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第83話 悪魔との戦い(4)

さて、どうしたらバフォメットの魔法障壁を打ち破る事が出来るのか。

次回『第84話 悪魔との戦い(5)』をお待ちください。

「なあつばさ、いや、隼か。今のは事故だ。お前のせいじゃない。あれはバフォメットの『魅了』なんだから」


「違う! 僕は『隼』じゃないよっ!」


「いや、お前は隼だろ? あの『魅了』にかかった事が証拠だ。そうだろう? 時子ッ!」


 いきなり話を振られた時子は慌てながらも答える。


「そう・・・・・・ですね。どうやらバフォメットの『魅了』は男の人にしか効かないみたいです。バフォメットが出すあの匂いをいい匂い、と感じたら魅了されてしまう様です」


「ちょっと待て時子、今あの匂いを臭いと感じてしまった俺はもしかして・・・・・・」


「えっ! ま、まさか信二くんが女の子に・・・・・・」


 時子の心配を横目に見ながら信二は慌てて自分の股間をまさぐる。


「あった、あったぞーっ! おれは男だ、男だったーっ!」


「この馬鹿っ! 当たり前の事で喜んでるんじゃないっ!」


 望が思わずポカリと信二の頭を叩く。


「痛ってーな、望!」


「うるさいっ! 今、瑞穂とつばさ・・・・・いや、隼くんがいいところなんだからっ!」


「あーあ、結局バレちまったか。どーせいつかばバレるとは思ったが、ずいぶん早かったな」


「えっ? アンタ隼くんの事を知ってたの? この戦いが終わったら詳しく聞くからね! く・わ・し・くっ!」


「うっ! 変なプレッシャーがっ!」


「信二くん、のんちゃん、ちょっと静かにしてください! 話が全然進まないじゃないですか!」


 同じころ、時子の話を聞いていたつばさ、いや隼もスカートの上から自分の股間を確認していた。


「あっ、あった。良かったーっ!」


 そんな隼の仕草を目の当たりにした瑞穂が隼に問いかける。


「隼! 今までどうして女装なんて・・・・・・私は本当は隼と一緒に戦いたかったんだぞ? どうしてこんな回りくどい事を?」


「・・・・・・瑞穂ちゃん、これには深い理由が・・・・・・」


「だから何なんだ! 深い理由って、別に大したことじゃ無いんだろう?」


 瑞穂が隼の肩をグラグラと揺らす。これまで隼に騙されていたという思いが湧き上がる。

 信二はこのままでは隼は瑞穂に上手く説明出来なさそうだと判断し助け船を出す。


「瑞穂っ! 隼が『つばさ』として戦っていた理由は2つだっ!」


「ふ、2つだと?」


「ああ、そうだ! ひとつは隼の女装癖っ!」


「うわぁ、信二くん、何もそんな身も蓋も無い言い方をしなくても!」


 隼が信二に抗議するが、信二はそれを拒否しながら話を続ける。


「うるせえ! 面倒な話を聞かされたこっちの身にもなってみろ! でだ、瑞穂いいか? 2つ目は隼のいとこ、『天童つばさ』の為だ! そこにいる隼はある意味『つばさ』でもあるっ! この話はめんどくせーから、あそこでへらへら笑ってやがるクソ悪魔を倒した後で説明するっ! と言う事で死ねッ! クソ悪魔!」


 信二はいきなりバフォメットへ何発もファイアボールを打ち込む。バフォメットは一瞬慌てるが、撃って来たのがMAGICS(マジックス)だと気が付いて余裕で受けきる。信二のファイアボールはバフォメットの手前ですべて消え去ってしまう。


『おのれ、わが魅了から逃れるとは! それならもう一度だ!』


 バフォメットは再び体中から魅了をもたらすガスを吹き出させる。辺りには再び臭い匂いが立ち込める。


「うおっ! 臭ぇ! いい加減にしろっ!」


「勘弁してほしいね! 耐えられないよ、この匂い!」


「信二、大丈夫? また変な事を言い出さない?」


「ああ、大丈夫だ! あのクソ悪魔はクソ悪魔のままだ!」


「隼の方はどうだ!」


 信二が大丈夫であることを確認した瑞穂が心配そうに隼へ問いかける。


「瑞穂ちゃん、大丈夫だよ。今度はおかしくなっていないから。」


 そう言って隼は『ドン』とバフォメットへ向かって一発放った。


 焦りながらも隼の銃弾を躱すバフォメット。


『何故だ、一度効いた『魅了』がなぜ効かぬ? しかし戦いはこれからだ。わが恐怖、存分に味わうといい!」


 バフォメットの魅了が効く条件はひとつ。すなわち、『男性である事』だ。しかしこれにはバフォメット本人も信二達にも気が付いていない付加条件があったのだ。


『但し、その男に好意を持つ女子からの一撃を食らった者は、その痛みが残っている間は『魅了』の影響を受けない』


 信二は望から、隼は瑞穂から一撃を貰った事で、一時的にバフォメットの『魅了』が効かないようになったという事だ。もしバフォメットがこの事を知っていれば、もう少し時間をずらして『魅了』を発動し、信二と隼を操ろうとした事だろう。


 それでもその時は信二であれば望、あるいは時子から、隼であれば瑞穂から一撃を貰う事で元通りとなる。つまり、この場においては『魅了』は意味が無い、と言う事になる。


 バフォメットは右手から炎の玉を、左手からは氷の玉を産み出し、信二達へ投げつける。しかし、信二はとっさにファイアボールとフリージングを発動。バフォメットの炎の玉にフリージングで産み出した氷の玉を、氷の玉にはファイアボールをぶつけてそれぞれ相殺する。


「まー、何とも器用な事で。よくそんなにピンポイントな対応が出来るもんだね」


 望が信二の対応を見て感心している。


「そー言ってくれるのは嬉しいが望も隙を見て攻撃しろよ」


「わかったよ。任せといて」


 望はそう言いながらバフォメットへ突撃する。


「私も行くぞ!」


 望の動きに合わせて瑞穂も斬りかかる。


「それじゃ嫌がらせで!」


『ドン!』隼も隙間を狙って銃弾を打ち込む。


『ぬうっ!』


 バフォメットは気合を入れた声を出して空中で1回転し、それらの攻撃を全て躱す。更に火の玉と氷の球を打ち出し反撃する。炎の球は望を、氷の球は瑞穂を的確に捉えており、2人は何とか躱すものの大きく体勢を崩してしまい追撃する事が出来ない。


「時子! もう1回アレだ!」


「了解です!」


 時子は再び『グラビティボム(重力爆弾)』をコールし、チャージを始める。


「『魅了』を封じて奴の脅威も半減、空中戦である事であの脚力も活かせねーはず。今がチャンスだけど」


 信二はファイアボールを大量に打ち込み、バフォメットを牽制しながらそう呟く。


「そうだけど、あの素早さは厄介だね。望ちゃんと瑞穂ちゃんの攻撃が全然当たらない。このままだと負けるのはこっちだね」


『ドン、ドン』とトランスバレットを打ち込みながら隼が答える。その銃弾すらもバフォメットは躱し続けている。


「そーだな。『クロス・オン|《着装》』を維持できるのは精々10分。そこから先は地上に降りて丸腰で戦う事になる。地上であれば奴の脚力が活きてくる筈だ。そうなったら俺たちは個別撃破されてお終いだ。その前にケリをつける必要があるが、そうするとあの魔法障壁が邪魔になる。このまま膠着状態が続くなら一旦撤退しなけりゃねらねーな」


「うん、そうだね。一体どうすればいいのか・・・・・・」


その時、時子の杖の先にある青い球はじわじわと真っ赤な色に変化する。


「よしっ! ようやくチャージ出来たね!」


「時子、いけっ! 奴を魔法障壁ごとぶっ潰すんだ!」


 時子は信二と隼の言葉を聞いているようで、僅かにコクッと頷き、杖をバフォメットに向けて叫ぶ。


「エクスキューション!」


 杖の先にある赤く変色した球から眩い光が溢れ出す。そしてその光がバフォメットを包み込む。


「よしっ、やったか?」


 信二が禁断の言葉を発した途端、杖の先から出た光がフッと消えてしまう。


「そ、そんな・・・・・・『グラビティボム(重力爆弾)』が効かないなんて・・・・・・」


 時子がガックリと肩を落とす。今の信二たちが持つ最大の切り札が空振りに終わったのだ。望も、瑞穂も、隼も落胆の色を隠しきれない。


『何をしようとしたかは知らぬ。だが我に魔法は効かぬ。さあもう諦めて我にひれ伏すがいい』


 バフォメットが自信満々とばかりにそう言い放つ。お互い膠着状態となるなら有利になるのは自分の方だと思っているようだ。そしてその判断は正しい。

 これから信二たちはゆっくりと土俵際に追い込まれて行く事になる。


「クソっ! まだ諦めてたまるかっ!」


 信二が破れ被れでファイアボールを連発する。


『バババババッ!』


 何発も何発もしつこく撃ち込むが、それらは全てバフォメットの魔法障壁で打ち消されてしまう。


『バシュッ!』


 ほとんどの火の玉がかき消されてしまう中、なぜか1発だけバフォメットの魔法障壁を打ち破り、脇腹に命中する。

 大したダメージはなっていないが、確かに悪魔の肌を焦がしている。


「ん? 1発だけ決まったぞ? 一瞬だけ魔法障壁が消えたのか?」


 信二はそのままひたすらファイアボールを撃ち込み続ける。

 望、瑞穂、隼も攻撃を続けるが全て躱されている。


 バフォメットは攻撃を掻い潜りながら火の玉や氷の球を放ってくる。


 信二たちはそれを躱しながら攻撃を続ける。両者とも手数を多くして攻め込む。一瞬も気を抜けない攻防が続くも、お互い有効な打撃を決められないでいる。


「信二、いつまでコレを続けるの? 全然効いてないのに意味があるの?」


 望が攻撃を繰り出しながら信二に問いかける。


「なんかもうちょっとで攻略の糸口が掴めそうなんだ! すまねーがもう少し粘ってくれ!」


 信二もファイアボールを連発しながら答える。その間に放ったファイアボールは全て打ち消されている。


『バシュッ!』


 そんな中、バフォメットの左腕に1発だけ火の玉が決まり、脇の辺りを焼く。


「ぬうっ! 効かぬ、効かぬぞっ!」


 バフォメットがそう叫んで火の球と氷の球を連発する。


 慌てて躱す信二たち。幸い全て躱す事が出来た。

 そんな時、信二が『コモンコンソール』を通じてメッセージを流す。


『沢山撃ち込んだファイアボールの中で2発だけ決まった! 一瞬魔法障壁の消えるタイミングがあるみてーだ! ここまでの攻撃を解析するから、すまんが望、瑞穂、隼でバフォメットを牽制してくれ!』


 この指示に望、瑞穂、隼が了解、と返す。


『時子は『グラビティボム《重力爆弾》』、あと一発はいけるよな!』


『行けます!』


 時子がそうメッセージを返す。


「でも、あと一発撃ったら精神力(MP)は無くなってしまいます。クロス・オン(着装)の維持は出来なさそうです・・・・・・」


 誰にも聞こえないようにそう呟く時子。

 最初にキャンセルした分を含むと既に1発半近くの精神力(MP)を消費している。本来2発がギリギリの時子にとっては正直不安の方が大きい。

 信二も本当は時子の精神力(MP)の残量が不安ではあるが、時子の言葉を信用する事に決めた。


『よし時子、それなら『グラビティボム《重力爆弾》』をチャージしてくれ! ただし俺が指示を出すまでチャージしたまま待機! それじゃ頼むぞ!』


『わかりました!』


 時子はメッセージを返すとグラビティボム《重力爆弾》』のチャージを始める。


「よし、それじゃ早速解析開始だ」


 信二は望たちに指示を出すと隼の側まで下がる。


『コモンコンソール』では、エンボとの戦いで信二たちが行った攻撃の内容、エンボの攻撃の内容が全て記録(ロギング)されている。それらの内容を整理する事で信二たちの攻撃の癖やエンボの攻撃や防御の法則性を見出す事が出来る。


「イベントログから俺のファイアボールの履歴を抽出! ここまで撃ち込んだのは273発で命中したのは261発か。何か法則性はあるのか・・・・・・」


信二はこれまで『コモンコンソール』に蓄積されたイベントログから必要な情報を取り出していく。その間にも望たちとバフォメットの攻防は続く。



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