プロローグ
ある国同士が戦争をしている。地面の草は焼け、辺りは炎の海だ。この戦争は魔族1つの国に対し、人間、精霊、鬼族や吸血鬼の4つの国だ。
この世界はいくつかの国に分けられている。人間界、魔界、精霊界、神界、鬼界、吸血界、亡霊界、亜人界、森人界、竜人界、山人界の11国だ。この中で1番強い種族はもちろん神界だ。それは基礎能力だけを見た順位にすぎない。戦争とあらば話は変わってくる。どれだけ戦争に向けた準備ができるか、他の国と手を組み協力するかだ。
魔族側は1体1なら絶対に負けない種族だ。だが1つではなかったら話は別。魔族側は徐々に押され、ついには魔界の国境線を超えてしまった。国境線の内側に追い込まれた魔族、一人一人に禍々しい魔力が溢れ出す。
この土地は魔族のものであるため。つまりここは魔族に向いている土地だ。自分達が戦いやすいように作られている場所だ。ここに入った以上は負けることはだいぶ減る。国境線の上に魔法具をあらかじめ置き、魔族が通るとステータスが大幅に上昇し、それ以外が侵入すると弱体化が襲い掛かるようになっている。
戦争は終盤になりつつある。まだ国境線辺りで戦っている。そこに天空から1人の少年が降りてくる。黒い髪に、黒いコート、そして襲い掛かる魔力風。その魔力風に襲われた敵国の前衛部隊は光の如く消える。魔界が誇る最強兵器、破壊神アラティアと魔王べリウスの子。名をシラ。そうシラのご登場だ。子供ながら圧倒的の雰囲気を出し、すべてをチカラでねじ伏せる、化け物だ。
シラは手をかざし1つの魔法を出す。対魔法結界【ザ・イルシス】だ。
「俺から前には1歩足りとも出るな。死ぬぞ」
そう言葉が発されると同時にシラに向かって1本の矢が飛んでくる。その矢を対魔法結界【ザ・イルシス】で受け止める。パリンと音がなり結界がたった1発の矢で射抜かれてしまった。
もう一度結界を張ろうとした次の瞬間、目の前に神々しく輝いた神族らしき者が視界に入った。
「.......の名に命ずる。記憶を一部消し、誰もいない永劫の時に呑まれ、消えな」
そして視界が歪みだす。脳の整理が追いついてきていない様子だ。身体が光に包まれ、足から徐々に消えていく。
「なん.......だ………名が聞こえていないのに……なぜ命ずることが……」
シラの身体は完全に消えてしまった。先程までいた神族らしき姿が消えていた。魔族は武具などを手から落とし、膝を落とす者もいた。王家の血が流れる者が消え、愕然としている。もうここで戦争が終わったのかと思われるほどに周りは静まり返った。
「シラ様が……」
「もう終わりだ……」
などという声があちらこちらで聞こえる。それを見た人間側はやる気が伏せたのか国境線の外側に歩いていく。そして敵国のリーダーの勇者がこういった。
「すぐに撤退だ。魔族になにが起きたのか。あの男を殺すほどの者がまだ潜んでいるかもしれぬ」
それを聞いた人間、精霊、鬼族、吸血鬼は手を引く。
そしてこの戦争は多くの犠牲者を出し、王家の血をながす者が1人死亡という結果に幕を閉じた。