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21:衣装

「貴族のファッションかぁ。

バーミィの着てる服はどうしたの? それなら綺麗だし、十分貴族っぽいけど。」


「『金青糸のローブ』か。

どこかのダンジョンかイベントで手に入れたものだが……忘れてしまったな。

覚えがないからには、確定報酬ではなくドロップか宝箱だろう。」


そこそこのレアリティで、守備力は大したことがないが、加護のエンチャントが乗っていて精霊術が強化される。


バーミィは、深い青色のローブを誇らしげにひるがえしてみせる。

さらりと流れる金の髪と、よく似合う。


「マスターにいただいた、素晴らしい魔法の品です。

この衣をまとうと、小さな精霊たちとも心が通じる気がするのです。」


「ふーん、イベの衣装のはずだけど……。

同じような雰囲気の防具はほかにないの?

異国の貴族って設定で行くなら、この国での流行り廃りは外れても構わないし。」


「似たような雰囲気の防具か……。あまり考えたことがないな。

ちょっとインベントリの中身を見てくれ。カーマインでも、取り出せるはずだ。」


俺は、インベントリを共有モードで展開して、カーマインからも見えるようにする。

ちなみにこれはバーミィに見せるために使っている公開領域で、言うまでもなく秘密の領域の方がはるかに大きい。


「んっ……たくさんあるわね。」


「レアリティ四以下は、特殊なものしか残していないから、どれも一般市民や駆け出しの冒険者が身に付けるようなものではないはずだ。

逆に七以上の高位のものは別で整理しているから、秘宝や神器クラスのものも入っていない。

見た目だけで選んでも、問題ないと思うが。」


「女物は少ないけど…… なかなかに、攻めてる衣装ばっかりね……。 

この水着とか、どうなのよ……?」


カーマインが、次々とインベントリをあさっていく。


「じゃあ、これなんか派手すぎなくてモブ令嬢って印象かな。

バーミィの服とも、何となく似たデザインっぽいし。

生地の光り方なんかは見たことない感じだから、向こうじゃ、相当目立ちそうだけど。」


カーマインが選んだのは、淡いベージュの、すそが広がっていないタイプのすらりとしたドレスだった。


「着てみるか?」


「ここで?」


「馬車ができるのは朝だ。どちらにしろ、それまではここで過ごさなければならんからな。

簡易の拠点を作ってしまおう。」


土魔術で壁を立ち上げ、即席の小屋を作り上げる。

森の虫や獣は森からは出られないから、大した守りは必要ない。


小屋と言っても、中でさらに二部屋に区切っておいた。

ラッキースケベとか期待してると思われてもしゃくだからな。


「はー、魔法、何でもできるのねぇ。」


「こんなことでいちいち反応していたら、貴族の振りなどできんぞ。

王都の生活は、電力を使わずにかなりの生活水準を再現しているんだからな。」


「確かに、原作でも登場人物はみんな現代っ子みたいな雰囲気だったもんなぁ。

カフェのスイーツとか、まんま現代だったし。

そこは、考えてもしょうがないわね。」


「では、魔法文明の一端を味わってみるか?

バーミィ、お茶を淹れてやれ。」


「はい、マスター。」


バーミィが、インベントリから慣れた手つきで食器などを取り出している。


「カーマイン、先に中で着替えてきたらいい。」


「どうも。ギルも、お茶をするの?」


「飲み食いする必要はないが、味わうことはできる。

骸骨の身体のどこに行くのかって?

食い物を、魔力に変換して取り込む「魔食」という能力があってだな。」


回復量は大したものではないし、それによって急激に成長できるというようなスキルでもないが、人間の振りをしていた頃は、飲み食いする演技に使っていた。

今は、魔力感知と組み合わせて、魔力を味として感じることで食い物を味わう手段に転用している。


「へー。」


「着替えた後、洗濯のようなことがしたいなら、バーミィに頼むといい。」


「はーい。」


小屋の中で着替えてきたカーマインは、確かに貴族らしいたたずまいになっていた。


「……。」


「どう? って、なんで黙るのよ。」


「美人を表現するボキャブラリーが貧困なのでな。

俺はきれいだと思うぞ。」


「褒めるならフツーに褒めてくれたらいいじゃない、もう。」


「あれ?」


見ると、バーミィが手元で何かをいじくっている。


「どうした、バーミィ。」


「心臓の結晶が、妙な鼓動をしていたのです。」


なぜ心臓の結晶を出しているのだ。

そこに突っ込みたかったが、先に声を上げたのはカーマインだった。


「え、それは?」


ほれ、気づかれてしまった。


「あの、えと……」


「あ、やっぱり。繊月の王国の、好感度メーターじゃん。」


は?



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