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第65話 転校生(1)

 いろいろな出来事があったGWも明けた。

 久しぶりに学校へ登校した信二達を含めた生徒たちの間に、とある話題が広まっていた。


「おっす、信二。久しぶりだな。『ウォッチマン』の後入院して、それからそのままGWだったからな。GWはゆっくり出来たのか?」


 信二に話しかけて来たのは久我悠二(くがゆうじ)。中高一貫校の達芝学園(たつしばがくえん)の中で、高校から入学を果たした外進生だ。


「だいたいゆっくりできたかな。望ん家でずっと訓練していたけどな」


 GWの始まりに大龍城(ダーロンじょう)で大立ち回りを演じた事は、ここで話すのも面倒だと思い話を伏せる信二。


大龍城(ダーロンじょう)の近くで沢山の病人が出たっていうニュースもあったけど、信二らはアレには関係していないのか?」


「うっ」

 

 大龍城(ダーロンじょう)のネタは伏せると思った瞬間に悠二からその話をされた信二は思わず言葉が詰まってしまう。


「ほう、どうやら関係しているらしいな。『ウォッチマン』とか大龍城(ダーロンじょう)とか、話題に尽きないよな。今度暇があるときにじっくり聞かせてくれよ。それより信二、なんだか今、転校生の噂があるんだけど知ってるか?」


「転校生? まだ新学期が始まってから1か月だぞ? ずいぶん変なタイミングじゃねーか?」


 いきなり知らない話を持ち出された信二は素直にそう答える。


「だろ? それにうちの学校は曲がりなりにも進学校。受験もなしに途中から入り込むなんて普通ならあり得ないと思ってな」


 悠二もこのタイミングでの転校生に首を傾げている。そんな所へやって来たのが江沢愛子(えざわあいこ)だ。


「ねえねえ司馬君、久我君、さっき用事があって職員室に行ってきたけど、うちの担任のところに知らない子達がいたんだよね。もしかして転校生って、うちのクラスじゃん?」


「知らない子『達』? 転校生って一人じゃねーのか?」


 愛子の言葉が気になって尋ねる信二。


「うん、男の子と女の子。男の子はひょろっとした感じ。割とイケメンかも、っと思ったけど、なんとなくネクラな感じ。女の子は髪の毛が茶色くってポニーテール。美人なんだけど、目つきがきつくってちょっと怖そうな雰囲気だったかな?」


 愛子の説明になんとなく思い当たる節がある信二だったが、彼が何かを言おうとしたときに脇から望がやって来た。


「ねえねえ愛子、その話もうちょっと詳しく。その2人って、ちょっと気になるんだけど?」


 一昨日仮想空間(バーチャルスペース)で会ったときのような昏い雰囲気を見せない望に信二が思わず視線を送ると、望は一瞬だけ信二にニコッと笑いかける。

 どうやら彼女なりに折り合いをつけたのかな、と判断しつつ今は転校生の話が気になる信二。

 悠二、愛子は今の信二と望のやり取りには気が付いていないようだ。


「ゴメン望、私もちらっと見ただけだから、あんまりわかっていないんだよね。だけど、ウチの学校では見たことがない子なのに制服はウチのを来てたから、多分その子達が転校生だって事になるんだと思うんだよね」


 愛子はそう答える。それを聞いた望は信二に話しかける。


「ねえ信二、男の子の方はともかく、茶色の髪の毛でポニーテール、目つきがきつい美人って・・・・・・」


「だよな、俺もおそらく望が考えているのと同じ人間を想像しているところだ。なあ江沢さん、割と背が高くて黒髪ツインテールの女の子は居なかったのか?」


「司馬君、ずいぶん限定的じゃん? 思い当たる節でもあるのかな? でもその黒髪ツインテールは居なかったと思うよ」


「そーか、居なかったか。最近知り合った知り合いで茶髪のポニーテール女子と黒髪ツインテール女子がいるんだが、違うのか?」


 信二の言葉に望が頷きながら話し出す。


「だよね。あの子達の制服は龐泉学園(ほうせんがくえん)でしょ? それならウチと同じくらいのランクだし、わざわざ転校する意味がないよね」


「俺もそう思う。多分、似ているけど別人なんじゃねーのか? ほら、例えば親の転勤が理由とかさ」


 信二の話に頷く一同。これで転校生の話は一旦終わりとなり、その後は各々GWでどんなことをしていたか、と言う話に移っていった。


◆◆◆◆◆◆◆◆


 チャイムがなり、ホームルームの時間となった。生徒たちはみな自分の席に着席している。

 教室の前にある扉がガラリと開き、担任教師が入って来た。後に続く見慣れない生徒が2人。しかし、教室内で信二と望が激しく反応する。


 挨拶をした後、担任が転校生を紹介する。


「みんな、まだ新学期が始まったばかりのタイミングではあるが、このクラスに転校生が2人入る事になった。それじゃ、自己紹介をしてほしい」


 しかし、信二が立ち上がり、彼らをさえぎって発言する。


「おいっ、雨宮、それに佐用! お前ら何でここにいるんだ?」


 ここで担任がのん気にこう言った。


「司馬君、佐用君、雨宮さんとは知り合いなのか? でも今は君の発言する時じゃないよ。少しの間待っていてくれないかな」


「あっ、えっと、スイマセン」


 信二はそう言って一旦引き下がる。しかし、いきなりの瑞穂と隼の登場に面食らっている信二。それを傍目にまずは瑞穂が挨拶する。


雨宮瑞穂(あめみやみずほ)です。とある理由で今日からこちらでお世話になる事となりました。どうぞよろしく」


 続いて隼が挨拶をする。


「おはようございます、佐用隼(さようしゅん)、です」


 隼はそこで深呼吸を行い、それから話を続ける。


「隣にいる雨宮瑞穂と同じ学校から転校してきました・・・・・・こんなタイミングで皆さん驚いていると思いますが・・・・・・どうぞ、よろしくお願いします」


 とりあえず2人を拍手で迎える1年2組の生徒達。


「それじゃあ雨宮さんと佐用くんは窓際の後ろの方に空いている2席へ座って。定期テストが終わったら席替えをしようか」


 担任の指示に従い瑞穂と隼は割り当てられた座席へ座る。


「よし、今日はGW明け初日だ。気持ちを切り替えて勉強へ臨むように。それでは連絡事項だ・・・・・・」


 新たに2人の生徒を受け入れ、ホームルームは進む・・・・・・


◆◆◆◆◆◆◆◆


 1時間目に入る前の休み時間。


「おい、お前ら一体どうして転校なんかして来たんだ?」


大龍城(たいろんじょう)で預かったエナジーアキュムレータを分析しているけど、少しずつ分かってきた事があるんだ。その情報を信二くん達と連携するにはこうして転校したほうがやり易いと思って父さんにお願いしたんだ」


 隼はそうはっきりと答えた。


「この前LMOS(エルモス)で会った時とは随分雰囲気が違うな。あの時はもっとなんかこう、オドオドした感じがあったよーな気がするけどな」


 信二の問いかけに瑞穂が答える。


「隼は普段であれば大人しいというか、引っ込み思案なんだが、機械に関する事になると性格が反転するんだ。そう言うものだと思って欲しい」


「うん、そう言う事で頼むよ。早速だけど例のエナジーアキュムレータの件・・・・・・」


 グイグイ押してくる隼に望が待ったをかける。


「チョット待ってよ、今はその話を聞いてる時間はないよ。お昼に話を聞くのはどう? トキちゃんにも入って貰った方がいいし」


「わ、わかった。そ、そうだよね。信二くんと会ったらつい夢中になっちゃって・・・・・・」


 急に大人しくなる隼に驚くクラスメート達。


「なあ信二、本田さんの言う通り、キミ達で昼に集まった方がいいみたいだな。雨宮さんも佐用くんもスイーパーなんだろ? それならスイーパー同士、話してくるべきだと思う」


 悠二が信二にそう言った。


「ぼ、僕はスイーパーでは、無いけれど」


 隼がそう言って否定するも信二が話をつなぐ。


「スイーパーでは無いが、当事者だろ? と言うか、佐用が居ないと話が進まないじゃねーか。と言う事で悠二、済まないがそうするよ。早速時子にメッセージを飛ばすぞ」


 信二がそう言って時子にメッセージを飛ばすと


『わかりました。是非よろしくお願いします』


 と返ってきた。


「それなら私は昼に集まると言う事で承知した。隼もそれでいいな」


「う、うん。わかった」


 瑞穂も隼もそれで同意する。


「ところで、つばさちゃんはどうして来ていないの?」


 望が首を傾げて瑞穂に問いかける。


「実はつばさは元々別の学校なんだよ。どこなのかは教えてくれないんだけどな。何故か私に合わせて前の学校の制服を着ていたけど」


 そう言って少し困惑した顔つきで瑞穂が答える。


「まっ、いいか。それにしても雨宮さん達がこっちに転校してきた事で何だか面白くなりそうだね!」


 あっけらかんとしている望。


「まあ、そう言ってくれると助かるよ。それじゃあお昼になったら色々話そう」


 瑞穂がそう言ったところで1時間目の始業を知らせるチャイムが鳴ったのだった。

次回投稿は1月14日(土) 『第66話 転校生(2)』です。次回もよろしくお願いします。

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