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60:プレイ

ミーリア嬢のリアクション、どっちも気になるじゃねーか。


俺がどっちから話を聞こうかと迷っているうちに、ミーリアはポツリポツリと語り始めた。


「私は……貴族の娘としては恥ずかしいのですが……こういったお店には詳しくないので……異性のエスコートで地位の高い料理店に行くのだと、伝えました……」


分からんことを分からんと言い、困っているときにそれを伝えて助けを求められるというのは、ある意味で強さだ。


貴族にも立ち位置でいろいろな人種がいるだろうが、ミーリアは、他者を信頼すべきものとして、王道に基づき育てられてきたのだ。


「ならばまかせなさいと、その女性はおっしゃいました。

魔道具のベッドに横になると、さまざまな道具や薬草を使って施術をしていきました。

私は初めて見るような魔道具ばかりでした。

あまりに気持ちがよくて、途中で眠ってしまったのですが……」


無理もあるまい。

少人数でこの王都まで、盗賊だの魔獣だのに襲われながら、馬車の故障をごまかしつつ旅をしてきたのだ。

いくらかでも疲れが癒せたのなら、行かせたかいがあったというものだ。


「目が覚めると、何と言いますか、身体がとても元気に……健康になっているのを感じました。」


良いことじゃないか。

なぜミーリアが顔を赤らめて、下を向く必要がある……?

俺が不思議に思っていると、話は感心できん方に進んでいった。


「女性はおっしゃいました。

今夜のあなたは敵なしだ、どんな男も少し近づいて腕でも組めば一撃だと……

おそらく今日は帰りが遅くなるから、家に連絡をしておきなさいと……」


おい。

いや、俺が聞きたかったのはそういうことではなく……。

ミーリアは、上目遣いでにらみながら、問いかけてきた。


「ギル殿は、こういう施術になるだろうと分かっていてあのお店に私を連れて行ったのですか……?

そのうえ、私の口からこんなことをわざわざ説明させて……

でも、カイバル卿との間を応援するなどと……

もう、私には訳が分かりません……」


おかしなプレイを強要したみたいになってるじゃねーか!

こっちが涙目になるっつーの……


「ち、違うんだ、その施術は特別なものなのだ。

俺は純粋に術を使う者として興味を持っただけであってだな……」


術師が疲れた顔で間に入り、ようやく次の話に移ることができたのは、小一時間が過ぎた後だった。


「我が領地は現在、広範囲にわたり魔獣の襲撃に脅かされています。

カイバル卿のつてをお借りして、王都軍を我が領地に派遣していただくことが、ミーリア様の使命でした。」


ふむ。


「ところが、カイバル卿の力添えは不要とギル殿はおっしゃいました。

その通りなのでしょうが、できれば速やかにそちらのお話も進めていただければと……。」


俺が引き取ったのは、そういう話になるってことか。

そこへ、少し落ち着いたミーリアも、会話に復帰してきた。


「本来ならば、本家の領主が派遣の依頼に出向くべきなのでしょうが、戦線を維持するために主要な方々は皆手が離せないのです。

……いえ、私がこのような任務をいただくこと自体、カイバル卿の好意を利用せよということなのでしょうが……」


なるほど、そういう意味では政略か。


ま、魔獣の駆除が最終目標ならば、過程はともかく俺でもなんとかなる。

ぶっちゃけ、王都軍など不要だ。

だから、その点は安心していいだろう。


とはいえ、俺が自前の戦力だけでキルリア領を援護しきってしまうのも、それはそれで問題だな。

王都軍を差し置いて、他国の貴族の力を借りたことになってしまうのは、まずかろう。

となると、形だけでも王都軍に動いてもらう必要があるか。


仕方あるまい、早速だが、俺の切り札を使うとしよう。

王都の奥、どの城門からも離れた一角に、その存在を感じている。

俺の緑二号。

ちょっと王都軍団長あたりにさぁ、ナシつけてくんないかなー、ってな。


と、思案を巡らせているところで、心臓の結晶に大きな力が溜まるのを感じた。


そういえば、バーミィには、王都に入った後もまだ連絡を取っていない。

単に俺が忘れていただけだが、この数時間で、すでに何度かイベのクエストクリア報酬を受け取っている感触はあった。


それだけカーマインと主人公の魔法使いが順調にクエストをこなしているということだから、特に問題は発生していないだろう。


ちなみにこれは、寄生ではない。

俺の出番はこれからだからな……! 

ギル先生の次回の活躍をお楽しみに、ってそれじゃいかん。


さておき、今回の魔力の溜まり方は、これまでよりも格段に大きい。

おそらく、章の区切りみたいなものを超えたのだろう。


だとしたら、意外と展開が早い。

主人公が王都で一定の地位を得るまで、一日か二日はかかるだろうと話していたのだがな。


次のシナリオでは、冒頭で魔獣駆除の依頼を受け、いったん王都を出て、周辺の土地を回る内容だったはずだ。


戦闘なら俺も関与できるから、合流する理由が立つ。

いつまでもあの二人を一緒にしておくわけにはいかんからな。

その意味では、ここまでの展開があっさり早かったのはよかったかもしれん。

俺は、ポジティブ思考だからな。


よし。

目の前の問題に戻ろう。


いや待て、魔獣駆除?

その話題は、どこかで聞いた気がするな。


いつだ?

……今だろ。



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