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第66話 転校生(2)

今回は望と隼が転校して来た訳を説明します。

 昼休み。

 信二、望と時子、それから瑞穂、隼は学校の屋上に来ていた。本来立ち入り禁止区域となっているため、彼らの他には誰もいない。もちろん、彼らはここへはこっそりと来ている。


 どこから持ってきたのかわからないが、隼がレジャーシートを広げてくれたので、一同はその上に座り込み各々持参した弁当を開く。

 一息ついたところで、信二が隼に話しかける。


「ちょっと聞きたいんだが、佐用はどーして学校にレジャーシートを持って来てるんだ? 今日のところは助かったけどさ」


「こ、こんな事もあろうかと思って・・・・・・今日は、司馬くん達、に僕と瑞穂ちゃんが・・・・・・この学校に転校をして来た理由を話さなきゃと思って・・・・・・」


「さっきは時間が無かったからね! 是非じっくり聞かせてもらうよ!」


 望は箸を止めて興味津々と言った感じだ。


「そうです。高校に入学してまだ1か月しか過ぎていないのに転校をするなんて、普通は考えられませんからね」


 時子がそう言った。先日実家へ帰った時に今の学校を止めて帰って来いと言った人間も居たが、それは稀なケースだろうと思い、頭の隅へ追いやる事にする。


「も、目的はさっき休み時間で話をした通り・・・・・・『ザ・フール』の件だよ。これまで調べて来てわかったことはすぐに司馬くん達と情報を共有したいと思ったんだ」


「私は別に転校までする必要がないだろうと言ったんだがな。司馬と膝を詰めて話をする事でこれまで思いつかないような事が見つかるかも知れないと言い出したんだ」


 若干不満そうな表情を浮かべながら瑞穂がそう説明する。


「うへえ、男と膝をくっつけきゃならねーなんて、俺はお断りだぞ」


 信二も嫌そうな顔をする。


「もちろん、僕は司馬君と物理的に接触したいという訳じゃなくて、面着で打ち合わせると色々見えてくる事もあると思うんだ」


 隼が信二に向かってそう力説する。


「メンチャクってなんだよそれ?・・・・・・顔をくっつけることか? おい、言っている事がなんかキモくねーか?」


 隼と顔がくっつくほどに密着する姿を想像してしまい、思わず身震いする信二。


「あれっ? 父さんがよく使っている言葉だからみんな知っている言葉だと思ったけどな。メッセージのやり取りじゃなくて、直接会って話をすることだよ」


「そっ、そーか。それはわかったよ。お前らもう転校して来てしまった以上、俺にどうこう言う立場じゃねーけど、いきなり転校とはずいぶん思い切った事をするよな」


 あきれた、という表情を浮かべながらも隼と瑞穂の転校については了承する信二。


「それじゃ本題に入るけど、ここでの話は絶対に他にはしないで欲しいんだ。それから、調査の目途がついたらLMOS(エルモス)への報告をする事になるけど、その時はここにいるメンバーみんなで確認してから行動するようにしたいんだ」


 隼はそう言って4人の顔を見る。すぐに承諾する信二達。『ザ・フール』への糸口を前にして駄々をこねている場合ではない。


「ありがとう。それじゃまず、大龍城(ダーロンじょう)で手に入れたエナジーアキュムレータなんだけど」


「それって人の精神力(MP)を溜める機械の事だよね? どんな事がわかったの?」


『ザ・フール』の行動が許せない望は食い気味で隼の話を促す。


「うん、あの機械の部品の出どころを確認したんだけど、いろんなメーカーの部品を組み合わせて作られているんだ。多分、作成者の出どころがわかりづらいようにしているんだろうね」


「でも、それだと『ザ・フール』の正体にはたどり着かない、と言う事がわかっただけなんじゃないですか?」


 眼鏡をきらりと光らせて時子がそう言った。


「いや、そうでもないんだ。機械を組み立てるときの手順なんだけど、組付け精度がかなり高いからまず素人の仕事では無いね。大手の組織に属しているか、昔そうだった人が関わっているはずなんだ。だけど、少なくとも六ツ星(むつぼし)で規定している作業要領とは全く異なる組付けになっているんだ」


「ねえ、いきなり言っていることがわかんなくなったんだけど? 信二はわかる?」


 急に話が見えなくなった望。不安になって信二に話を振る。


「一応な。六ツ星(むつぼし)じゃない大手といえば、あとは藤丸(ふじまる)出海(いずみ)かってところだよな? でも、六ツ星(むつぼし)の作業要領書なんてよく手に入ったな? 会社の極秘文書なんじゃねーのか?」


 信二の問いかけに答えたのは瑞穂だった。


「隼の父親は六ツ星(むつぼし)ホールディングスのCEO、要するに六ツ星(グループ)のボスだ。LMOS(エルモス)からの依頼という事でもあるし、六ツ星(むつぼし)の情報であれば、ある程度は融通が効くんだ。もちろんさっき隼も言った通り、ここでの話はたとえ親でも口外しないで欲しいんだ。隼の父親を除いてはな」


「隼君って、六ツ星(むつぼし)の御曹司だったんだ! それで無茶な転校も出来たってことなんだね!」


 望が納得した、とばかりに清々しい顔つきでそう言った。それに対して隼と瑞穂はなんとも所在なさげな表情を見せる。


「う、うん・・・・・・今回の転校の件は、金持ちの道楽だ、と言われても致し方ない事だと思っているよ。僕が言い出した事で瑞穂ちゃんまで巻き込んでしまっているしね」


 隼は若干テンションを落としてそう答える。


「なあ隼、私は別に気にしていないからな。隼がいない学校なんて耐えられない。お前の行くところならどこだって付いて行くさ」


 瑞穂がそう言って胸を張る。彼女の大きい胸が強調され、主に信二が目のやり場に困っている。


「なんか、告白しているみたいだね!」


 望が瑞穂を見て素直な気持ちを表に出す。


「いや、別にそう言う事じゃないんだ! こいつは普段大人しい癖に機械の事が絡むと見境が無くなるから心配なだけだ!」


 あきらかに狼狽している瑞穂に生暖かい視線を送る信二達。


「とにかく! 今は時間もそんなに無い事だし! 隼、話を続けてくれ!」


 無理やり話を元に戻そうとする瑞穂。その気持ちを汲み取った隼が話を続ける。


「えっと・・・・・・とにかく、『ザ・フール』は藤丸グループか、出海グループのどちらかに関係している技術者だ、って事だよ」


「なるほどね。隼くん、もしかしたら、藤丸のサギョーリョーショウとか言うやつ、なんとかなるかも?」


 望が右手を小さく挙手し、そんな事を言った。


「作業要領書な。もしかして、旭の親父さんに頼むのか?」


 信二の問いかけに頷く望。


「そう。(しょう)さんにお願いしてみるよ」


「えっ? どう言う事? 本田さんって、藤丸グループの経営者と付き合いがあるのかい?」


 思いもしない援護に驚き望へ確認する隼。


「う、うん。あたしの幼馴染が藤丸グループの御曹司だったんだ」


 旭の事を切り出す望に信二が心配になり問いかける。時子も不安そうに望を見る。


「おい望、大丈夫なのか?」


 信二と時子の反応に気が付いた望は2人に必死に手を振ってこたえる。


「いやいやいや、一昨日はちょっとブルーになっていたけど、それは昨日ちゃんと解決したから! それよりやっぱ、あたし1人だと説明できなさそうだから信二も一緒に来てくれる?」


「ん? 俺が?」


「そう。近いうちに信二を翔さんに紹介したいと思っていたから、丁度良かったよ。ねえ、ダメかな?」


「おいおい、そこまで言わせておいて、ダメとは言えないだろーが。行くよ。どうせ望だと変な説明をしそーだしな」


「なんかあたしのことをバカにしているようでムカつくけど、とにかくよろしく! じゃあ、後で翔さんに連絡しておくから。行く日が決まったら教えるね。信二はいつでもいいでしょ?」


「勝手に決められるのもどーかと思うが、望の言う通り、特にスケジュールは決まってねーから日取りはまかせるよ」


 とんとん拍子で物事が進んでいく様子に時子がつぶやくように言った。


「信二くん、藤丸グループのトップに会えるなって凄いですね! というか、六ツ星(むつぼし)の関係者もいるなんて、ここはずいぶんと凄い人たちが集まっているんですね」


「両津さん、別に隼は会社のトップにいるわけでもなし、そこの本田だってそうだろう? たまたま親や知り合いがそういう人達だったと言うだけの事。それで気おくれしたりなんて一切する必要なんて無いんだ」


 時子に話しかける瑞穂。そんな彼女に信二が突っ込む。


「雨宮製作所のお嬢様が言ってもいまいち説得力がねーけどな。でも、雨宮が言うことは最もだ。時子も実力では一切引けを取ってねーんだから、胸を張っていればいーんだ。俺も気にしてねーしな」


「わかりました! ありがとうございます、雨宮さん、信二くん!」


 瑞穂と信二の言葉で自信を持つ時子。


「さて、思いがけず『ザ・フール』の事がもう1つわかることになりそうだね。僕も引き続き調査を進めるよ」


 そう話す隼に信二が話しかける。


「しかし、佐用は好きなことなら性格が変わるとさっき言っていたけど本当だ。ずいぶん面白れー奴だな。でも、しれっと俺たちの中に入って来ようとするあたり、侮れねーな」


 信二がチクっと言った。


「ははは、そこは信二くんの言う通りだね。それが僕の2つ目のお願い。『ザ・フール』は信二くん達を狙っていると思うけど、それは僕と瑞穂ちゃんも一緒なんだ。奴に対抗するには僕と瑞穂ちゃんだけだでは危ないから、どうしても信二くんたちの力を借りたいと思っていたんだ」


 隼がそう言って信二に頼み込む。


「それはわかったけど、天童はどうするんだ? あいつ抜きでする話じゃねーだろ?」


 信二の話に隼が答える。


「つばさには僕から話をしていて、この件については納得してもらっているんだ。えっと、言い方が悪かったね。僕と、瑞穂ちゃんと、つばさを信二くんたちと共に活動させて欲しいんだ」


 それを聞いた信二は望と時子に相談する。


「なあ、望、時子。この話、どう思う?」


「あたしはいいよ。彼らもなんだかおもしろそうだし」


「私もこの話はお受けしたほうがいいと思います。『ザ・フール』の脅威は間違いなくあります。それと対抗するために佐用さんや雨宮さん、天童さん達と力を合わせるのは私たちにとってもプラスだと思います」


「だな。それは俺も同感だ。なあ佐用、雨宮。そう言う訳で、今日からお前達も俺たちの仲間だ。一緒に『ザ・フール』をぶっ潰そーぜ!」


「信二くん、ありがとう。一緒にがんばろう!」


「司馬、これからよろしくな。これから切磋琢磨して共に力を付けていこう」


「ああ、そーだな。仲間になったのなら、これから隼、瑞穂、つばさと呼んでいーか?」


「それはぼくからお願いしたいと思っていたんだ。瑞穂ちゃんもそうしたら? 信二君たちもいいよね?」


「お、おい隼。えーっと・・・・・・信二、望、時子。これでいいか?」


「ああ、それでいい。改めてよろしくな、瑞穂」


「もちろん! これからよろしく、隼くん、瑞穂ちゃん!」


「隼くん、瑞穂さん、よろしくお願いします」


 こうして、隼と瑞穂、そしてつばさは信二達のチームへ参加する事となったのだった。



 彼らが後にスイーパー界を牽引する存在となる事は、この時点ではまだ誰も知らない。


ザ・フールの正体を暴くため、藤丸グループのトップへ会いに行くことになります。

次回は『第67話 藤丸との交渉』です。

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