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Change the world-窮屈な世界  作者: 糸面
3/3

第3話 動き出す運命

こんにちは

またもや説明ばかりになっていますが楽しんで頂けるなら幸いです

 

 気がつくとそこは自宅であるマンションのベッドの上だった。いつもよくやってしまう光景であり、ゲームをやりながらそのまま寝てしまい気がつくとログアウトしていて、ベットに着替えず寝っ転がり朝を迎える。…11時30分を午前中と捉えるなら朝としても捉えていいはずなので間違ってはいないはずである。

 昨日はいつも通り[Over world]をプレイしていたはずだが…他に何かやった気がする。

 それにしても今思うに、あの[Over world]はこのご時世店に並ばないと買えない珍しいゲームだと思う、バーチャル空間にダウンロードすることはできるが専用ハードを経由しないと出来ないというのも珍しい

 その珍しさから興味を惹かれたと言うのもあるかもしれない…珍しい…そうだ!俺は今までロボットに乗っていた。と言うことは、これは夢か…バーチャル空間を利用してからやたらとリアルな夢を見てしまう。症状名は確か、現実追従型明晰夢だったか…新たな生活習慣病として認定されてたはずだが、俺もその症状が出てきたのは初めてだった。


 夢と分かれば目覚めればいいだけだが…どう目覚めるのか…夢かと思い頬を引っ張るのはある意味お約束だろうから頬を引っ張ると無事目が覚めた。

 知らない天井が見えるので仰向けで寝ていたらしく、辺りを見渡すとどうやらどこかの医務室に見える。学校の保健室や病院よりもはるかに高機能化されているので一般的な光景ではなさそうだ。


 ここがどこなのだろうかと考えていると、左手のあたりに何やら生暖かいものが当たったことに気がつく

 触れたところを見るとふわりとした長い金髪が特徴的で西洋風の整った顔立ちをしたアンジェリカが自分の腕を枕代わりにして眠っている。よほど疲れているらしく俺が起きても気が付いていないようである。

 俺はどれくらいの間眠っていたかと、対面にある壁にかけられた時計の針を見ると日付を跨ぎ、午前4時過ぎであった。

 サブプラットフォーム施設に到着したのは確か昨日の19時前後だったはずであり、7時間ほど眠っていてかなりの時間寝ていたことがわかるが、やはり体の疲れは取れていないようで体の節々が強張っていた。

 仰向けのまま自分の体の状態を確認していると、ウィーンと部屋の自動ドアが開く音がした。

「あら起きてたのね、起こしちゃダメよ。彼女君のことが心配でずっと離れなかったんですよ。」

 部屋に入ってきた見るからに妙齢の女性は、白衣を着ていて風貌からしてかなり若いドクターであろう予想が付く


 彼女はアンジェリカさんのことを知っているようであり、彼女の部隊の基地か施設のような場所ではないかと察せられる。

 アンジェリカは俺が寝ている間ずっと看病してくれてたのかな…いや待て、俺は生まれてこのかた女性からここまでの施しを受けたことがない

 そう考え出すと人生にもう2度とないだろう体験を堪能したい気持ちが芽生えそうになったその時、俺の左腕あたりに頭を垂れていたアンジェリカが「うーん」と唸りを上げ目を覚ました。もう少し堪能していたかった気持ちと、危ない気持ちにならなくて良かったという気持ちが混同して、総合的に目覚めてくれて良かったと結論が出た。

「おはよう、起きてたのね。…ごめんなさいッ!私…貴方に無理させちゃったわ。一般人だったのに…」

 白いIRと対峙した後、そのままコックピットで倒れたものだから彼女は俺に無理をさせていたと思っていたらしい。倒れたのは恐らく…俺自身が原因だろうし…

「いやいや、大丈夫ですよ。あの情況なら助かる方法はあれ以外方法はなかったですし、倒れたのも機体を動かしたせいではありません」

 俺たちが起きたところでドクターらしき妙齢の女性は壁にかけられた受話器らしきものを手に取り、通信をしているが、恐らく内線の類だろう。


 通信から間髪入れずまたドアが開き、いかにもな風貌の男性が部屋へと入ってくる。姿を見せたのは銀色の髪が耳までの長さで整えられていて、無精髭を生やしたナイスミドルな男性であり、ここの施設のトップかその存在に近しい人物だと言うことは服装から想像に難くない。

「おはようございます司令!」

 まず初めにアンジェリカが立ち上がり敬礼をしていた。その姿に応えるように手を挙げ、楽にするように言われたアンジェリカは、後ろで腕を組む体制となった。

「おはよう、朝早くにすまないね。調子はどうかな?」

「ツバサくんこちらは、私たち[イーグルアイ]の最高責任者のグレゴリー・ダイダロス総司令よ」

 アンジェリカさんは初対面である俺のために説明してくれた。偉いだろうと思っていたがアンジェリカさんの部隊で一番偉い人だったのか…失礼はしないようにと思っていたがより一層注意しないといけないだろう

「はい、おかげさまで今のところ問題はありません」

「うむ…それは結構、コックピットで倒れたと聞いて、断りを入れる前に体を一通り調べさせてもらったんだが、わかったことが少し疲労が溜まっている程度だったもので大事ではないと思いはしたが…念のため直接顔を見に来たが顔色もいいし元気があって羨ましい限りではないか」

「それは…わざわざ申し訳ありません。」

「案ずるな。それに、付きっきりの看病をしていたのはアマルガム中尉だ。礼を言うならまずそちらではないかな?」

 総司令の言葉を聞き、確かに献身的に看病してくれたアンジェリカにお礼の一つも言えていなかった。

「アンジェリカさん!…その…倒れた俺の看病ありがとうございます!」

「いいのよ、私がしたくてしただけだし、それに君には助けられたもの」

 俺もアンジェリカも少しもじもじとなってしまい、周りからしたら背中が痒くなりそうな雰囲気となってしまっているだろう

「ゴホン…早速で悪いがここから本題に入ろう」

 ナイスミドルな総司令の咳払いで先ほどまでの青々しい雰囲気は打ち消されかなり真面目な話になりそうな雰囲気を醸し出していた。


「君の体を調べさせてもらった時、君の体の生態データでIRの模擬戦闘をしてみたところ君1人で一個師団が壊滅した。もちろん諸々の細かい条件は省いているので単純な目安にしかならんがね」

「そう…なんですね…」

 その言葉の意味を俺はあまり理解できていなかった。一個師団といったらまず初めに、[Over world]の中にある1〜10人VS200人のパーティ用戦闘システムて[VS一個師団]というものがあったことを思い出した。

 人間換算で200人前後の人間の計算をIRに変換する方法はよくわからないが、人間VS人間は経験はしたことがあった。事実パーティ用の戦闘であった[VS一個師団]を一人でクリアすることは割と余力を残してクリア出来てきたからである。もしかしたら難易度そのものは変わらないかもしれないが、まったくの別物かもしれないので俺からは何も言わなくてもいいだろうと思った。

 しかしそのような情報を出してきてどういう意図があるのだろうと思っていたが、その答えは俺の予想の斜め上であった。

「単刀直入に言おう、君を我が部隊に推薦しようと思う」

「俺を…自分を、ですか?」

 俺からすればかなり突拍子もない発言であったが、総司令の斜め後ろに控えているアンジェリカを見ると、ウンウンと頷いていて、まるで入隊して当然だろうと思っているような雰囲気である。

「自分は…ただの学生ですよ?そんな子供が軍隊に入ったら迷惑になると思います…」

「そうだな…ただの子供ならそうだったろうが、アマルガム中尉のIRに残っていた君の戦闘データは我が軍のエース級だった。肉体そのものの筋肉もどういうわけか戦い慣れしている。このまま入隊したところで誰も文句は言うまい、それに私の推薦もある。どうだ?やってみる価値はあると思うが」

 どう?って言われても、ここで「無理です」なんて言える雰囲気じゃない…いや断る気はないが…なるほど、この事を見通してアンジェリカさんは機密に近い情報を俺なんかに教えたのか…アンジェリカさんはこのことを見越していたとしたら意外と計算高いかもしれない

 ただそうなると父さんと母さんは…海外か…


 俺の両親は、高校に上がったばかりの俺を日本に残して海外に行ってしまった。

 俺のために学生1人としては充分すぎる金と、父さんが買い取ったマンションの一室を残して俺の前から両親は姿を消した。

 何か理由があるにしても何も言わずに俺を残して出ていった親のことは考えないようにしていたが、人生の分岐点を迎えるかもしれない俺はごく一般的な学生が思うように「親はどう思うか」という考えに至っていた。


「その、自分なんかで良ければ…是非!お願いします!」

 仮に親がいたとしてもこの答えは変わっていないだろう。自分の選択、自分の人生、どんなことでも悔いのないように生きることがベストに感じる。

「そうか、入隊してくれるか…力を持つものはそれ相応の生き方をせねばならない…君にはその力がある。盛大に歓迎しよう!ようこそ我が[イーグルアイ]へ」

 部屋にいたアンジェリカさんとドクターらしき女性は拍手で俺を迎えてくれた。少数でも祝われると少し小恥ずかしい気分になる。

「実は嫌がっても入隊させる気でいたから君の機体は既に決まっていてな。こっちだ、ついて来い」

 俺は総司令の言葉に苦笑いしながら後をついて行く、無論馴染みの隊員ということでアンジェリカさんも一緒だ


 扉を出るとそこは一見すると広めの大学病院に見えた。全体的に清潔感のある白を基調としており、中央に位置する移動床がよく使われるのか少し傷がついている程度でかなり新しく感じる。

 総司令が移動床になるのでしばらくそのまま付いていくと、右に配置された窓から景色は一変する。巨大な空間に整列された巨大なロボットIRの格納庫であったからだ

「ここはね、私たち[イーグルアイ]の本部[黒の巣]よ。太平洋に孤島を建築してそこに基地を作ってまだ半年だったわね」

 半年前か…半年前と言ったら俺からすると[Over world]の発売日だった記憶ぐらいしかないからそれからするとかなり新しい基地なのだろう

「でも[イーグルアイ]は新設されて間もないってことでもないのですよね?」

「そうね、15年前のイカロスプロジェクトから作られた組織だから新設ではないけど新しいことには変わらないわね」

 なるほど、[イーグルアイ]は盗まれた対IR用の組織ってことか


 アンジェリカさんと話をしているとまた景色は変わる。今度は[ラボラトリー05]書かれた扉としばらくして[ラボラトリー04]と5番から順に扉に書かれた数が下っていっていき、最後に[ラボラトリー01]の扉を超えたあたりで総司令が立ち止まる。

「ここだ」

 立ち止まったのは何も書かれていないエレベーターであり、感覚だがIRを乗せたトレーラーが丸々入るくらい大きさのように思える。

 かなりの広さの建物らしくここまで来るのにかなりの移動距離に感じる。実際巨大ロボットの保管場所は場所を取るのだろう、それを考えると元々の陸地ではなく海に陸地を作ったのは広大な広さからの結果なのだろう

「あの総司令、質問ですがこのエレベーターは使われていない倉庫に通じていると聞いていたのですが、どういった経緯で」

 と、アンジェリカは総司令に聞いている。アンジェリカさんからしても不可解に感じたのだろう

「うむ、使われていない倉庫はその通りだろう。何せ誰にも満足に扱われぬまま放置されていたのだからな」

 総司令の言葉を聞き、アンジェリカは少しばかり考えて「もしや」と何か閃いたような顔になった。

「察しがいいな、アマルガム中尉。そのもしかしてだ」

 アンジェリカさんは今から見るものを気づいたのだろう様子でなるほどと、納得していた。

 そのままエレベーターで下がり、程なくして目的地に着いたようでドアが開く

 着いたのは大部屋で暗く、長く使われていないようで少し埃っぽい印象を感じる。

 人が入ったことによりセンサーが反応し大部屋の中央がライトアップされた。


「これ…は…」

 俺が見たものはコックピットに乗っていて最後に見たあの白を基調とした機体[プロトタイプイカロス]に非常に酷似した機体

「[IR.r.(アイアールツー)イカロス]君の機体だ」



最後まで読んで頂き誠に有難うございます。

誰も運命から逃れられないようにこの主人公もまた運命に突き進んでいきます。

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