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3:力を見せよ

みんな、僕に力を貸して……

ちゃんと留守番ができるって、マスターに示したいんだ……!


何十体と少年の周りに集まってきた精霊たちが、列を作り、渦を巻き、流れるように紋様を作っていく。

この魔の森には、取り分け闇や死の領域に近しい者たちが数多くさまよっている。

中には、深い怨念を抱えていたり、強い力を持ったものも混ざっていた。


「では、そろそろ行きます……」

マスターが使役している精霊と比べれば足元にも及びませんが、それでも数は力です。

さぁ、ご覧ください!


「まて! バーミィ、ストップだ! 中止!!」


「え?」


「精霊どもよ、散れ! 散れっ!!」


せっかく呼び集めて魔法陣を組みかけた精霊たちを、マスターが追い散らしてしまいます。


「ああ、みんなが行っちゃう……」


「さっきのは……四十……五十体ほどか?

あのような数の精霊を、契約もなしに、一度に扱っているのか……。

やはり、お前の術は、決して人前で見せてはならんぞ。」


あれ、誉めてもらうどころか、術を見せることさえ許されませんでした。

正式な術じゃないので、暴走したりすることを心配したのでしょうか。


「心配されなくとも、ちゃんと失敗せずに発動できますよ……?」


僕が反論しても、マスターは、困惑したような態度です。


「相変わらず、デタラメな奴め……。

よいか、我々が使う精霊術には、本来三つの要素が必要だ。

使役できる精霊、精霊を活動させる魔力、そして術を発動させるための術式。

もちろん、精霊を使役できるようにするためには召喚や契約など、それぞれに複数の手順を重ねる必要がある。

本来は、な。」


精霊! 召喚!

「おお、術を教えていただける日が、ようやく来たのですね、マスター。」


「教えんでも、お前は勝手に使っておろうが……。

おまけに、お前が召喚したわけでもない精霊に、いきなり術を発動させている。」


「え? この土地には、ものすごくたくさんの精霊がいるんですよ。

しかも、なぜだか僕に向こうから声をかけてきて、力を貸してくれるんです。」


「……知っておる。だが、それは私の闇の宿命と深い関わりのあること。私がこの土地を離れたりすれば、精霊たちはどんな振る舞いをするのか分からん。

よいか、バーミィよ。旅路の留守の間は、ああいう野の霊たちに触れてはならん。」


「それでは、いよいよ精霊たちと契約する術を教えてもらえるのですね!

やっぱり、闇の精霊ですか。

中でも、僕は、マスターから死霊術の極意を伝授していただくのを、どれ程待ち望んでいたか。」


「……わかった。召喚術の基礎の基礎を教えるが、始めは闇に限らず、もっと広く様々な精霊を知った方がいいだろう。死霊術はまだ早い。というか危険な予感しかせぬ。

小さな精霊たちならば、日常の役にも立つし、大きすぎる魔力で目立つこともあるまい。

それに、『ふつうの』召喚の手続きを知っておくのも悪くないはずだ。」


そう言って、マスターはほのかに光る石を何個か取り出しました。


「これは、その心臓の結晶を守っていくために用意した魔法石だ。

ここに七つある。

精霊の召還の他にも、様々な力を発揮する。

今はもう、なかなか手に入らない貴重なものだ。」


マスターから話には聞いたことがありましたが、実物を見るのは初めてです。

みな美しく様々な色合いをしていますが、中でも、一つは虹のような輝きを持っていて、特別な力があるようです。


「うむ、その一つは特別な魔法石に上位召喚の術を刻みつけたさらに貴重なものだ。

虹輝石と呼ばれる。

おそらく、私からお前に渡すことができるのは、その一つだけになるだろう。

お前の念に従い、高位の精霊を次元を超えて呼び出す力がある。

まあ、緊張するな。わたしの言うとおりに念じればよい。

まずは練習を兼ねて、低位の精霊の召喚を行うぞ。」


「はい、マスター。」


渡された一粒の魔法石を握りしめ、呼吸を落ち着けます。


「これから私の言うことを、後についてゆっくり口にすればよい。

細かい部分は違っても構わん。言わんとすることを強く念じることが大事だ。

では、行くぞ。」


〈生きとし生けるすべての命の源たる水の精霊よ〉


〈生きとし生けるすべての命の源たる水の精霊よ〉


〈雫となりてここに出でよ〉


〈雫となりてここに出でよ〉


〈この荒れ野の中にあって我を助けよ、召喚!〉


〈この荒れ野の中にあって我を助けよ、召喚!〉


石が手の中でひんやりと冷えながら崩れるのを感じると同時に、目の前に薄青い光が生まれるのでした。



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