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84:火葬

手札を切らせて様子見と思っていたが、グレンガは案外柔軟で小回りの利くタイプだった。

おまけに、しれっと盤外戦術まで仕込んできやがる。


待てよ。

そうなると、最初のゲイボルグ・コアこそ、こちらを誘導するための見せ技だったのかもしれん。

むむ。


冥蜂ハデュサルビー無名闇ネイムレスらの精霊召喚も、俺自身の分体展開も、単体火力極振り対策のピンポイントな守備的カード。


分体が削られていくのも想定の範囲内とはいえ、こちらの魔力消費の方がやや大きい状況になっている。

この展開まで相手の誘導だとしたら……?


仕方あるまい。

なりふり構っていられんか。


分散してチマチマと遠方から狙撃を行っていた残る三体の分体を、再び集合、合身させる。

ステータスは回復するが、魔力と耐久力は減っている。

見た目も骨の身体に戻る。


分体の術、正しくは五芒闇炎星クインティプロミネンスというスキル名なのだが、この術は、五体がそれぞれに独立して行動することが可能だ。


が、一体当たりの火力や効果はかなり落ちていて、全弾ヒットさせても元の本体の火力に対して等倍に届かない。


同時攻撃で命中させやすいとか対消滅タイプの魔力障壁を削りやすいといった効果が、あることはある。


しかし、多段ヒットの効果を持つ普通の攻撃スキルはいくらでもあるから、消費する魔力量と見合わない。


何かと貧乏性の気がある俺が、あえて分体の術を使ったかと言えば。


一体の骸骨に戻った俺の方へ、赤槍をしごきながらグレンガがやってくる。


「やっと鬼ごっこは終わりかよ。」


軽口をたたきながらも、密かに魔力を高めている。

そぶりも見せずに、エンハンスを発動させているのだ。


隠蔽の使い方、かなーりうめえじゃねぇか。

こいつ、案外別の顔でアサシンあたりでもやってんのか。


だが、そのルートはキルゾーン、だぜ。


「トラップカード発動、ってなもんだ。喰らうがいい、闇爆連鎖ぁ!」


闇爆連鎖チェインネガリアクタとは。

闇+火系精霊術の爆砕波を呪符の形で多数準備し、一定のルールに従って配置、発動させることによって、火力の面でも追加打撃の面でもコンボを発生させる俺のオリジナル技なのだ!!


なお、厳密にはスキルではなく、つまり自称だ。


分体は確かに火力が落ちる。

だが、アイテムを使ったり準備する分には、単純に五倍の手数となる。


呪符のコスト?

もちろん安くはない。

一般的には、な。


だが、俺が創り上げた常闇の森は、魔力や素材を勝手に生成し続ける半永久機関でもある。

野良精霊や魔獣たちが暮らしていくのに十二分な規模となったあとも、俺は少々作り込みすぎてしまってな。

つまり、魔力や素材は余るようになっていた。


勿体無いから、余った魔力を余った素材と合わせて種々の消費アイテムを製作、さらにそれを組み合わせ続けて高位の呪符の形で溜め込んできたのだ。


しかし、だ。

貯まったまま、使わないのはなおさら勿体無い、だろう?

心置きなく使える場面を待ちわびていたのだよ。


そして俺は、落ち物パズルにハマっていた時期もあってな。

仕掛けた呪符は四十七、最初の三手は誘導、そこからは回避不能の地獄連鎖だ……!


「こ、コノヤロー!

マトモに勝負しろって、言ってんだろがぁーっ!!」


グレンガは、粘りつくような闇の煙と焼き焦げた砂塵が舞う中、光の粒子に還元されていった。

お前にふさわしく、派手に焚き上げてやったんだ、成仏しろよ。


にしても、十二発分はちょっとしたスキルの展開で相殺しやがったか。

大したもんだ。


ま、こんな手が通じるのは一度きりだ。

この類いの仕掛けに対策するのは、難しくない。


課金上等のハメ技やゴリ押しだけで勝ち抜けるようなゲームなら、パズ&ダズは何年も生き残ってなどいまい。


ただ、お互いがガチガチの耐性固めて殴り合うとなると、マッチングバトルは千日手まではいかないものの、えらく時間のかかるものとなる。


マッチングバトルは、報酬をねらうならばイベント期間中にかなりの回数をこなす必要がある。

そこは暗黙の了解で、火力重視か特効無効化など、読み合いで負けたなら瞬殺も受け入れてさっさと次に向かうという文化がある。


これ即周回すなわちしゅうかい、だな。


俺も、これまでのマッチングバトルではそうしてきた。

だが、この戦いは。


「なあ、バーミィ。」


「なんですか、マスター。」


「いや、お前の主人は今はトレスティンだろ。」


「いえ、この者とは力を貸すという契約をしただけであって、主従などありませんよ。

むしろ僕が主でこやつが従者、ですニャ。

言うこと聞かない下僕で困りますニャ。」


おい。


「それを言うならば、お前だって俺の契約する精霊ではないぞ?」


「何を言っているのですかニャ。

マスターと僕は、次元を超えた主従ですニャ。

こっちに召喚される前から、とっくに契約済みですニャ。」


あっそ。

お前のことはどうでもいいのだが……


「トレスティン、大丈夫か……?」


なんか、さっきから静かなんだが。



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