誤解のはじまり
「婚約したのは8歳の時なんだぞ?俺が無理矢理になんてできるわけが無いだろう!・・・はぁっ!?あいつと俺が幼馴染なのは親同士が仲良かったからで、婚約したのは家同士が決めたからだ!」
校舎裏を歩いていて、聞き覚慣れた声がした方を見たロヴィーサは、そこに予想通り己が婚約者の姿を認めて足を止めた。
ロヴィーサの婚約者であるヴィルヘルムは、幾人かの男子生徒に囲まれていて、かなり機嫌が悪そうに見える。
「だが、休日の度に一緒に出掛けているではないか」
「婚約者なんだから、仕方ないだろう!」
「そうだったんだ」
ヴィルヘルムの叫びに、ロヴィーサは聞こえないと判っていて思わず答えるように呟いてしまった。
ロヴィーサが立っている場所は、ヴィルヘルム達が居る位置からは死角になっていて、見つかる心配はない。
「え、じゃあ。私が誘いを断ったら、ヴィルは嬉しいってこと?」
休日の前日、時にはその数日前になると、とても義務とは思えない様子で必ず何等かの提案をしてくるヴィルヘルムを思い出し、ロヴィーサはその場にしゃがみ込みたい思いに駆られた。
長期の休暇だって、これまでずっと家族ぐるみ一緒に過ごすのが当たり前で。
折々には花もくれるし、贈り物だって、いつも自分で懸命に選んでくれているのを知っている。
「あれじゃあ、判らない、って。でもなんだ、そうなの」
先ほどの会話から察するに、ヴィルヘルムはロヴィーサに対し異性を感じておらず、この婚約に積極的では無いらしい。
「私達も、もう16歳だもんね。好きなひともできよう、ってものか」
ふむふむと頷き、だったら自分に一番に教えて欲しかった、と思いつつロヴィーサはそっとその場を後にした。
「よしよし。その恋、私が応援してあげるからね、ヴィル」
疑問
「ヴィルが恋する相手、かあ。どんなひとなんだろ」
回答
鏡を見ればいいと思います。




