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49:野に放つ

数を育てりゃたまにはモノになる奴もいるだろうと、俺はドワーフたちを促成栽培しまくった。

ドワーフガチャ、個体値厳選とでもいうような感覚だった。


十数人のドワーフを囲い込んで、朝から晩まで製作を繰り返し、できあがった品物を素材と交換してきてさらに製作を行うという強制レベリングを行ったわけだ。


中から伸びの良さそうなめぼしい数人を順に選抜し、俺はそいつらを覚醒進化させていった。


闇以外で使い勝手の良い精霊がおり、その装備の製作が必要となる炎属性と木属性。

ポーションで有用なものが多い水属性。

特殊な道具がいくつかある鉄属性。


正直、コイツラは俺にとっちゃ道具や装置だった。

だから、色の名で呼んでいた。

赤ドワ、緑ドワ、青ドワ、灰ドワ……。


どいつも生産職としての気質はいまいちで、魔道具トークで盛り上がれるような奴らでもなかったから、普段から一緒に過ごす気にはならなかった。


俺が必要なときに、俺のオーダーに応じられるようにしておけ。

余った素材は分けてやる。

そこから生まれた品や金は好きにしろ。

そんな適当な契約で放置した。


選抜されなかった残りのメンバーも、すでに契約は解除して野に放している。


いや、ペット捨てるのとは違うぜ?

俺にはもう用がないし、育成前に比べれば、それなりのものが作れるレベルにはしてやった。

十二分に独り立ちできる。

既存の鍛冶ギルドからすりゃ場荒らしかもしれんが、そこまでは知らん。


放置でいいのかって?

中級以上のアイテム作成に必要な素材は、街では買えない。

つーか、精霊抜きの人間種だけのパーティで挑戦できるようなクエストでは手に入らない。


育成はチートだったかも知れんが、それでも俺にとって危険な装備が作り出されることはない。


総じて、別に問題は無いだろう。

そう、タカをくくっていた。


その後何が起こったか。

まず、それぞれのドワーフが、同じ属性の術者たちと手を結ぶようになった。


たとえ低位であっても、属性付きで術者の能力を高めるような装備など、それまでは簡単に手に入るようなものではなかった。

四人のドワーフとその弟分たちは、いきなり強い立場を手に入れたのだ。


魔道具が、大量にばら撒かれるようになった。

斧や棍棒で殴り合ってた地域に、火薬を持ち込んだようなものだった。

属性ごとに派閥ができ、街の勢力は大幅に再編されることになった。


光属性の魔道具は俺には不要だったから、教会勢力はドワーフの作る魔道具から恩恵を得られなかった。

それもあって領主の軍勢は武力としての存在感を薄れさせ、最後には自治権を認めるという形で街の治安維持を放棄した。


両者は、俺のことをこの都市に争乱をもたらした武装派独立原理主義者としてテロリスト認定した。


街は魔道具の飛び交う紛争地域と化していたが、まだこの時点では、俺には直接の害はなかった。

俺は、「知るか!」という感情以外、抱かなかった。


そして、ある日のこと。


俺は、街の冒険者パーティーから一人の術者がクビになるところを目撃した。


「俺たちも、けっこー強くなったよな。」


チャラい雰囲気の戦士っぽい男が大声で口にすると、隣の細身の剣士が応じる。


「ああ。金も溜まったし、次の装備は魔道具で揃えられる。」


「でだ。今日は大事な話がある。」


チャラい男が、少し小柄な黒いローブ姿の術者駆出しの肩に手をやる。


「どうしたの、リーダー。」


「うん、つまり、お前はそろそろ用済みだってことさ。」


「え!? なんで! い、一応、このパーティーにも貢献してきたはずだけど。」


「ああ、それは認めてやる。だが、俺たちは次のステージに向かうんだ。

それには、次のステージの装備が要るだろう?」


「え……、ひょっとして、僕が、闇属性だから……?」


「そのとーり。ざーんねんだなー。

この街で買える魔道装備に、闇属性のものなんてねーんだ。

マイナー属性は、将来性がどうしてもなぁ。

かなしーけどこれ、ゲンジツなのよね。」


魔道具、レシピ、素材、術。

闇属性にまつわる知識や技術を、俺は独占して秘匿していた。


万が一、俺のようなプレイヤーがこちらの世界に来たとしたら、高確率で闇属性を選ぶからだ。


炎や木の方が瞬間火力やスペック的には上なのだが、それぞれ、どうしてもカバーしきれない弱点がある。

それに対し闇属性は、時間を掛けて対策を重ねていきさえすれば、その穴を限りなく小さく、小さくしていける。


一発勝負じゃないのだ。

勝てなくとも、負けなければ、生き残ればいい。

途中はともかく、最後は闇が勝つのだ。


他のプレイヤーが俺と対立するとは限らんが、共闘するにしても立場上のアドバンテージはあるに越したことはない。

教えを乞われれば、無下にあしらう気はない、その程度の考えだった。


だが。

目の前の光景は、俺には認めがたいものだった。

炎属性風情が、闇の道を選びし者を相手に、イキってんじゃねぇぞ、おるぁ……!



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