表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

48/119

47:城門

俺の出番、ないじゃん……


王都の閉ざされた門の前、魔道馬車の中でぼんやりとしている。

外では、重装マッチョたちが散発的に襲ってくる魔獣や魔虫を掛け声とともに撃退しているが、なんだか遠くの出来事のようだ。


呆然とした時間が流れ、次に湧いたのは自分への怒りだった。


自称廃人プレイヤーだぞ、俺は。

それが、自分じゃクリアできないエピソードをNPCと新規プレイヤーに任せて、それどころか報酬だけはキッチリもらって、おいおい寄生かよっていう。


確かに、カーマインに先導してもらうつもりはあった。

指示通り動く、そう想定していた。

騎馬戦の馬みたいなもんだ。

とはいえ、その気持ちは「お手並み拝見」、そんな上からの目線。

「カーマインが頼れるのは俺しかいない」という勝手な思い込みを前提としたものだった。


まさか、主人公が、攻略対象だとは。

まかり間違っても、俺が当て馬なんて展開は、考えてもいなかった。


必死に冷静さを保つ。

まだイベは序盤だが、これからの事を考えると苦しい。


ただでさえ、この後のイベは、数エピソードが王都内を舞台としている。

そのせいで、しばらくの間、俺は表に出る予定がない。


今回の魔獣襲来を主人公が撃退したことで、衛兵本部での事情聴取に続いて原因究明の協力依頼、そしてその後は王都内のトラブルやら対立やらに巻き込まれていくというのがここからのあらすじ。


一方、ビザールニンジャ姿の俺は、王都までの道中の護衛と雑務のために雇われた冒険者という設定のため、仕事は一段落したことになる。


この先、俺は工作員役とカーマインの保護者として異国の有力者役の二役をこなす予定だ。

今の姿をカーマインと近しい関係に設定すると、そばにいないことの説明が苦しい場面が出てくるだろうから、別行動できる関係にしているのだ。


それに、俺が人間の振りをしても完璧には遠いから、警備が厳重な場所についていくのは、むしろリスクだ。

ルビームーンとバーミィがいれば護衛は十分だろうし、主人公に合わせて動くカーマインたちに俺が同行する理由が無い。


無論、単純にヒマというわけではない。

王都に仮の人脈を作るというミッションは持っている。

異国の貴族の娘と言っても、カーマインの身元を保証するものはないから、せめて金をばらまいて、多少なりと信用度を上げようという算段だった。


金なら腐るほど持っているからな。

アンデッドだけに……? いや、関係ないか。


カーマインとの打ち合わせでは、俺の役割はこれで十分だった。

だが、それで満足できる状況ではなくなった、そういうことだ。


ここから先は、攻略が目的じゃない。

俺とあの魔法使いの、いや、俺自身の矜持との闘いだ。


役立たずなんて、言わせねえ。

単なる引きこもりのオタじゃねえことを、見せてやる。

俺の中に、暗い情熱が高まるのを感じる。


カーマインにも魔法使いにもない武器を、俺は手にする必要がある。

もちろん、単純な暴力なんざ、役に立たん。

情報だ。

この街の情報を、本気で取りに行く。


まずはミーリアさんよ。

悪いが、あんたは徹底的に利用させてもらう。

クク、と声にならない笑いがこぼれた。


それには、ちょっとばかりサクサクと展開してもらう必要がありそうだ。


魔道馬車を降り、周囲の魔獣に向けて次々と矢を放つ。

例の炸裂矢があちこちで煙をあげていくと、魔獣が逃げ出していった。


「くそっ。手を出すなと言ったろう……。」


迎撃には成功したものの、なかなか追い払うまでには至らなかった重装マッチョは、悔しそうな表情をしている。


「こちらの事情が変わった。すまんが、少々急いで街に入りたい。

協力してもらえないか。」


下手に出て告げると、術師がとりなしてきた。


「そういう話なら、我々も力になれるだろう。

門へ急ぐとしよう。」


術師が、門の周囲に展開していた衛兵の指揮官に話しかけていく。

貴族用の通行証か何かを見せたのか、指揮官の態度が腰の低いものに変わっていった。

こちらに、通れという合図を送ってくる。

門兵も、速やかに開門の作業に取りつく。

現金なものだ。


だが、俺も王都に入るには多少の手続きが必要と思っていたから、正直ありがたい。

ご令嬢の馬車馬になった気分で、堂々と馬車を進めていく。


城門をくぐったところで、意外な発見があった。

俺は王都とは何のつながりもないと思っていたが、城門の内側まで来たところで、感じ取れるようになった存在がいた。


久しいな、緑二号。

昔育てたドワーフの一人だった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ