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第29話 信二と望、そして時子 対するは『ウォッチマン』(2)

望の攻撃が『ウォッチマン』へ決まるも有効打とならず。

信二達はどう立ち向かうのか。

「望さんも凄い人だったんですね。『ウォッチマン』を蹴り飛ばすなんて」


 時子は信二と望から少し離れた場所まで移動し、そこで信二達を見守っている。

 望の存在も知っていた。


 入学式の後、時子は下校時に何度か信二に話しかけようとしたが、その時はいつも信二の隣に望が居て、何か楽しそうに話しているので彼女の話しかける隙が見つからなかった。

 そして時子がまごまごしているうちにそのまま2人でどこかへ消えていくのだ。

 時子はそんな望の行動が信二を独り占めしているように感じており、望に対してあまりいい印象を持っていなかった。


 しかし、こうして『ウォッチマン』と互角に戦っている(と時子は思っている)のを見て望の事を評価しなおす時子だった。


 時子の思いはともかく、信二と望、そして『ウォッチマン』こと醜悪な顔をした小人との戦いは続いている。

 小人はギャーギャー叫びながら2人のいる方に突撃してきた。望に蹴りの一撃を食らった事を怒っているらしい。


 小人はまず望に狙いをつけ飛びかかる。

 彼女が目の前に迫った小人へ対応しようと身構えた瞬間に、敵の姿が望の視界から消える。


「望、右だ!」


 望は慌てて反対側にのけぞると、小人の剣が望の右腕を掠った。

 ビシュッ、と血が吹き出る。


「ウッ」


 思わず呻く望を引き寄せつつ『ファイアボール』で牽制する信二。

 何とか小人と距離を置く事に成功する。

 肩で息をする信二と望。


「ハァハァ、ねえ、信二」


「どうした?」


「あのさ、ヤツが近づいて来るとふっと見えなくなるの。どうしてだろう?」


「恐らく、アイツはフェイントを使っているんじゃねーかな。 俺らは無意識のうちに相手の目線や筋肉の動きから相手の動きを予測しているんだよ。当然俺らの目線は相手が動くと思う方へ向くよな」


「うん」


「ヤツはわざと自分の動く方向とは逆の目線や一瞬のフェイクモーションを繰り出しているんだ。だから、ヤツがふっと消えたように見えるんだ。以前ヤツの映像を見ていた時、どうして被害者は簡単に倒されてしまうのかと思ったけど、実際戦ってみて気がついたんだ。まったく、厄介な事この上ねーよ」


「それが分かったのはいいとして、どうしたら勝てる?」


「今の俺たちにはこれといった決め手がねーんだ。まあ仕方ないからお互い声をかけ合ってヤツの隙を狙っていくしかねーだろうな」


 信二はここで一息ついてから話を続ける。


「最初からわかっちゃいたが、まだまだペーペーの俺らには荷が重い相手だって事だ。といっても諦めたら死ぬから踏ん張るしかねーな。さっき望がヤツを蹴り飛ばした時はお互い動きがよかったと思う。あんな感じでやるしかねーだろな」


 それから信二は望の耳元で何かをささやく。作戦を伝えているようだ」


「うん、わかった!」


 望はそう言って飛び出していく。


「よし、じゃあ全力でいくか!」


 信二も望が向かった方向とは別の場所へと走る。

 2人は小人を中心として一直線上に並ぶようなフォーメーションを構築する。


 信二と望はそのまま小人から数m離れた距離を保ちながら、円を描くように走り出す。信二は攻撃を『ファイアボール』から『ライトニング』に切り替え、相変わらず際限なく打ち込んでいく。望も『ライトニング』のターゲッティング及びチャージを開始する。


 小人は信二の攻撃を全ていなしながら背後からの望の攻撃に警戒している。

 そんな時、信二は『ライトニング』に混じって2発の『ファイアボール』を放つ。しかし慌てて打ち込んだせいか少し小人へ向かう軌道から少しばかりそれているように見える。


 それを見た望は『ライトニング』をエクスキューションする。小人は望の『ライトニング』を警戒していたので即座に対応しようと剣を雷撃に向ける。

 その瞬間、信二は『ライトニング』を連発しつつ、両手の人差し指で小人からそれて飛んでいく『ファイアボール』を指さし、その指をくいっと小人に向ける。


 すると、『ファイアボール』の軌道が小人の向きに変わる。信二が『トラッキング・ファイアボール』と名付けた誘導弾だ。望の『ライトニング』に対応しようとしていた小人は、雷撃を剣で弾いたが、『トラッキング・ファイアボール』への対応が遅れる。それでも1発は体をひねって躱すも残りの1発が小人の左肩にあたる。


 望も信二の攻撃に合わせて小人へと突進する。そして小人の目の前で一瞬屈みこみ、そこから縦方向に1回転して左足のかかとを小人の脳天に叩きつける。


◆◆◆◆◆◆◆◆


「すごい! 信二さんの指の動きに合わせて『ファイアボール』の軌道が変わりましたよ!」


 少し離れたところで信二達の戦いを見守っている時子が驚いている。

 一度放った『ファイアボール』の軌道を変えるなんて、これまで聞いた事もない。


「信二さんは天才です! それに望さんのかかと落とし! とても奇麗でカッコいいです! これならさしもの『ウォッチマン』

も耐え切れないでしょう!」


 もうこれで信二達が勝利したと思った時子は信二達のもとに駆けだそうとする。

 しかしそこで小人が地面に倒れ込むと思いきや、鼻血を出しながらも両足で踏ん張って踏みとどまる。

 そのまま剣を構えなおし、かかと落としを決めた後、まだ体勢を立て直していない望に向かって斬りかかろうとする。


「あっ、危ないっ!」


 時子は立ち止まり、思わずそう叫んだ。


◆◆◆◆◆◆◆◆


「望、危ない! 今助ける!」


 時子が危険に気が付くより少し早いタイミングで信二は望の危険を察知し、『ライトニング』を一発放ちつつ小人へ突進する。


 小人は望への追撃をあきらめ、剣を信二の放った雷撃に向ける。その瞬間、信二が小人にタックルを決め、小人を吹っ飛ばす。

 小人は空中でくるっと回転し、信二達から離れた場所に着地する。


「ありがと信二、助かったよっ!」


 望もいったん膝をついて着地した後、すっと立ち上がる。


「それにしても、アイツタフすぎねーか? 肩とはいえ火の玉を食らって、脳天に一撃をもらったのにまだ倒れてねーぞ! 今のコンビネーションで行けると思ったんだけどな!」


 全力で駆けてきた信二はハアッ、ハアッと肩で息をしながら、吐き捨てるようにそう言った。


「ホントだよ! 今ので倒せないなら一体どうすればいいの?」


「とりあえず望、次の作戦だ!」


 信二が望の耳元で次の作戦を伝える。


「わかった! こうなったらアイツが倒れるまでやるしかないか!」


 信二と望は再び小人へ目掛けて駆け出していく。


「・・・・・・さっきからMAGICS(マジックス)を撃ちまくってるせいでそろそろ弾切れだ。望に伝えたのとは違う方法だし、やりたかねーが奥の手を使うか・・・・・・」


 その時信二は望に聞こえないくらいの声でボソッと呟いた。

 MAGICS(マジックス)は使用者の精神力(MP)を使って発動する。そして、MAGICS(マジックス)を使い込む事で精神力(MP)の上限値が向上する。

 さらに術者の神経回路がMAGICS(マジックス)の発動手順へと合わせて効率化されていく為、コールする際に必要な精神力(MP)が少なくなっていく。


 信二は日頃からMAGICS(マジックス)の訓練をしているので精神力(MP)の上限値はそこそこあるが、あくまでランクC(グリーン)の範疇ならば、と言う条件付きだ。

 これだけ短時間にMAGICS(マジックス)を撃ち続けていれば、あっという間に精神力(MP)が底をつくのも無理はない。


 信二と望は左右にパッと散り、信二、小人、望と一直線上へ並ぶように陣取った。

 ヤツは信二の方に向いている。


「さて、もう何時間も戦っているような感じだが、実際は精々数分しか過ぎてねーんだろうな。お前はどうか知らねーが、それでも俺らはもう限界だ。一気に勝負をつけさせてもらうぞ!」


 信二と望は同時に『ライトニング』を放つ。

 望の発動が若干遅いため、信二が望に合わせて打ち込む。

 それと同時に前と後ろから飛びかかる。真ん中にいる小人は躊躇なく信二に向かって飛んできた。

 信二は首を守るようにガードする。

 それを見た小人はニヤッと笑ったように見えた。


 小人は剣を振りかぶるのでは無く、剣をまっすぐ信二の腹をめがけて差し込んで来た。


 そのまま小人の凶刃がグシュっと信二のへその辺りに吸い込まれていき、そのままスっと体を貫いていく。


「グハッ!」


 信二に仮装空間(バーチャルスペース)で闘った時ですら感じた事のない激痛が走る。


「きゃぁぁぁぁぁ! 信二ィーッ!」


 望の絶叫が辺りに響き渡った。


信二は一体どうなってしまうのか。。。

次回もどうぞよろしくお願いします。

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