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66︰vsバーミィ

光と爆音、それに獣の声が途切れることなく続いている。


「この魔獣たちは、僕が夜の闇に帰しまーす。

どうか、傷つけないでくださーい。」


バーミィの呼びかけにも反応がないまま、攻撃が続けられている。


……バーミィも、本気で呼びかけてる感じでもないな。

ちゃんと呼びかけましたよ? そろそろやっちゃっていいですか? みたいな空気を感じる。


一方の騎士団や衛兵たちはというと、目は血走り、呼吸は荒く、必死になって攻撃を繰り広げている。

おいおい、闇の魔力に当てられて狂騒状態か。


魔獣たちはバーミィの手下に成り下がって、特に暴れているわけではないのだがな。

さりとて、広場の外まであふれ出した闇の魔力は一般人にはヤバイシロモノだ。

このままじゃ、市民の退避もままならんが、さてどうしたもんか……


「やはりそういうことか、闇の眷属よ!

月に代わりて銀砂に還す!」


一方的な叫びと共に、強烈な白銀の光が目に入る。

なんだよ……

ルビームーン、戦線に出ちまってるじゃねーか……。


美しき戦乙女が掲げるのは、円の一角がわずかに欠けたような、巨大で異形の三日月の刃。

あれは月輪点睛がちりんてんせい……ムーンの専用装備だな。


円のきらめきが、音もなく空をはしる。

月の瞳が、虚空を穿つ!


バーミィも、さすがに初見ではさばききれないだろ。

何体もの蝙蝠や烏の魔獣、夜の蟲や悪霊の類が一瞬のうちに切り裂かれ、光の粒となって消滅していく。


「あ、アカツキ…… よくも、僕の魔獣たちを!」


さして悔しそうでもないが、口実を得てやる気満々のバーミィ。

二人の戦いが、始まった。


勢いに任せて精霊たちの怒涛の奔流を浴びせかけるバーミィ。

吹っ飛ぶルビームーン。

ホロホロとその身体が光の粒子に変わっていく。


始まった、と同時に終わっていた。

あーあ。


ま、多少強化して専用装備借りたからって、それだけで正面からバーミィとやり合えるわけねーか。


それに、こんだけ敵の数が多いんだ。

単発火力で魔力を雑に消費するのは悪手だな。

指揮も悪い。


対ボス戦で初手から大技をぶっ放したものの雑魚を削ったにすぎず、直後の硬直でサクッと刈り取られる、そんな展開だった。


精霊がやられると、精霊術師の方にも霊的な消耗が及ぶ。

カーマインが、苦しそうな表情を浮かべながら駆け寄っていく。


「くっ……、アカツキ、大丈夫……?」


「あ、あるじ……、お役に立てず……」


人型の光が、崩れていく。

カーマインが、手を伸ばして叫ぶ。


「アカツキーっ!」


あとですぐ帰ってくるから心配すんな。

で、本命か。


「バーミィ、そいつの力を見極めたい。

できるか。」


「お任せあれ!」


カーマインの前に立ちはだかるのは、魔法使いとサテュルヌス。

初手からサテュルヌスの氷環が一閃、二閃、三閃。


おうおう、攻撃回数増加を重ねてんのか。

高コストの付加特性だが、火力や消費魔力を調整しやすく、汎用性ありまくりの構築だ。


あのレベルのバルキリーに三発食らったら、中級精霊でも落とされる。

バーミィの脇に備えていた、盾役のヘルハウンドトータスが沈む。

ギリギリ削り切れるターゲットを狙ってくるあたり、分かってるね。


とはいえ。


再びバーミィの精霊怒涛。

いや、この技ヤバイだろ。

いろんな属性取り混ぜての遠中距離集中砲火。


無属性高守備のバルキリーといえど、それだけでは保たんぞ。

さあ、どう出る、魔法使い。

まだ隠し玉、あるんだろ……?


サテュルヌスは、ジリジリと削られていく。

バフはもらってるみたいだが……


と、魔法使いが何かを発動させた。

召喚か。


「我は王、君臨し蹂躙せしもの、来たれ天界の城よ!」


夜空に無数の細い雷がまるでシャワーのように。

中には、龍のようにうねるものもいやがる。

わあ、龍の住処だぁ……


いやいや、待って、なんかそれはイカン奴だ。

稲光に照らされ、浮遊する城が空中に出現する。

うわぁ、シュプリの城だ、本当にあったんだぁ……って。


それはソシャゲとコラボするような作品じゃねーだろ、勝手にやったら怒られるヤツだろ。


しかも、視線を下ろせばそこには飛龍。

魔法使いが、龍にまたがって離陸するところだった。

なに?

なんで魔法使いがドラゴンライダー?


困惑の中で再び空を見上げると、頭上の城の下部には、いかにも火力を溜めてます的な雷球が生まれている。


意味が分からんが、もういい、そこまでだ。

俺は影に潜り、バーミィと向きあえる場所まで跳んだ。


「闇より来たりし者よ、暗がりへ帰れ!」


派手めの一撃を、バーミィに放つ。

どかーん、と大きな音がして、バーミィの周りから大きな衝撃が走る。


「うわー、やられたー。」


もうちっと頑張れや!

バーミィの適当な演技に軽く苛立ちを覚えつつ、俺は勝利めいたポーズを取ってみせた。

バーミィが降伏し、戦闘終了。


どうだ。


ドクン、と大きな脈動を感じる。

よし!


そう、雑な流れではあるが、形の上ではトレスティンを倒したのだ。

カーマインが行き詰っていた、例のエピソードを、俺たちは突破したんだよ……!



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