PAGE2 日記
――○月×日
Bに協力してもらって良いマンションに入居できるようになった。
防音もされてるっていうし、眺めもいい!
これなら前の家と違って隣近所から苦情が来ることもないだろう。
一人暮らしには広すぎるけど、まあその分誰か呼べばいい。
――○月××日
実家から荷物が届く。
カップラーメンとか食料品ばっかりだった。
自炊してないってバレてんのかな。
――▲月××日
今日は仕事関係で嫌なことがあった。
「……割と短い感じだな」
内容は本当に日常的なものばかりだ。
面白みも何にもない、仕事については詳しく書かれていない。
日記といえど守秘義務は守っている、そういうことだろうか?
「ん?」
――×月×日
食生活が乏しいと友人たちからご飯の友をオススメされた。
いいやつらだなあ。
俺はシャケフレークがいいな。気に入った銘柄が見つかった!感謝!!
――×月▲日
入院した。
もうあんな思いはしたくないから気をつけよう。
(Bの名前があったが、他の友人の名前が出てこないな……聞いていた感じじゃあ依頼主も親しかったはずなんだが)
たまたまだろうか?
そこが気になったが、ちょうど入院のところまで読んだのだ、考えに耽るのは全て読み終えてからでもいいだろう。
――×月▽日
お気に入りのシャケフレークがない
「……あん?」
確かに、米と味噌汁があったと記載されていた。
そのことからAは食事をしようとしていたことがわかる。
でもそこには、シャケフレークの記載などなかった。
食中毒の原因となった瓶と中身は廃棄されたのかもしれないが、それでも先ほど冷蔵庫を見た際にはシャケフレークの瓶が三つもあったのだ。
それに、いざ飯を食おうとする時になかったからといって、それを日記帳に書くだろうか?
もし俺が書くならば、お気に入りのシャケフレークがなかったから買いに行こう……だとかそういう内容になるはずだ。
ない、それだけを記載する意味はあるのか?
次のページにはもう日付は記載されておらず、書き殴るようにシャケフレークとページ一杯に何度も何度も書かれているではないか。
「うわ」
気持ち悪さに俺は思わず日記帳を手から落としてしまった。
その弾みでページがまた代わり、そこに写真が一枚貼り付けられていることに気がつく。
なんと不自然なことだろうか。
日記帳のずっと後、中途半端なページに無造作に貼られた写真。
俺はそのページをマジマジと見た。
ボンヤリとピンボケしている写真は、動き回る何かを撮影したものらしい。
どうやらそれが人のようだと理解した俺は、目を凝らすようにしてその人物らしいものを見つめた。
「……B……?」
そしてふと、資料の中に入れてあったAとB、そして依頼者三人の写った写真を取り出してそれと見比べ、この写真はBではないのか、という結論に至ったのであった。