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商人との出会い

「次は……エルフの血を集めたいのよ。この森、もう少しだけ探検してから、エルフの里を目指そう」


私は、背負い直した背嚢をポンポンと叩いて埃を払う。


「了解。血なら、エルフの集落に行けば手に入るだろ」


「それが、どこにあるのかサッパリなのよね。迷子になっちゃうかも」


「迷っても楽しいんだろ?俺もいるしな」

レオンがニッと笑う。

「そっか、そうだよね!頼りにしてるわ」

私も笑顔を返した。


その時、森の奥から呻き声が聞こえた。


「そこのお嬢さん、お兄さん!!助けてくれへんか!」


エルフなまりの声だ。

私はレオンと顔を見合わせた。


「誰だ?」

レオンが剣を構え、私も薬草袋を握りしめる。


木の陰に近づくと、血濡れのエルフが倒れていた。

尖った長い耳、スラリと伸びた足、透き通るような白い肌。

紛うことなき、エルフの特徴だ。


緑のマントに大きな革鞄、金縁の眼鏡の奥で、細い目が苦痛に歪んでいる。


「レオン、助けよう!」

「ああ…!分かった!!」


レオンがエルフに近づき、腕を掴んだ。


「立てるか?」

「うう……なんとか」

エルフが呻く。


レオンがエルフを木に寄りかからせると、私は傷薬のポーションを取り出した。

青い液体が、怪しく光る。


「ちょっと待ってね、もう大丈夫よ」


傷口と血を水で洗い流し、ポーションを手に取る。

蓋を開けると、シュワッと炭酸が抜ける音がした。


私は、傷口にポーションを塗布する。

青い霧が傷を包み込み、みるみるうちに傷口が閉じていく。


「おお、なんやこれ……!!まったく痛みがなくなったで!」

エルフが驚いたように立ち上がった。


「いやぁ、おおきになぁ!わて、エルフの旅商人マルクと申します。どうぞ、よろしゅう!」


マルクがニヤリと笑う。

革鞄を担ぐと、中からカチャカチャと音がした。


「私はリナ。こっちのポンコツは、レオン」

「え、レオン!?まさか、英雄のレオン様やないか!?うわぁ、テンション爆上がりやわ!」


マルクが手を叩いて驚愕する。



「本当に英雄だったのね、このポンコツくん!」

「うるせぇ!からかうな!」

笑いながら茶化すと、レオンが顔を赤くした。


実は、英雄だったことは驚かない。

今までの旅で、レオンが嘘をつくような男ではないと薄々思っていたからだ。

何をしたかわからないが、このポンコツ具合も、過去の出来事が関係しているのだろう。


「いやいや、魔の入り口を塞いだ英雄やで!伝説やんか!話を聞いて憧れとったんや!えらいことやで!」


マルクが目を輝かせている。


「や、やめろよ。そんな大したことじゃない」

「英雄って、大変なのね?塞いだって何したの?」

「だからリナ!英雄って呼ぶな!」


レオンが耳を真っ赤にして顔を覆った。

魔の入口ってなんだかわからないが、たしか魔物が出てくるものだったはずだ。

星の力が関係しているとかいないとかいうおとぎ話があった気がする。

そんなのを塞いだなんて…まだ疑うわけではないがなんとなく疑問に思う。


突っ込んだつもりがなんだかからかったみたいになってしまった。



「なんや、レオン様、顔真っ赤やん!かわいらしいわあ!わて、昔から英雄って呼ばれる人に会いたかったんやで!」


「マルク、うるさいぞ」


レオンはタジタジだ。


「せやけど、お嬢さんの言う通り、英雄って大変そうやなぁ!わての商品買ってちゃんと備えとき!」


マルクと私は、顔を見合わせて笑った。

どうやら、このエルフはかなりノリが良いらしい。


「ねえ、マルク。旅商人って、何を売ってるの?」

「薬草やら、珍しい石やら、布やら売っとるで。エルフの里から仕入れて、森やら街やらを回っとるんや。ほら、この青い石は魔力がこもってて、布は染めもんやし、薬草は秘伝のエルフの里産や!」


マルクが革鞄を開き、商品を軽く見せてくれた。


中には、たくさんの商品が雑然と詰め込まれていたが、綺麗に整理されている。

商品はどれも見たことがなく、興味をそそられる。

しかし、私が一番興味があるのは、もちろん……

「へぇ、すごいね。エルフの里の薬草って、どんなの?」


「この赤い葉っぱは、熱を下げる効果がある『百葉』っていう薬草や。花が咲いてるときは、色がクルクル変わるらしいで。この白い実は『ランタン』っていうんや。油が取れて、それが傷に効くんや。ほんで、この布はエルフ特製の刺繍入り魔物よけや!助けてもらったお礼に、安くしとくで!」


マルクが笑う。

私はその言葉を反芻し、手持ちのメモに書き出して新しい薬の作り方を思案した。


「マルク、商売上手だな。魔物よけをくれ」

「毎度あり!せやろ、わては商売の天才やからな!」


マルクが胸を張り、笑う。

手際よく商品を包み、レオンと取引を始めたが、ほとんど無料同然の値段で売ってくれていた。



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