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第4話 Sランクスイーパー(2)

本日5話目、本編4話目です。


よろしくお願いします。

 祐輔と信二は視界に展開されている地図上の案内ルートに従い目的の場所へと走る。

 信二が辺りを見渡すと、祐輔達の他にもスイーパーと思われる面々が同じ方向へ駆け出している。

 暫く大きな通りに沿って進み、そこから新宿御苑の新宿門に到達する。

 園内にいた人たちが外に向かって走っているのが見える。

 

 みんな我先にと出口に向かって殺到してきており、大変危険な状態になっている。

 信二は思わず祐輔の顔を見る。

 すると祐輔は意を決したかのように小さく頷いたかと思うと大きく息を吸い込み、出口に向かってくる人たちに対して大きな声で叫んだ。


「皆さん! LMOS(エルモス)が到着しました! もう大丈夫です、どうか落ち着いてください!」


 祐輔の声は大きく、そしてよく通る声だった。


「おい、LMOS(エルモス)だってよ!」


「それなら園内のあのデカい奴をすぐ倒してくれるんだな?」


 園内の人たちはまだガヤガヤとしているが、走るのをやめ、祐輔の話の続きを聞こうとしている。


「今、ここに到着したスイーパー達で皆さんを安全に園外へと誘導します! 我々の指示に従い秩序よく行動してください!」


 祐輔は園内の人たちへ向かってそう叫ぶと、近くにいるスイーパー達へ話しかける。


ランクC(ブラック)ランクD(ホワイト)の皆さんは門の近くにいる人たちを誘導し、LMOS(本部)の方へ案内してください! 避難者の方が落ち着いておられる場合は途中で解散しても構いませんが、その前にお名前と住所を確認しておいてください!」


 スイーパー達はその声を聞いて門の近くにいる避難者へ声をかけ、おおよそ10人くらいのグループにまとめてLMOS(エルモス)本部へと誘導していく。

 門の近くの人はすぐに移動していくため、避難者はスムーズに流れ始める。

 まだ午前中ということもあり、園内にはそれほど多くの人はいなかったらしく、人の流れは途切れつつある。

 それを見た祐輔は信二に話しかける。


「よし、まずは落ち着いたみたいだね。それじゃ信二、これから園内に入って逃げ遅れた人がいないか探しに行くよ!」


「ああ、わかったよ! それにしても、さっきのはスゲーじゃねーか。父さんの一声で騒ぎが一発で収まったよ!」


 祐輔は信二へ答える前に園内へと走り出す。

 慌てて信二も祐輔について行く。

 それを見た祐輔が信二に話かける。


「一か八かだったけど、上手く行ったみたいだ」


 信二は正直な所、祐輔の事を仕事もせずに家の中にいるだけの少し頼りない存在だと思っていた。

 スイーパーになった時だって、信二がファイアボールなどのMAGICS(マジックス)モジュールを作り上げる事に成功したのがきっかけだったのであり、祐輔から能動的に動いたという訳ではなかった。

 生意気かも知れないが、自分がいなければ祐輔もスイーパーになんてならず、いまだに家へこもっているだけだと思っていた。

 だが、今の行動は信二の祐輔に対する評価を見直す事につながったようだ。


「それじゃ信二、園内へ入るよ。さっきの園内の人の慌て方から見ると、逃げる途中で転んだりして、動けなくなっている人がいるかも知れないからね」


 そこから祐輔達は園内の木々の間を進んでいく。

 祐輔の予想に反して、倒れ込んでいる人はいない。ほどんどの人は園外へと避難出来ているようだ。

 しかし、とある池のほとりにたどり着くと、そこの状況は一変する。


 その池は、周囲が300mくらいの大きさの池だ。

 池の真ん中には、木製の橋でつながった小さな島がある。

 その島を埋め尽くすように、大きな怪物が鎮座している。


 真っ赤なとさかとほほ、黄色いくちばし。茶褐色の羽毛に覆われた頭と首。

 頭の見た目は雄鶏そのものであるが、首だけでも1mくらいはある。

 首から下にある体は爬虫類のような鱗に覆われており、背中には蝙蝠のような羽がついている。

 いや、蝙蝠というよりは、絵本の中で登場する竜がもつ羽のように見える。

 羽と鱗は全体的に赤黒く、鈍い光沢がある。

 胸元からは赤黒い鱗に覆われた太い前足が生えており、後ろ足も同様だ。

 尻尾は蛇のように細く長く、そして赤黒い鱗に覆われている。

 尻尾の先は島からはみだしており、池の中へと沈んでいる。

 地面からとさかの先までは、見たところ3m~4m、あるいはもっと大きいかもしれない。


 そしてその怪物の周りと池の水は紫色に変色しており、刺激臭が立ち込めている。

 木製の橋の途中には、紫色に塗り固められたマネキン人形のようなものが何体か横たわっている。


「父さん、なんだよ、あれ? 見たこともないエンボだぞ?」


「信二、勉強不足だぞ。お前もスイーパーなら、これまで先輩スイーパー達が討伐してきたエンボの種類くらい覚えておかないと」


「じゃあ、父さんはあれを知っているのか?」


「あれは『コカトリス』だよ。危険度レベル(4)、極めて危険なエンボだね」


「危険って、どんな風なんだ?」


「力も強いし素早さもある。あのくちばしで一突きされれば並のスイーパーなら一発であの世行きだ。しかし恐いのはくちばしではないんだ」


「それって、もしかして・・・・・・」


「ああ、見ての通り猛毒を吐くんだ。あれを浴びると体の表面は溶かされ、体内に入ると内臓にダメージを受けて即死する」


「橋の途中にある人形みたいなのは?」


「おそらく逃げ遅れてコカトリスの毒を食らった被害者だろうね。残念だがあの方達はもう亡くなっているよ」


 エンボの攻撃で人が死んだという事を聞き、信二は鳥肌の立つ思いがした。

 ついさっき、LMOS(エルモス)に向かう途中でエンボに襲われた自分と同い年の女の子を助けたが、それにしても信二は人がエンボに襲われている所に出くわすのははじめての事だった。


 これまでは街角に沸くエンボをMAGICS(マジックス)で一掃してきただけだった。

 ニュースを見ることでエンボは危険なものだと思っていたが、まだまだ認識が甘かったことを思い知った。

 人がエンボに襲われるという事を目の当たりにした信二はこれまではたまたま幸運が続いていただけだったのだ、と実感する。

 それでも信二は何か攻撃する手はないかと考える。


「父さん、コカトリスの毒を吐き出す射程はどのくらいだ? 俺のファイアボールの射程は最大で20mくらいだから、奴の毒が届かない所ならどうだろう?」


「コカトリスの毒は、大体10mくらいだと聞いているよ」


「じゃあ、俺が遠くからファイアボールを撃てば・・・・・・」


「それはムリだ。信二のファイアボールのチャージタイムはおよそ1秒、それだけの間隔があれば、全部奴の毒で撃ち落とされてるだろうね。それにコカトリスのジャンプ力はかなりのもの。おそらく20mくらいの距離はあっと言う間に詰められてしまうだろうさ」


「それなら一体どうすればいーんだ?」


「信二、忘れたのかい? 我々ランクD(ホワイト)の役目は奴を倒す事じゃない。この場に残った人たちの避難誘導だったろう? すでに毒にやられた人は無理だけど、もしかすると近くに助けられる人が残っているかも知れない。その人を助ける必要があるよ」


「わ、わかったよ・・・・・・逃げ遅れた人を探して助け出せばいーんだろ?」


「その通り。幸い我々はまだ奴の目には止まっていない。慎重に辺りを探そう」


 信二は祐輔の言葉に軽く頷き、改めて辺りを見回す。すると、コカトリスから見ると木の陰で死角となっているところに6歳くらいの男の子が体を小さくして必死に隠れているのを見つけた。


「父さん、あれ・・・・・・」


 信二は男の子の方を指さし、祐輔に知らせる。


「ああ、可愛そうに。怖くて動けないんだろう。信二、ゆっくり慎重に移動しよう。コカトリスに感づかれないよう気を付けて」


 祐輔たちは慎重に、音を立てないようにしてゆっくり移動を始める。


「キェーッ!」


 男の子のところまであと少しという所で、突然コカトリスが金切り声を上げ祐輔たちがいる方向に体の向きを変える。


「ヤバい、見つかった! どうする、父さん!」


次話も投稿します。


よろしければ次話もよろしくお願いします。

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