第一話
闘技場の中央に設置されたリングの上で、甲冑に身を包んで今日も私は戦っていた。スキルを発動させて相手の生命力を見ると対戦相手はまだ半分以上のライフエネルギーを残していた。私は一呼吸置き肉体強化のスキルを発動させ、体を強化した。兜や甲冑で覆われた私の体の変化を相手は知る由もない。手甲の内側で強化した拳に力を込めて、振り下ろしてきた、剣を紙一重で避け、左の裏拳で剣を制し、がら空きになった胴体に、私は正拳を放った。相手は後ろによろけながら下がった。明らかに決定的なダメージを与えたことを手ごたえからも感じていた。相手のライフエネルギーはまだゼロにはなっていないこと確認し、私は攻撃を畳みかけた。よろめく相手との距離を素早く詰め、体制を整える時間を与えない。左でジャブを二回放ち、相手の顎をめがけてフックを右左と放つ。そして狙いすましてアッパーを入れた。相手は後ろに吹き飛び天を仰いで倒れこんだ。そして、兜の上からは表情を確認することはできなかったが、起き上がることはなかった。勝敗を分かつゴングが鳴り響く。私は今日も勝った。私は観客の声援に手を上げ応え、リングを後にした。
控室に帰り、兜を取り、汗をぬぐった。競技場から聞こえてくる次の試合の歓声が通行口から反響しながら聞こえてくるのをうっすらと聞きながら、手に残る人を殴った感触を感じながら、体内の自然エネルギーを身にまとうスキルをオフにした。このスキル。相手には悪いと思いながら、換金場で賞金を受け取り、私は闘技場を後にした。受け取った賞金を見ながらこれでまたいくらかは生きていけると思った。
「俺には人生の目標がなかった」