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83︰亡骸

よく分からないままNPCをやってしまったが、助けたはずのクルスがなんだか固まっている。


みると、マインドブラストを食らったそのNPCが、ミイラ化した顔でクルスに抱きついたような格好になっていた。


す、すまん。

こんなん抱きつかれたら、俺が生身の頃なら絶叫してるわ。


今はもう見慣れた風景だけど。

なんならこいつも加工してアンデッドの素体にしようかってくらい。

うん。

結構強そうな人間だったからな。

アンデッドとしてもいろいろ育成ルートはありそうだな……


と、クルスに声をかける前に、別の声が耳に入ってきた。


「に、兄さん……?」


トレスティンか。

無事だったようだな。

人化してないどころか炎の柱の形なのに、あっさりバレてしまったか。

バーミィが伝えたのか……?


そんなことを考えながら近づいていったが、トレスティンはクルスたちの方を凝視したままこちらに顔も向けない。


クルスが、NPCの身体を横にのけて立ち上がる。

そっと地面に抱き下ろすような丁寧な扱いだ。

なんだ?

死体に驚いてたのかと思ったら、そうでもなかったらしい。


え、なんか魔力が立ち上がる……。

どうして杖を俺に向ける……?

あれ、俺はお前を助けたんじゃなかったか……?


「その黒の炎柱、高位の闇精霊術か。

人間の術者の到れるレベルではないね。」


なんか凛々しい顔でこっちを睨んでくる。

トレスティンも、俺に向かってなんか呟いてる。

んん?


「このバケモノが、兄さんを……」


え、兄さんって、俺のことじゃない……?


「悪魔か死者の王か、あなたに怨みはないけれど、この少年には借りがあってね。

このまま見過ごすわけには、いかないんだ。」


クルスが、完全に戦闘態勢だ。

んー、この姿だが、ギルだとバラしたほうがいいのか?

どうなんだ、カーマイン……

意見を求めたいが、横たわったままだ。


対応に迷っていると、上空から赤黒い一閃。

バスン。

ゲイボルグの一撃が、俺の分体の一つを消し飛ばす。

ほほう、コアでのパイルバンカーでなくとも、この分体を一撃か。


貫通特化だけではなく、地力もきっちり上げてあるな。

そして、俺の精霊に追い回されながらも、複数のエンハンスを積み上げていた。

時間を稼いでいたのは、こちらだけではなかったということか。


パイルバンカーはクールタイム的に一戦闘にせいぜい二発が限度だが、エンハンスと通常攻撃の組み合わせなら、うまいことやりくりすれば七、八発は繰り出せるだろう。

分体を狩りきって釣りがくる計算だ。


きっちり一撃で必要な火力を見積もってあるあたり、油断もない。

相手にとって不足はない。


俺はニヤリと笑い……といっても顔はないんだが、再びグレンガと対峙する。

悪いなクルス。

お前さんの誤解を解くのは、後回しにさせてもらう。

誤解を解くのが面倒だってわけじゃねーぜ……!


最初に召喚した二体の精霊は削りきられてしまったが、その間に続けて何体か召喚できる準備ができている。

こちらは分体を展開していて一撃死はない。

ここは向こうの手札を先に切らせて様子見か。


「てめぇ、よくも俺のアルトクリフを!」


グレンガが、叫び声を上げる。


なん……だと?


「ようやく役に立つと思ったら、いきなり墜としやがって!」


俺が魂を刈り取ったそいつ、高レアアルトなのか……?


白銀の鎧をまとった騎士らしき死体を見下ろす。


「アルトクリフか。

強さだけなら、お前はもっと手札があるだろう。

何が狙いだ…?」


「ふーん。

その言い方からすると、トレスティンがドロップするのにアルトクリフは必須じゃねぇってことか?

何が条件だ?

トレスティン本体はトレードできねえだろうが、その情報を売ってくれんなら、そのアルトクリフをくれてやっても構わんぞ。」


ふぅむ。

意外な展開だな。

聖鎧アルトクリフか。

光属性だから俺のデッキにはまったく不要なのだが、カーマインが欲しがってた奴だよな。


だが、グレンガの次元から連れて来たキャラだからな。

こっちにも本来のアルトクリフがいるとすると、ややこしいことになりそうではある……。


だいたい、トレスティンがなんで俺のところに来たか知らねーし、俺の契約してる精霊でもないし。


「ふん。悪いが、そんな条件は知らんな。」


「そうかよ。

それじゃ、あんたを倒してから、直接『交渉』の続きをさせてもらうとするか。」


バスン。

再び、炎の分体の一つが消し飛ばされ、残るは三体。

きっちりとエンハンスのクールタイムを計ってやがったな。

脳筋ぽい構築してるわりには、案外チマチマした戦術を使いやがる。





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