりんぷりんやけど……。まあそんなん言わんでも、他のやつのがわての血なんかより、ずっとええ!ほら、わては旅でボロボロやしな!」


「へぇ、そうなんだ。プリンプリンって、面白いね」

「なんや、お嬢さん。プリンプリンを気に入ったんか?里の若もんを見たら、びっくりするで!」

「プリンプリンってどういう事だ?」

レオンが呆れたように尋ねる。

「若くて元気な感じや!レオン様も、昔はプリップリやったんちゃうか?」

マルクがまた茶化す。


「うるせぇ!なんかわかんねぇけどバカにされてる気がする!!」

レオンが虫を払うように手を振った。

なんだか、マルクに会ってから、レオンの新しい一面をたくさん見ている気がして楽しい。


「マルク、レオンをからかうのはやめてあげて。私だけで十分だから」

私が笑う。


「そやな、お嬢さんのツッコミだけで十分おもろいわ!」


マルクがパンと手を叩き、光る森を指さす。



「今、木が光る時期なんや。この木は、星実の木っていうて、エルフの里を守っとるんや。光ると力が弱まって道が開く。そしたら、迷宮が現れて、蝶が案内してくれるで。入り口で見たやろ?」


「迷宮?入り口?」


私は目を丸くした。


「そうや、エルフの里に続く迷宮や」


「へぇ、すごいね。蝶が案内してくれるんだ」


「せやで。蝶は可愛いし、迷宮もおもろいで。未熟な実はよく跳ねる良いおもちゃやしな。いろんなものが光る時期やから、今しか見れん景色やな」


マルクが笑う。


「ああ!あの変な実!これのだったのね」


「つーか、また迷うのか……」

レオンが呟く。

「蝶なら、可愛いからいいよね。楽しそう」


「せやな。お嬢さんはええ子やなぁ。迷宮に行ったら、蝶に導かれる感じが楽しいで」


「可愛いって、大事なんだよ。ね、レオン?」

「あれが可愛く見えるなら大したもんだよ。ビビってた癖にな」 


レオンが呆れた顔でこちらを見てきた。


「いや、分かるで!可愛いもんは正義や!お嬢さん、気が合うなぁ!」


「でしょ?レオンもそう思うでしょ?」


「うるせぇ」


レオンがまたうっとおしそうに手を払うのを、マルクがすかさず突っ込む。


「なんや、レオン様、また変な顔になっとるで!おもろいなぁ!」


「そやけど、お嬢さん。レオン様、なんだか楽しそうやなぁ。エルフの血で何をするつもりなん?会話の途中やさかい、流したけど。えらい物騒やんか。血ぃ吸う種族には見えへんし」


「エルフの血が必要なのはね、エリクサーを作るためなの。まだ、材料が一つしか集まってないんだけど」


私は、軽く星涙花の小瓶を見せる。


「エリクサー!?ほぉ、そらすごいなぁ!薬師のお嬢さん、そんなもん作ろうとするなんて、やるやん!」


マルクは、出会ってからずっとテンションが高い。

お世辞かもしれないが、自分の誇りを肯定してもらえて、少し鼻が高くなった。


「まあ、変わった旅だよな」

「変わってないわ!大事な旅だよ!」


「ほんま、おもろい二人やなぁ。エルフの里なら、迷宮を抜けたら行けるで。今がチャンスや」

「迷宮、楽しみだね」

「楽しみって……お前、迷うのが好きなのか?」

「レオンと一緒なら、大丈夫だよ」



「なんや、ええコンビやなぁ。ほな、わてもちょっとお二人さんに興味が出てきたで」

エルフの商人は、重たい鞄をガシャガシャと鳴らしながら、軽快についてくる。

鞄の音は、私とレオンの胸の高鳴りを、さらに加速させてくれるようだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
星涙花、綺麗な響きだなぁと思いながら読み始めました。 絵本のようで、よく噛み締めると深い。 レオンの昔話の回がせつなくて、この回で出てきたマルクにちょっと救われました。 リナとレオン、いいコンビだなと…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ