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97:勇者追放

暗い色合いの装束をまとったミーリアが、言葉通り申し訳なさそうに頭を下げている。


「あの、申し訳ないのですが、グレンガ殿……」


末席とはいえ貴族なのだ。

いかに力が強かろうと、素性も知れぬ旅の冒険者に対し、そこまでへりくだる必要はない。


「いえ、謝ることではないわ、ミーリア。」


闇装備に身を包んだカーマインも、腕を組んで冷ややかな目線を送っている。

つい数日前に闇覚醒したばかりのアカツキも、主以上に厳しい目つきだ。


「大体、こんなふしだらな男をあるじのそばに近づけたのが間違いですよ、汚らわしい。」


くくく、自分に向けられるのでなければ、あんな眼も悪くない。


「というわけだ、グレンガ。

すまないが、お前は俺たちに近づくことは許されん。

出禁、いや、追放だぁ!!」


ばさり、と芝居がかった身振りとともに宣告する。


「な、なんだよ。

俺は、みんなのことを守ってきたじゃねえか。

アルトもミーリアも、パワーレベリングが即おわったのは俺のおかげだろ!?」


グレンガが、こぶしを握って訴えてくる。


「ああ、そうだな。

グレンガのおかげだ。

感謝してるよ。」


だが、お前とは一緒にいられない。


「悪いが、我々が感謝の言葉を述べていられるうちに立ち去るのがいいんじゃないか、勇者殿よ。」


クルスからの一言が、俺たちからの最後の言葉だった。


だって、仕方がないだろ!?


グレンガのそばにいると、夜もうかうか寝ていられねぇ。


マッチングが始まると、化け物みたいな連中が次から次へと入れ代わり立ち代わりゲートから現れて、見境なく魔道大戦引き起こしていくんだ。


「ねえギル、パズ&ダズのランキングバトルってこんななの?」


「ゲームでやってた時は、単なるPVPだったぜ?」


「そんなこと、いまさら聞いてないわよ。」


「こんな、って何のことだよ。」


「いろいろよ。

どうやっても普通のニンゲンに見えない連中がプレイヤーだったりとか、周りを巻き込むのをまったく気にしてないところとか。」


正直、俺も人のことは言えない。

こっちのパズ&ダズのランキング上位は、人間種を普通に強化したところで、土俵に上がれない。

前にも言ったが、戦闘力以外の面でも、痛みとか生理現象とか、普通に生きるだけでも過酷すぎるのだ。

グレンガが特殊なのだ。


そして、マッチングバトルでは一戦ごとにまったく違う場所と相手だった。

基本的に同じ相手や場所で二度と出会うこともなかったし、そのまた周囲の状況など、単なる背景でしかない。


その世界の背景の一部になってみてはじめて、俺も開いた口がふさがらないってとこだ。


結局、問題はその相手の強度が尋常ではないことで、つまりグレンガのレベルが高すぎるのだ。


現れる連中が連れているのは、上位悪魔グレーターデモンズ混沌ケイオスの軍勢、龍に巨獣に大精霊に。

伝説級のレアものばかり、見た目が地味な奴なんて大体は余計にたちが悪い。

一見無害そうな奴ほど攻撃がド派手で残酷なのはお約束、てな。


グレンガは俺を守ると言っていたし、実際そのように立ち回ってはいたが、キルリア領には焼け野原や荒れ地が広がりつつあった。

魔獣を追い払ったあと、それ以上にやっかいな連中を呼び込んでしまっているのだ。


キルリア領の人間たちには、グレンガが恐ろしい異界からの侵略者を撃退しているように説明しているものの、ごまかすのも限界がある。

俺が復興支援と称して金や資材をばらまいているが、とんだマッチポンプ、いや、復興よりも被災のペースが早いのでは災厄でしかない。


流れ弾での死傷を防ぐため、カーマインはとりあえず手持ちの闇精霊たちを盾役として即戦力にする必要があった。

装備も、闇系ならば一通り俺が提供できる。

進化や育成材料も、なぜだか緑二号が準備済みだった。


その精霊たちを扱うカーマインも、やはり闇を選ぶことになる。

ルビームーンが猛反対するかと思ったが、カーマインがそばに立って「アカツキ、一緒に来てくれる?」とかなんとか二人でやっていたかと思ったら、ルビームーンめ、「さっさと素材をよこせ」ときたもんだ。


ルビームーンバルキリー=ダークサイドは、エピソードのからみで優遇強化されていた。

順当に強力な精霊なんだが…… 本当にコイツ、連れまわしていて大丈夫か?


トレスティンも、とりあえずの強化のために闇系装備で固めている。

緻密な守りこそ、闇の精髄なのだよ。

って、気づいたら闇の軍団みたいになってるじゃねーか、俺以外。


そして、闇の軍団から、接近禁止令を出されたグレンガであった。


「カーマインさま……

本当にこれで、良かったのでしょうか……」


ミーリアが心配そうに問いかける。


「大丈夫、ちょっと追放してみたかっただけだから。」


カーマインの明るい態度にも、ミーリアの顔はくもったままだ。

残念ながら、そのネタは通じていないようだぞ?


ま、次に合流するのは王都だ。

サッサとイベを終えて、そしたら俺は、超転生の身体からさらに新たなる不死体を目指すんだ……


よーし、やるぞぉ!


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