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第13話 新しい出会い(2)

前回の続きとなります。

信二にらみつける女の子は一体?

 久我の声につられてクラスのみんなが信二達の方を向く。

 その中で1人の女子から鋭い目線に気がついた。


 背格好は大きくもなく小さくもなくという印象。手足も細く、全体的に華奢な感じに見える。


 片側の髪を耳にかけた形のボブカットで、少し茶色がかった黒髪はそよ風が吹けばさらっとほどけるような細く柔らかな感じに見える。

 くっきりとした二重まぶたの両目は何かしらの強い意思を感じる。少し大きめな口と小さい鼻。

 美人というよりは、可愛らしいと言う印象。


 信二はどこかでその女子を見かけたような気がしたが、すぐには思い出せないので後で考える事にした。

 信二がMAGICS(マジックス)を使えるという事を聞きつけた数人が信二と久我のところにやって来た。

 何か見せて欲しいと言われたが、こんなところで出すと怪我人が出るから勘弁してくれ、と断るのに精一杯だった。


 その後教室に担任が来てホームルームをした後、講堂で入学式を行う。


 講堂では信二を見て手を振る愛梨を見て嬉しいような恥ずかしいような思いをしたが、それ以外はつつがなく終了した。

 クラスに戻って軽く自己紹介をした。

 入学式の前に信二の事を静かに見つめていた女の子は本田望(ほんだのぞみ)と名乗っていた。

 信二はどこかで聞いた事のある名前だと思ったが、それがどこなのかをすぐには思い出すことができなかった。


 自己紹介が終わった後は、担任から次の日の説明や記入すべき書類の配布があり、その後すぐ解散となった。


 入学式が終わった後、信二は本田道場へ行く事にしているので、愛梨には先に帰ってもらうようお願いしている。久我とも別れて1人になった信二は、まだ道場に行くには早いので校内を探索する事にした。


 達芝学園は都会のど真ん中にある学校の割にはその敷地は広い。今日入学式を行った講堂の他にも体育館があり、サッカーを行うことが可能なくらいの大きさのグラウンドやテニスコート、プールもある。もちろん校舎にも様々な教室で様々な学びができるようになっている。


 信二はそれらの施設をめぐる中、途中で屋上に上がる階段を見つけた。特に封鎖されている様子もなかったので階段を上ってみる。屋上に出てみると、綺麗な青空の下、あちこちがピンク色に染まっているのが見える。


 今年は暖かくなるのが例年よりもかなり遅く、桜が入学式の日の数日前がピークとなっている。こんなに遅い季節に桜を見るのは信二としてもはじめてだ。

 綺麗だなあと思いながら信二は思案にふける。


「父さん、俺、高校生になったんだぞ。それと、今日から16歳だ」


 別に誰の答えも期待せずにボソッと呟く。すると・・・・・・


「お誕生日おめでとー!」


 と近くで女の子の大きな声がした。ふと左のほうをみると、さっき教室に居たボブカットの女の子が両手を口元に持っていき、メガホンの形にして叫んでいるのが見えた。その子はさっき1年3組の教室で信二に厳しい目線を投げかけていた子だ。


「あ、ありがとう・・・・・・」


 ちょうど今日が誕生日の信二はその女の子に答えた。


「えっ? 誰かいたの? えっと、・・・・・・司馬くん? 今のはアンタに言ったんじゃないからね! 勘違いしないで頂戴! それよりアンタ、どうしてここにいるの?」


「アンタアンタってうるせーな。確か、本田さんだっけか?」


 クラスの自己紹介でこの女の子が『本田望(ほんだのぞみ)』と名乗っていたのを思い出した信二がそう尋ねた。


「そうだけど、あたしの質問に答えなさいよ!」


「学校を探索していたらここへ来る扉が開いていたから来たまでだ。お前に文句を言われる筋合いはねーな」


 うっ、と詰まる望はそれでも信二に仕掛けて来る。


「もう一度言うけど、さっきのはアンタに言ったんじゃないからね!」


「あん? たまたま今日は俺の誕生日だから反応しただけだ。違うって言うなら気にしねーよ。それともいじって欲しくてわざとに言ってるのか?」


「え? そうだったの? それはおめでとうございます・・・・・・」


 今度は信二に対して祝いの言葉を投げかけて来た。突っかかって来るがそんな事を言うあたり根は悪くないのかもしれないとそう思った途端、可笑しさがこみあげてくる。


「ぷっ」


 と信二は思わず吹き出した。


「せっかく誕生日を祝ってあげたのに笑うなんて失礼な奴!」


「いや、スマン。でもありがとな。ところでお前、以前にどこかで会った事はなかったっけ?」


「覚えていないの? もちろん、直接話をした事はないけどね」


「いや、わかんねーな。どこかで会ったことがあるような気もするがそれがどこなのか全然思い出せないんだよな」


 うーんと唸っているとしびれを切らした望が答えを言った。


「あのさ、アンタうちの道場へ来ているでしょ? 中学生でスイーパーになった奴が居るって! 以前どんな奴かと思って顔を見に行った事があったけど、今の反応を見ると実際のところ随分すっとぼけているみたいだね!」


「本田・・・・・・そうか、そうだったのか! お前が本田道場の『鬼姫』なんだな? 師範の娘さんで、師範と同等かあるいはそれ以上の強さだっつー噂を聞いたぞ? 陰気臭くて大人しい印象しかなかったからすっかり忘れていたよ! しっかし話してみると随分印象が違うもんだな!」


 そんな強さを持っているなら是非稽古をつけて欲しいと思った信二。『ウォッチマン』をこの手で討伐する為にも是非手に入れたい力。

 しかしそんな事を言い出す余裕もなく望は信二に詰め寄って来た。


「『鬼姫』って一体誰が言ってんのよ! さあ吐きなさい!」


 望は両手で信二の襟元を掴んでわっしわっしと揺さぶった。信二はあうあうあう・・・・・・と情けない声が出てしまった。


「ちょっ・・・・・・ゲホッ、ゲホッ・・・・・・取り敢えず落ち着け」


 信二は望の両手首を掴んで自分の体から引き剥がした。望はグルルルル・・・・・・と唸っている。

『鬼姫』のイメージそのものじゃねーか、と信二は言いかけて思いとどまった。


「今はその話をしている場合じゃねーよ。で、お前が本田師範の娘だってのは合ってるのか?」


「ま、まあそうだけど。今は勘弁しておくけど、いつか必ず誰がいだしたのか吐かせるからね! で、そういうアンタも、この歳でMAGICS(マジックス)を作りまくっているという噂を聞いたけど? さっきも教室でMAGICS(マジックス)がどうこう言っていたよね?」


「作りまくっていると言うほどじゃねーけど、ま、大体そんな感じだな」


 そこから暫く奇妙な沈黙が続き、突然2人とも同時に相手に対してバッと土下座の姿勢を作った。


「お前にお願いがあるんだ!」


「アンタにお願いがあるんだけど!」


「「・・・・・・はい?」」

次回からはしばらく場面を変えて望の話となります。

引き続き本作をご覧いただきますようお願いします。

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